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皇后杯準決勝進出 メニーナはなぜ強い?元なでしこジャパンOGが語る 「トラップやパスのひとつひとつに毎日ワクワクして練習していました」

Photo by Kenta NARA  Twitter→@ke780kx5 instagram→@ke_photo410

日テレ・東京ヴェルディメニーナが快進撃しています。皇后杯 JFA第43回全日本女子サッカー選手権大会の準決勝に進出。2022年1月5日にジェフユナイテッド市原・千葉レディースと対戦します。今大会の日テレ・東京ヴェルディメニーナはWEリーグ首位、無敗のINAC神戸レオネッサを2−1で撃破。更に、準々決勝で大宮アルディージャVENTUSに4−0で大勝。その衝撃は、日ごろは女子サッカーに無関心な層にまでおよび「WEリーグのチームが中高生に負けるなんて」「日テレ・東京ヴェルディベレーザの下部組織にWEリーグチームが負けちゃダメだ」という嘆きの声がネットに溢れました。

しかし、日テレ・東京ヴェルディメニーナをよく知る女子サッカー関係者の反応は、それらと若干異なります。日テレ・東京ヴェルディメニーナとはどのようなチームなのか……今回は、メニーナの真の姿を記録とOGの証言から解説していきます。

メニーナは皇后杯の隠れた常連チーム

まずは、皇后杯 JFA全日本女子サッカー選手権大会の出場回数を見てみましょう。最多出場は日テレ・東京ヴェルディベレーザの39回。第5回大会から39大会連続出場です。そして、日テレ・東京ヴェルディメニーナも常連チーム。出場回数が三菱重工浦和レッズレディースと1回しか違いません。

皇后杯 JFA全日本女子サッカー選手権大会の出場回数(今大会出場チームのみで)

1.日テレ・東京ヴェルディベレーザ39回
. 伊賀FCくノ一三重33回
. ジェフユナイテッド市原・千葉レディース24回
. 日本体育大学23回
. ちふれASエルフェン埼玉22回
. コノミヤ・スペランツァ大阪高槻21回
. アルビレックス新潟レディース19回
. INAC神戸レオネッサ18回
. 三菱重工浦和レッズレディース17回
. 吉備国際大学17回
11. 日テレ・東京ヴェルディメニーナ16回

強豪以外との対戦で負けることがあまりないメニーナ

続いて戦績です。2000年以降の戦績を辿ると驚くべきことに気がつきます。「WEリーグのチームが中高生に負けるなんて」と言いにくくなるのではないでしょうか。

2000年(第22回大会)以降の戦績

2000年(第22回大会)
1回戦敗退 0−5 YKK東北女子サッカー部フラッパーズ (Lリーグ)

2001年(第23回大会)
関東地区予選敗退

2002年(第24回大会)
2回戦敗退 1−2 伊賀フットボールクラブくノ一(Lリーグ)

2003年(第25回大会)
関東地区予選敗退

2004年(第26回大会)
関東地区予選敗退

2005年(第27回大会)
関東地区予選敗退

2006年(第28回大会)
3回戦敗退 0−4 浦和レッズレディース(Lリーグ1部)

2007年(第29回大会)
3回戦敗退 0−4 岡山湯郷Belle(なでしこリーグ1部)

2008年(第30回大会)
3回戦敗退 0−7 東京電力女子サッカー部マリーゼ(なでしこリーグ1部)

2009年(第31回大会)
2回戦敗退 0−1 ASエルフェン埼玉(なでしこリーグ2部)

2010年(第32回大会)
3回戦敗退 1−2 岡山湯郷Belle(なでしこリーグ)

2011年(第33回大会)
関東地区予選敗退

2012年(第34回大会)
関東地区予選敗退

2013年(第35回大会)
関東地区予選敗退

2014年(第36回大会)
関東地区予選敗退

2015年(第37回大会)
2回戦敗退 1−3 ノジマステラ神奈川相模原(なでしこリーグ2部)

2016年(第38回大会)
1回戦敗退 1−4 ASハリマアルビオン(なでしこリーグ2部)

2017年(第39回大会)
1回戦敗退 0−3 仙台大学

2018年(第40回大会)
2回戦敗退 0−1 セレッソ大阪堺レディース(なでしこリーグ1部)

2019年(第41回大会)
2回戦敗退 1−3 AC長野パルセイロ・レディース(なでしこリーグ1部)

2020年(第42回大会)
2回戦敗退 1−3 日テレ・東京ヴェルディベレーザ(なでしこリーグ1部)

日テレ・東京ヴェルディメニーナは中高生のチームですが、2000年以降に本大会に出場した皇后杯 JFA全日本女子サッカー選手権大会で学生チームに負けたことは1度しかありません。他は、全てなでしこリーグ(または前身のLリーグ)のチームに敗れていることがわかります。

見落とされがちですが、今大会の1回戦で吉備国際大学Charme岡山高梁(なでしこリーグ2部)、3回戦でASハリマアルビオン(なでしこリーグ1部)を下しています。また、前回大会では、2022年シーズンからなでしこリーグに昇格するヴィアティン三重レディースと1回戦で対戦。8−1でヴィアティン三重レディースを下しています。

