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大坂なおみ選手の記者会見拒否 女子サッカーでも生じる可能性は?

「今大会では、記者会見は一切やりません」と宣言した女子テニスの大坂なおみ選手。当初、プレス各社やファンから、大坂なおみ選手を批判する声が多く沸き起こっていました。しかし、全仏オープンを棄権、「うつ状態に悩まされてきた」という告白から世論は一変しました。

大坂なおみ選手の告白に対して、全仏オープンは、全豪オープン、ウィンブルドン、全米オープンとともに共同の声明を公表しました。

スポンサー企業は勇気ある告白を支持

「私たちは、なおみが自らの言葉でプレッシャーや不安を語ったことを称賛するとともに、テニスプレーヤーが直面する独特のプレッシャーに共感している。選手の幸せはグランドスラムにとって常に優先事項だが、私たちはWTAATPITFとともに、メンタルヘルスと幸福を促進するために、さらなる行動を起こしていきたい」

ナイキ、マスターカード、タグホイヤーをはじめとする大坂なおみ選手のスポンサー企業も、今回の勇気ある告白の支持と回復への支援を表明しています。

忘れ去られている、試合後の記者会見の開催目的

さて、そもそも試合後の記者会見は、何のために行われているのでしょうか。その一つの目的が「競技の普及拡大」です。プレーヤーが自ら、その日のプレーを振り返ることで「なぜ、あのプレーを選択したのか?」「何が難しいプレーだったのか?」といった、見ただけでは伝わらないプレーの真髄やプレーヤーならではのプレー選択の理由を、ファンや次世代のプレーヤーは知ることが出来ます。それが「競技の普及拡大」に役立つという考えです。

ところが、競技がスポーツビジネスとして拡大していくと、ちょっと本来の目的とは違ったことが記者会見で起きているらしいのです。この動画をご覧ください。

 

同時進行で試合と記者会見が行われるテニスの特殊事情

さらに、テニス界のプレスには特有の事情があるようです。前田賢一さんによると「試合を観もしないで、質問するので、的外れな質問が場の空気をいたたまれないものにする」というのです。これには理由があって「直前に10試合以上が別コートで行われており、記者が全ての試合を観ることはできない」ということです。確かに、全仏オープンの会場のスタッド・ローラン・ギャロスには24面のコートがあり、そのいくつかで試合は同時開催されています。

さて、女子サッカーの場合はどうでしょうか。WEリーグ、プレナスなでしこリーグ、なでしこジャパン(日本女子代表)の試合の場合は「24面のコート」は存在しませんから、全く試合を見ないで記者経験に参加する人は、ほとんどいないと思います。

読者は選手や監督の声を知りたい

ここからは女子サッカーの記者会見の話です。サッカーにおける記者会見の意義はどこにあるでしょうか。まずは、先に書かせていただいた「競技の普及拡大」が主目的です。そして、最近のサッカーメディアと読者の特徴にも左右されます。

最近の読者の多くは「筆者の個人的な思い入れに基づいたマッチレポート」を読みたいと思っていません。多くの読者は、選手や監督の声を知りたいと思っているのです。そして、ピッチ上にいた選手の声から、その試合の展開を紐解くと、読者は、より試合を理解しやすくなります。このことからも、試合直後の記者会見が重要だということが分かります。むしろ、プレスは記者会見に参加しなければ、その試合の記事を書くことができないと言っても過言ではありません。

5種類のプレスが共存し女子サッカーを伝えている

WEリーグプレシーズンマッチの取材をするプレスを分類してみると、下記の5つに分かれます。それぞれによって、質問の傾向が若干異なります。

1.オフィシャルプレス
オフィシャルサイトやマッチデープログラムを発行するために、クラブが契約しているプレスが取材します。質疑応答の最初に質問をすることが多いです。

2.全国紙・テレビ
新聞には一般紙、スポーツ紙があります。深く掘り下げた報道よりも、試合結果や、全国的に興味を掻き立てやすい切口を報じることが多いです。

3.地元プレス
地方紙、地方誌、地元テレビ局、地元ラジオ局等が、ここに分類されます。地域密着の情報発信は重要なので、規模の小さなミニFM局も取材に参加されています。人物像が伝わる報じ方が多いのも特徴です。

4.サッカー専門プレス
サッカー雑誌、サッカーウェブメディアが取材します。専属の女子サッカー担当者がついているメディアと、男子の試合と兼務している担当者が取材するメディアがあります。

5.ほぼ来場しているプレス
1〜4のうち、主要な試合にはほぼ来場するプレスが存在します。プレスの社員記者・編集者だけではなく、例えば、西森彰さん、馬見新拓郎さんのように、フリーランスで1〜4より仕事を受託されているジャーナリストもいます。自らのメディア(YAHOO個人)で、より深くプレーを伝えている松原渓さんも、ここに含まれます。

筆者が、この記者会見に参加するようになったのは、実質的には今シーズンからです(以前は2008年シーズンに試合会場で取材していました)。そこで感じたことをお伝えします。結論から申し上げれば、現在、女子サッカーでは「大坂なおみ選手の記者会見拒否」に似たことは、起こりにくい環境にあります。

モラルで成り立っている記者会見の環境

もし、記者会見が公開されたら、多くの人は驚くと思います。女子サッカーの記者会見は、とても礼儀正しく行われています。

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