女子ポーランドカップ決勝戦進出!UKS SMSウッチ大躍進の立役者 圓乘由里奈選手インタビュー
今回はポーランドで活躍する日本人女子サッカー選手のお話です。ポーランドといえば、レヴァンドフスキ、ラトー、ボニエクを輩出した東欧の古豪です。現在、この国で活躍するアジア人唯一の女子サッカー選手がUKS SMSウッチの圓乘由里奈(えんじょうゆりな)選手です。ポジションはサイドバック。2020―2021シーズンの結果はリーグ戦2位。女子ポーランドカップ2位。惜しくもタイトルに手が届きませんでしたが、UKS SMSウッチは、リーグ戦もカップ戦も史上最高の成績を収めることができました。圓乘由里奈選手は、大躍進の立役者の一人です。
ソスノビエツがリーグ戦とカップ戦の2冠を獲得しました。このチームも、ここ数年で躍進したチームです。ポーランドリーグはGKSグルニックレンチナが三連覇、その前にメディック・ポロマーケット・コニンが四連覇。長く2強の時代が続きました。2020―2021シーズンのワンツーフィニッシュで、UKS SMSウッチとソスノビエツの2チームがポーランドの女子サッカーに新時代をもたらしたのです。
ポーランドの第3の都市ウッチ、リーグ戦2位、カップ戦2位
—準優勝おめでとうございます。
圓乘—あ、ありがとうございます。悔しかったんですけれど……嬉しかったけど……複雑でした。
—リーグ戦2位、カップ戦2位というのは見事な成績ですね。
圓乘—チームとして初めて、リーグ戦で表彰台に登って、カップ戦の決勝戦に進出することができました。ですから、チームも街も、とても盛り上がっていました。
—ホームタウンはポーランドの第3の都市ウッチ。経済成長期にはポーランドのマンチェスターと呼ばれていた産業都市です。フランスのリヨンのような壁面の巨大アートが多いみたいですね。
圓乘—あります。古いものもあれば、一年か二年前に描かれた新しいものもあります。めっちゃ大きい、どうやって描いたのだろうと思うようなウォールアートがあります。綺麗な街です。良いところです。
「日本からの助っ人」報道で過剰に期待された1年目
圓乘—まず2018年に、大学を卒業して1シーズン半をUKS SMSウッチでプレーしました。大学生の夏にトライアウトを受け、春に卒業してから行きました。そのときは、(世界一になった日本からの加入ということで)凄い注目を受けました。空港にテレビ取材が来て(日本から新戦力と)新聞にも記事が載りました。私は、普通に大学新卒だったので「えつ?そんなに!」という感じでした。
その後、ドイツで1シーズンのプレーをして、またUKS SMSウッチに戻ってきました。チームマネージャーから「サイドバックを探している」というオファーをいただいたので戻ってきたのです。
—ポーランドとドイツは隣り合わせの位置ですね。
圓乘—隣です。でも、ポーランドはユーロではないので物価が安かったりします。街の雰囲気は似たような感じですね。食べ物は隣なのに違いますね。ドイツの料理よりもポーランドの料理の方が日本人好みかも知れません。ロシア風の餃子のようなものもあります。
辛いときが多かった一年間
—プレーの環境はどうですか?
圓乘—2年前よりも環境は良くなっています。今はテレビ放送もあります。スポンサーに大企業もついています。
—リーグもカップ戦も2位に躍進の理由は何かありますか?
圓乘—チームには若くて勢いのある選手が多いです。アンダーカテゴリーの育成を重視しているチームです。アンダーカテゴリーから積み上げて、今、代表に呼ばれるようになった選手も多いです。
—ご自身として、今シーズンはいかがでしたか?
圓乘—辛いときが多かったです。サイドハーフの選手とプレーを合わせるのに苦労したり、私のサイドからやられることが続いた時期もありました。その時期はきつかったですね。でも、リーグ戦は2位で、負けることが多くなくよかったです。勝ち切れたので辛いことも耐えられました。
—今シーズンに実力を発揮できたポイントは?
圓乘—今年は今まで以上に考えることが多かったです。どのように自分を出せるか……自分は、フレッシュさでは勝負が難しいのでボールが来る前の動きで早い判断をすることに力を入れました。速い選手とマッチアップすることが多いので、いかに早く先に動いてスピードのなさをカバーするかを考えました。実はシーズン前期は途中出場しかしていません。せっかくチームに呼んでもらったのですが、合流が遅れて、COVID―19(新型コロナウイルス感染症)の影響でプレーを合わせられず、前期は、全然、満足なプレーをできませんでした。
ドイツにいたときにシーズンが途中で打ち切りになりました。だから、ポーランドに戻ってきて、やっと半年ぶりくらいに大きなコートでゲームをしました。実践がないと磨けない感覚もあるので……。
シーズンが進むにつれて、上手くやれるようになった
—監督は、それでもずっと途中交代で起用してくださったのですね。
圓乘—そうですね。それが、私にとっては大きかったです。後期は、どうしてもスタートから試合に出たかったので、考えながら、シーズンが進むにつれて、上手くやれるようになっていった感じです。
—リーグ戦2位で立派なカップをもらえるのですね。しかも街中で立派なセレモニー。ポーランドの女子サッカーの力に驚きました。
圓乘—UKS SMSウッチは、毎年5位のチームでした。スポンサーさんが大きな会社で、最終節後にセレモニーの場を用意してくださりました。選手のモチベーションになりますね。私はセレモニーがあることを知らなくて、最終節を終えてついていったら「ステージがあるやん!」ってなりました。とても良いセレモニーでした。
僅差で勝てなかった決勝戦
—女子ポーランドカップの決勝戦(2021年6月5日)はいかがでしたか?
圓乘—決勝戦の直前に怪我をしてしまい、1分間だけでもピッチに立てればと思ってリハビリをしていました。監督が、前日の私の調子を見てくれて起用してくれました。その期待に応えたいですし「監督が私を使ったことは間違っていない」と証明したかったです。VARでペナルティキックとなって決められてしましました。全体的にはUKS SMSウッチが攻めていた時間もありました。そこで決め切れなかったところが勝負の分かれ目です。最後まで気持ちを見せ、負けてはしまったけれど次につながる試合でした。どちらにもチャンスがある試合でした。勝てたといえば勝てた。でも、負けもあり得る試合でした。
自分自身は怪我する前よりも体のキレが良かったです。トレーナーさんに頼んで、リハビリと治療を付き合ってもらっていました。1日4時間もフィジオルームにいたこともありました。そのおかげで、怪我を気にすることなくプレーすることができました。リーグ戦の最終節(2021年5月29日)は、一応、ベンチ入りしましたが、まだ走ることも始めていませんでした。そこから間に合わせました。
—決勝戦のスタンドの写真を拝見したところ、白いシャツにマフラー姿の男性サポーターがスタンドを埋めていて、ないかなかアツい雰囲気でした。
(残り 1448文字/全文: 4942文字)
この記事の続きは会員限定です。入会をご検討の方は「ウェブマガジンのご案内」をクリックして内容をご確認ください。
ユーザー登録と購読手続が完了するとお読みいただけます。
会員の方は、ログインしてください。
外部サービスアカウントでログイン
Twitterログイン機能終了のお知らせ
Facebookログイン機能終了のお知らせ