筆者が、なでしこリーグの冠スポンサーの仕事をしている当時、日テレ・東京ヴェルディメニーナは「なでしこリーグの門番」のような位置付けでした。地域の強豪チームがなでしこリーグ(またはチャレンジリーグ)への昇格を検討されるとき、日テレ・東京ヴェルディメニーナ(当時・日テレ・メニーナ)との対戦成績で、その実力を見定められていたのです。「メニーナに勝てないんじゃ昇格はちょっとねー」と、よく言われていました。ですから、日テレ・東京ヴェルディメニーナをJリーグに例えるとJ3かHonda FCのような感じでイメージしていただくとちょうど良いでしょう。記事の最初で紹介した北野誠監督のツイートの通り、男子の高校生チームとは、かなり立ち位置が違います。

両チームの明暗が分かれた得点シーン 写真提供:Kenta NARA

中高生年代のなでしこジャパンを輩出してきたメニーナ

日テレ・東京ヴェルディメニーナは、数々の素晴らしい選手を輩出してきました。日本の女子サッカーの基礎を作ってきたチームといっても過言ではありません。ここで、FIFA女子ワールドカップドイツ2011で世界一になった、なでしこジャパン(日本女子代表)のメンバーを見てみましょう。このメンバーには、日テレ・東京ヴェルディベレーザから2人の選手が選出されています。

なでしこ世界一メンバーに含まれるメニーナの選手

・岩清水梓選手
・宮間あや選手
・澤穂希選手
・大野忍選手
・宇津木瑠美選手
・永里優季選手
・丸山桂里奈選手
・岩渕真奈選手

※川澄奈穂美選手はセレクションに落ち、メニーナに加入できなかった。

実に4割近くを日テレ・東京ヴェルディメニーナ出身選手が占めています。このうち、永里優季選手は中学生で日テレ・東京ヴェルディベレーザ(当時・日テレ・ベレーザ)の試合に出場。高校進学後は、なでしこジャパン(日本女子代表)の一員として、アテネ・オリンピック予選に出場していました。また、澤穂希選手に至っては、日テレ・東京ヴェルディメニーナ(当時・読売メニーナ)加入1ヶ月後には才能が見抜かれ日テレ・東京ヴェルディベレーザ(当時・読売ベレーザ)に昇格しています。現在も、なでしこジャパン(日本女子代表)で活躍する岩渕真奈選手は中学生で日テレ・東京ヴェルディベレーザ(当時・日テレ・ベレーザ)の試合に出場。筆者は現地でデビュー戦(なでしこリーグカップ2007:ジェフユナイテッド市原・千葉レディース戦)を見ましたが、物おじしないどころか、対戦相手のディフェンスを切り裂くドリブルでMVP級の大活躍をしていたことを覚えています。現在の日テレ・東京ヴェルディメニーナでも大山愛笑選手はWEリーグに出場し、既に得点を記録しています。

日テレ・東京ヴェルディベレーザでも活躍する大山愛笑選手 写真提供:Kenta NARA

トップレベルの選手に囲まれたメニーナでの生活

日テレ・東京ヴェルディベレーザ(当時・日テレ・ベレーザ)を最終ラインで支え、なでしこジャパン(日本女子代表)でも活躍したあるOG選手は、日テレ・東京ヴェルディメニーナが優秀な選手を次々と輩出する理由を次のように話しています。

「ジュニア・ユース・トップチームなど、男女問わず高い意識を持ったトップレベルの選手がまわりに沢山いること。ボールまわしやミニゲームに、色々なカテゴリーの選手や元日本代表のコーチなどがふらっと入ってくれる贅沢な環境でした。ひとつのクラブハウスで共に過ごしたヴェルディ・ファミリーの影響が大きいと思います。とにかく自由に楽しくやらせてもらったので、厳しかったというイメージはありません。まわりのレベルが高く、味方のトラップやパスのひとつひとつに毎日ワクワクして練習していました。」

日テレ・東京ヴェルディメニーナ(当時・日テレ・メニーナ)出身、スフィーダ世田谷FC、岡山湯郷Belle、ASハリマアルビオンで活躍。現在はSWH西宮フットサルクラブ(https://www.swh2003.com)でプレーし、フットサル日本女子代表を目指している長澤優芽選手は、中学生のときに同世代の女子チームと試合をしたことがほとんどないそうです。

「メニーナでは中学年生から高校3年生までが一緒に練習をして試合に出ます。中1が試合に出て、高3がベンチということもあります。ベレーザの紅白戦に人数が足りないときは、ベレーザの選手と一緒にプレーできることもあります。」

中学生の3年間を日テレ・東京ヴェルディメニーナ(当時・日テレ・メニーナ)でプレーした西條美紀さんも、練習試合のことを記憶しています。

「男子チームやベレーザのような、同年代ではないレベルが高い人たちと練習試合等を行っていたことが強さにつながっていると思います。また、試合後のビデオ学習では、三人称視点から動きを確認できたり、アドバイスをしあったりしていました。」

ちなみに、西條さんは、こんなエピソードも教えてくださりました。

「試合中に、コーナーフラッグが私の膝に刺さってしまい、パックリ割れ、かなり出血をしてピッチから外に出たことがあります。すぐにドクタールームに運ばれ、その場で何針か膝を縫いました。交代ではなくそのまま試合に戻ったときは『メニーナってやっぱり凄いなぁ……』と、正直驚きました。」

最年少13歳の青木夕菜選手(2008年7月生まれ) 写真提供:Kenta NARA

厳しい練習が生み出したボール・コントロールとパスワーク

ある大学サッカーの指導者は、準々決勝の動画を見て、このように話してくれました。

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