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話題のAリーグ!アデレード・ユナイテッドに移籍決定 大宮玲央奈選手が厳しいロックダウン中に移籍できた理由

南半球からビッグニュースが飛び込んできました。オーストラリア・トップリーグの男女とユースの名称がAリーグに統一されたのです。これまで女子リーグはWリーグという別の名称でしたが改められ、男子と同じ名称の「AリーグWOMEN」「AリーグMEN」「AリーグYOUTH」となったのです。サッカーは男性のものでも女性のものでもないというメッセージ。世界的に見ても画期的な取り組みです。賃金や環境整備の男女均一化を進めるオーストラリア・サッカー界ならではの決定でした。

このニュースはオーストラリア国内で話題となっており、あるチームの関係者の間では「明日ビッグアナウンスがある」と予告されていたそうです。

男女平等に向けて動き出したAリーグWOMENに挑戦する大宮玲央奈選手

オーストラリアのNPLW(AリーグWOMENの1つ下のディビジョンのリーグ)は度重なるロックダウンで中断が繰り返され、打ち切りになってしまいました。しかし、それでも自身の目標を達成した日本人選手がいます。大宮玲央奈選手です。12月に開幕するAリーグWOMEN(オーストラリアの女子1部リーグ)アデレード・ユナイテッドへの移籍を実現したのです

大宮選手はワンタッチでのプレーを得意とする攻撃的ポジションの選手。日本国内ではノジマステラ神奈川相模原、AC長野パルセイロ・レディース、ちふれASエルフェン埼玉でプレーしました。

大宮選手がオーストラリアのメルボルンに渡ったのは2020年1月。メルボルンでは、直後にCOVID―19(新型コロナウイルス感染症)感染者が初めて発見され感染が拡大しました。なんと、開幕5日前にNPLWの開催延期が決まりました。メルボルンのあるビクトリア州政府は、厳しい感染対策を行なっており、その後も断続的なロックダウンが行われました。

今シーズンも開催された試合数が少なく、アピールする場が多くなかったNPLWから、大宮選手は、なぜ飛躍できたのか……仰天するオーストラリアの女子サッカー事情を教えていただきました。そして、日本とは全く違うロックダウン中の生活も。これから海外でのプレーにチャレンジしたいプレーヤーは必見です。

提供:Behind The Lens – LMR

エージェントなし!人脈こそが命

大宮–元々、海外での生活に興味がありました。高校も国際コースに通っていました。何度か、海外に移籍するチャンスはあったのですが、覚悟を決め切れず、ようやく、2年前に挑戦することができました。海外へ行くときは、タイミングと勢いが全てだと思います。タイミングと勢いが、上手く合わないと……例えば、コロナの感染拡大とかタイミングが合わなければ、海外へは行かれません。

オーストラリアのチームに移籍したくても、私には人脈やコネがなかったので、最初はエージェントにお願いしていました。でも、エージェントが契約書通りにサポートしてくれないことが起きました。

私は、1ヶ月くらいトライアルをして英語になれたこともあって、いざ、契約のときに通訳がいなくても、ある程度は英語を理解できるようになりました。そこで、今度は契約書を必死に日本語に訳すことにしました。それで、2年目からはエージェントにお願いしないで契約することにしました。

コロナの影響もあって、なかなかリーグ戦を行えなかったのですが、一年もチームにいると人の繋がりが出来て、ある程度のことは解ってきます。エージェントにお願いしなくなった理由としては人脈を作れたことが大きいですね。人脈こそが命です。オーストラリアは、特に、選手同士の仲が良くて、選手の誘いで移籍したりする。他のチームの監督からインスタグラムのDMやフェイスブックのメッセンジャーで移籍の誘いがあるのがNPLWだと普通です。

今年のロックダウン中にAリーグWOMENのチーム複数からオファーをいただけて、アデレード・ユナイテッドに移籍することができました。以前に、私のチームメイトにアデレード・ユナイテッドの関係者から連絡があり、私の連絡先を質問していました。それからオファーがありました。契約は、一人で全て行いました。みんなも出来ると思いますよ。でも、金額や、その他の要望の交渉は楽ではありませんでした(笑)。

みんなが、大宮さんほどの度胸を持っているのかが問題になりませんか?

大宮–こちらに来たら、もう、やるしかないので、絶対に出来ます(笑)。「来たいと思っている」と「実際に来た」の差は、とても大きいと思います「実際に来た」ら成長します。

メルボルン 王立展示館

映像時代の今、チャンスは誰にでもある

大宮–ロックダウンが続いて、日本に帰国する選択肢もあった中で移籍が決まりました。NPLWからステップアップしてAリーグWOMENに移籍した日本人選手が、昨シーズンまではいませんでした。「最初の一人になれるかもしれない」というのは、自分の中で大きな目標でした。移籍が決まって、チームメイトから「コングラチュレーション!」と言ってもらえるのですが、自分の中では喜びよりも「やっとスタート」という気持ちが強いです。

NPLWでプレーされている日本人の目標となる実績になりましたね。

大宮–きちんとやればステップアップ出来るという形を見せられました。

あまり試合が行われていない中で、どのように評価を受けたのでしょうね?

大宮–NPLWの全試合をYouTubeで見ることができます。動画で私のプレーを見たそうです。私の所属チーム(サウス・メルボルンFC)が首位だったということも、見てもらえた理由だと思います。

今の時代ならではですね。必ずしも現地でプレーを見ていただく必要はないということですね。誰にでもチャンスはあるのですね。

大宮–でも、本当は優勝したかったです。(度重なるロックダウンでNPLWの成績は)全部、無しになりました。順位も、華やかな表彰式も全て無くなりました。優勝したら、全員が表彰式に参加できたので残念でした。優勝して、みなさんに、嬉しいニュースを届けられればよかったのですが……。

ロックダウンの間に自宅にジムを作った

大宮–ツイッターには、私をすごく応援してくださる方がいます。私は、もう、ずっと日本でプレーしていないのに応援してくれていて、そういう人たちに、私がサッカーをしている様子を届けたい「生存確認」みたいな(笑)感じもありました。忘れられるのは怖いので、応援してくださる方の存在は行動の原動力になります。

考えてみれば、大宮さんは、コロナの影響で、オーストラリアでもあまり試合をしていないのですが、皆さん、ずっと追いかけてくださりますね。

大宮–本当に、全然、試合をしていないです(笑)。今年は10試合くらいしかしていないので、皆さん、私の日常とか、ちょっとしたハプニングを応援してくれています。ありがたいと思っています。

オーストラリアに来られて辛いと思われたことはありますか?

大宮–正直、辛いと思うことがあまりなくて「外国人の生活はこんなもんだ」と受け入れられる自分がいます。

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