WE Love 女子サッカーマガジン

タイバーシティ(多様性)を実体験 大宮アルディージャVENTUSのWE ACTION DAY(無料記事)

大宮アルディージャVENTUSのWE ACTION DAY(理念推進日)は他のチームとは異なり1週間の展開。2021年10月8日(金)から10月17日(日)を「VENTUS ACTION WEEK」と命名し、4つのプログラムを展開しました。

WEリーグの理念である「女子サッカー・スポーツを通じて、夢や生き方の多様性にあふれ、一人ひとりが輝く社会の実現・発展に貢献する」ために、選手自身が多様性を理解し理念を推進していくことを目的として、「子どもたちへ元気を届けること」や「障がいへの理解」等をテーマに、選手たちが自ら発案し、主体的に各種の施策に取り組みました。

1.大宮アルディージャサッカースクール「なでしこクラス」への訪問
2.小学校の下校時「あいさつ運動」
3.さいたま市クリーン大作戦
4.障がい者サッカー体験

今回は、4つ目のプログラムとなった「障がい者サッカー体験」(10月17日NACK5スタジアム大宮で開催)をレポートします。このプログラムは埼玉県障害者サッカーネットワーク会議、埼玉T.Wings(ブラインドサッカー)、CA SOLUAC(ロービジョンフットサル)、FC ONETOP(アンプティサッカー)のご協力を得て実現しました。

弱視を体験できるゴーグルを着用する鮫島彩選手

参加した障がい者サッカーチームの選手、関係者、そして大宮アルディージャVENTUSの選手、関係者が、笑顔で一つになって、楽しくボールを追いかけ、タイバーシティ(多様性)を実体験しました。

ブラインドサッカー(全盲)

アイマスクを着用し音を頼りにボールを追う

ブラインドサッカーはいわゆる「見えないサッカー」。ゴールキーパー以外が全盲の選手で、アイマスクを装着し、音の出るボールを用いてプレーします。東京2020パラリンピックで注目を集めましたが、実はパラリンピックで競技が行われたのは男子のみです。ブラインドサッカー日本女子代表は、国際視覚障害者スポーツ連盟主催の初の女子選手を対象とした国際大会IBSA女子ブラインドサッカートーナメント2017で優勝した強豪チームです。

※女子の大会は競技人口などを考慮し、全盲の選手だけでなく弱視の選手も参加可能。

ロービジョンフットサル(弱視)

弱視を体験できるゴーグルを着用してロービジョン(弱視)状態でのプレーにトライ

アイマスクは装着せず、音の出ないボールを用いて、弱視の選手たちが見えにくい状態のままプレーします。チームで声を掛け合い、選手同士が互いの「見えにくさ」をカバーしあいながら得点を奪い合います。

ロービジョンフットサル選手 岩田朋之さん

ロービジョンフットサル日本代表で活躍している岩田朋之さんから障がい者サッカーの種類や知識について学びました。岩田さんは26歳の夏にレーベル病という病にかかり、視野全体が白くぼやけ、特に中心部のボヤけが濃いため人の顔を認識すること等が難しくなりました。大好きだったサッカーはロービジョンフットサルに舞台を変えてプレーし続けています。

アンプティサッカー(切断障がい)

驚きの技術を体験

主に上肢又は下肢の切断障がいを持った人々により行われるサッカーです。専用器具を必要とせず足に障がいを持つ人々にとって最も気楽に楽しめるスポーツとして、急速に普及し認知度が高まっています。

日本女子代表として優勝を目指す 

埼玉T.Wingsでプレーする菊島宙さんは、国際大会IBSA女子ブラインドサッカートーナメント2017の全試合で合計6得点をマークしたブラインドサッカー日本女子代表のストライカーです。今回の大宮アルディージャVENTUSによる障がい者サッカー体験とブラインドサッカーの現状について、このように話してくださりました。

「ブラインドサッカーを知っていただいて嬉しかったです。ブラインドサッカーのポイントを解っていただけたと思います。ブラインドサッカーは男子だけがパラリンピックの競技に選ばれています。男子だけではなく、女子でも、これだけ(レベルの高い)プレーを出来るということを伝えていきたいと思っています。障がい者サッカーの一番大きな大会はパラリンピックなので、女子のブラインドサッカーもパラリンピックの正式種目に選ばれるように活動していきたいです。2年後に世界大会があるので、日本女子代表として優勝を目指して頑張っていきます。」

ブラインドサッカーの選手の技術に驚く大宮Vの選手たち

筆者は、大宮アルディージャVENTUSのVENTUSのWE ACTION DAY(理念推進日)が、女子のブラインドサッカーの普及拡大の後押しとなればと思います。

有吉佐織選手と鮫島彩選手は、全てのプログラムを終了後に、「障がい者サッカー体験」について、このように話してくださりました。

真剣な表情でレクチャーを受ける有吉佐織選手(左)鮫島彩選手(右) 

有吉佐織選手

私たちが普段はできない貴重な体験をさせていただきました。サッカーを色々な方々と一緒に楽しめるということを肌で感じることができました。凄く楽しかったです。サッカーを通じてもっとやれることがあるのではないかと一人一人が考える時間にもなりました。凄く良い機会を与えてもらえたと思っています。『VENTUS ACTION WEEK』だけでなく、今後も、続けて活動していきたいと感じました。」

鮫島彩選手

多様性を重視する中で『知る』ことが必要だと思っていました。今回『知る』という第一歩を踏み出せたことはありがたいと思っています。私たちは出来上がったばかりのチームです。これから地域に密着したチームになっていくためにも、地域の皆さんと繋がりを持つことは大事だと思います。こういった機会をさらに増やして地域の皆さんに愛されるチームづくりをしていきたいと思います。」

 

大宮アルディージャVENTUSは地域の皆さんに愛されるチームへ

「障がい者サッカー体験」は大宮アルディージャVENTUSの選手たちがサッカーの魅力を再認識し、逆に、大宮アルディージャVENTUSの魅力を伝える体験イベントとなりました。誕生したばかりの大宮アルディージャVENTUSは「VENTUS ACTION WEEK」のような活動の積み重ねで、一歩ずつ大きなチームへと育っていくことでしょう。価値ある約1週間でした。

(2021年10月17日 石井和裕)

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