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苦難を乗り越えたセレッソ大阪堺レディースの2021年、そしてプロ化の検討

セレッソ大阪堺レディースは2021プレナスなでしこリーグ1部を3位で終えました。戦績は10勝8分4敗。ベストイレブンを受賞した小山史乃観選手(10番・16歳)は、シーズンを振り返ります。

「楽なシーズンではなかったです。苦しいシーズンだったです。勝ち点を取る難しさなど、今まで経験できなかったことを経験することができました。」

大幅なメンバーの刷新、若返り……経験の浅いチームは、シーズン序盤を苦しみました。なぜ、このようなシーズンになったのか……その原因はWEリーグでした。セレッソ大阪堺レディースは、WEリーグの立ち上げに、最も翻弄されたチームとなりました。

ベストイレブンを受賞した小山史乃観選手 提供:なでしこリーグ

最高成績の2020年シーズンに、突然の激震

2020年シーズン後半を振り返ってみましょう。2020年10月15日にWEリーグ参入クラブ発表記者会見がありました。読み上げられたクラブ名の中にセレッソ大阪堺レディースの名はありませんでした。

その1ヶ月後に2020プレナスなでしこリーグ1部を史上最高の4位で終えます。「世界基準によるサッカー選手の育成」を基本方針とし、中学生からプレーする若い選手がチームと共に成長することで、ようやく上位と渡り合うことができるようになってきたのです。「いよいよ優勝争いか」と期待が膨らむタイミングでWEリーグ立ち上げの発表。これが、セレッソ大阪堺レディース激震の前ぶれでした。

2ヶ月間に10人が移籍、苦しい開幕に

2020年11月19日に「女子プロサッカー選手の契約、登録及び移籍に関する規則」が発表されました。

WEリーグ いわゆる「産休」が可能に!「女子プロサッカー選手の契約、登録及び移籍に関する規則」新設

移籍に関するルールが明確になると、選手の去就は急ピッチで発表されていきます。さっそく年内に宝田沙織選手と林穂之香選手の海外移籍が発表され「セレッソ大阪堺レディースは女子移籍市場の草刈り場になるのではないか」と多くの人が心配しました。

・宝田沙織選手(ワシントン・スピリット/アメリカ)2020年12月2日
・林穂之香選手(AIK/スウェーデン)2020年12月16日
※移籍発表日

その「草刈り」は、予想よりも早く広範囲に進んで行きます。1月に8人の選手の移籍が発表されたのです。移籍先の多くは、予想通りWEリーグ参入チームでした。

・脇阪麗奈選手 (ノジマステラ神奈川相模原)  2021年1月8日
・井上陽菜選手( ノジマステラ神奈川相模原)  2021年1月8日
・野島咲良選手 (ノジマステラ神奈川相模原)  2021年1月8日
・矢形海優選手(マイナビ仙台レディース) 2021年1月13日
・松原優菜選手(サンフレッチェ広島レジーナ) 2021年1月19日
・北村菜々美選手(日テレ・東京ヴェルディベレーザ)  2021年1月21日
・松原志歩選手( サンフレッチェ広島レジーナ) 2021年1月30日
・藤原のどか選手 (つくばFCレディース) 2021年1月20日

こうして、セレッソ大阪堺レディースは2021年3月28日の2021プレナスなでしこリーグ1部開幕戦へ、昨シーズンとは全く異なるメンバーで臨むことになりました。

シーズン序盤の第8節までは2勝4分2敗。勝ち点を積み上げることができず、スタートダッシュに失敗。先発メンバーの平均年齢が17歳代となる試合もありました。

体格差の乗り越える、苦い思い出

セレッソ大阪堺レディース関係者には、過去に苦い思い出の試合があります。プレナスチャレンジリーグ2014第22節の福岡J・アンクラス戦です。翌年にスタートするなでしこリーグ2部に参入するために、セレッソ大阪堺レディースはどうしても勝利が必要でした。当時のセレッソ大阪堺レディースは、技術に優れた若い中学生・高校生でメンバーを編成していました。しかし、大人と子供の勝負。福岡J・アンクラスに体格差で圧倒され、0−2で敗れ昇格を逃してしまったのでした。

2021年シーズン序盤のセレッソ大阪堺レディースは、あのときに近い戦いだったのかもしれません。ただ、今回は、選手の成長が急ピッチで進んでいきました。

関係者に話を聞くと「初めは大人の選手との試合に戸惑っていた選手が、予想以上のスピードで成長し、渡り合えるようになっていったことが大きい」と言います。

追い討ちをかける浜野まいか選手の移籍……しかし、自信も

2021年8月3日に浜野まいか選手がINAC神戸レオネッサへ移籍します。WEリーグ開幕1ヶ月前の駆け込み移籍でした。もしかすると、この移籍が、セレッソ大阪堺レディースの選手たちに自信をつけたかもしれません。

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