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伊賀FCくノ一三重大量移籍 伊賀市の事情から見えること「大会を想定した施設の整備」は基本方針の3番目 望まれる新たな座組み【石井和裕の #女子サカマガ PKど真ん中】

2021年1月18日、伊賀FCくノ一三重が5人の選手の移籍を発表しました。移籍するのは鈴木千尋選手、西川明花選手、杉田亜未選手、町田朱里選手、中村ひかる選手です。22試合出場19得点の西川明花選手、元なでしこジャパン(日本女子代表)で10番の杉田亜未選手、ベストイレブンを受賞した鈴木千尋選手の移籍は、女子サッカー界に衝撃を走らせました。

2021プレナスなでしこリーグ部を独走で優勝し、WEリーグに最も近い実力を有しているといわれてきた伊賀FCくノ一三重に何が起きたのでしょうか。そして、選手は、なぜ移籍したのでしょうか。WEリーグ参入への影響はあるのでしょうか。今回は、主に伊賀市の事情から、その理由を探ります。

#女子サッカー では、2020年12月16日に伊賀FCくノ一三重のインタビュー記事を掲載。副理事長を務める粟野仁博さんに、お話をうかがいました。

新スタジアム、廃校利用の練習場……WEリーグ入りへ伊賀FCくノ一三重の再挑戦

そこには、伊賀FCくノ一三重のWEリーグ参入意欲が綴られています。そして、このようなことをお聞きしました。

にもにもスタジアムは大事。
・ホームスタジアムの上野運動公園競技場は収容人数千547人。夜間照明と大型ビジョンがない。
・三重県内にWEリーグ参入条件を満たしたスタジアムはない。

記事では2020年8月に伊賀市スポーツ推進審議会が作成した「伊賀市スポーツ施設再編・整備計画(素案)」について触れています。素案は、今後の上野運動公園競技場の改修方針として下記が掲載され「女子サッカー女子プロ化施設基準の検討」という一文が記載されていました。

①シャワー室等諸室整備工事
②観客席環境整備工事

伊賀市スポーツ施設再編・整備計画(素案)より

WEリーグ参入にはスタジアムと財務面が重要

2021年9月27日にWEリーグは入会審査結果について発表しました。3団体が入会申請するも2年目の新規参入クラブはなしという結論になりました。岡島喜久子チェアは入会申請について重要な検討ポイントを説明しています。

「課題となったのは、スタジアムと財務面です。WEリーグがプロリーグとして継続していくために、クラブ経営に欠かせない財政基盤、ファン・サポーターに豊かな観戦体験を提供し、興行を成立させるためのスタジアムが必要です。」

良い環境づくりをWEリーグが行うことが女子サッカー全体の底上げにつながり、日本全国の隅々にまで、より良い効果を波及していくのがWEリーグの考えです。これはJリーグの考え方と共通です。

では、伊賀FCくノ一三重にとって重要な「伊賀市スポーツ施設再編・整備計画(素案)」の「女子サッカー女子プロ化施設基準の検討」は、その後2021年に、どのように進んだのでしょうか。筆者は、5人の選手の移籍の理由に上野運動公園競技場の改修が大きく関わっているのではないかと考え調べてみました。

伊賀上野城の高石垣を下から眺める 提供:三重フォトギャラリー

生涯スポーツを優先した「伊賀市スポーツ施設再編・整備計画(伊賀市スポーツ施設ストック適正化計画)」

素案は、市民からの意見(パブリックコメント)を経て審議され、伊賀市は2021年6月10日に「伊賀市スポーツ施設再編・整備計画(伊賀市スポーツ施設ストック適正化計画)」を策定しました。ここに、元となった素案と同じように上野運動公園競技場の改修方針が記載されています。

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