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移籍市場が閉じるまであと何時間!?寺脇鮎李選手が旧ユーゴ2カ国で知ったこと

寺脇鮎李選手は2021年2月にモンテネグロに渡りました。FKブレズニツァへ移籍するためです。ここからが波乱のストーリーの始まり。なんと、モンテネグロでは試合に出場することができませんでした。移籍市場が閉じる直前に滑り込んだ3月からのクロアチア2部リーグでの挑戦、そして、今シーズンの寺脇選手はクロアチア1部リーグでプレーしています。日本からは想像しにくい「旧ユーゴ」モンテネグロとクロアチアでの女子サッカー生活についてお話をお聞きしました。「旧ユーゴ」といっても、2つの国は大きく違うのですね。両国のカフェとマクドナルドのお話はとても興味深かったです。

海外行きの夢を叶えるはずだったモンテネグロ行き

寺脇最初にモンテネグロに渡りました。自分には「海外でプロサッカー選手になりたい」という夢がずっとありました。本当は、大学を卒業すると同時に海外へ行きたかったのですが資金の問題があり、2年間、社会人として勤務してお金を貯めながらノルディーア北海道でプレーして、それから挑戦することになりました。最初はスペインに行こうと思っていました。ところが、夏に高校の監督から連絡があり「モンテネグロのクラブが、プロになりたい女子サッカー選手を探している」と教えてくれました。話を聞くと、いきなりスペインに行くよりも、モンテネグロに行く方が、自分には可能性があると感じました。プロになりたい女子サッカー選手を探しているチームは、モンテネグロ女子リーグで1位のチームでした。優勝すれば、UEFA女子チャンピオンズリーグの予備予選に出場することもできます。そこで活躍すれば、もっと上のレベルのチームからオファーが来るかもしれない。自分はモンテネグロに行くことを選びました。

モンテネグロがどのようなところか想像できないのですが、教えてください。

寺脇到着して車で、チームのあるプレビュラまで長い時間を移動するのに高速道路がありませんでした。4時間の道のりには砂利道もありました。街の中心街を外れると信号がありませんでした。そして、道路脇に道を横断したい歩行者がいたら車が必ず止まってくれることに驚きました。横断歩道がなくても車は止まってくれます。物価は安く発展途上国という感じです。

モンテネグロの街並み

契約に問題があって、モンテネグロでは、なかなか選手登録をできませんでした。試合には出られませんでしたが2部練習には参加させてもらっていました。午前中の練習は筋トレか走り。午後はボールを使ったトレーニングです。ただ収入はないので、自費で生活しなければなりませんでした。

選手はみんなカフェが好きです。練習や試合の後はみんなでカフェに行きます。自分は、ホテルに住んでいました。ホテルには芝生のスペースがありました。そこでトレーニングしていました。

雪のモンテネグロ 

欧州でプレーする選手にお話を聞くと、大体、チームメイトはカフェが好きで「自分は行かないですが……」という話になります(笑)。これはなぜなのでしょうか?

寺脇彼女達は、カフェを何軒も巡ります。ハシゴするのです。だから、一緒に行くと「もういいかな」という好きなタイミングで帰れないことが多いです。だから、自分は、途中からは一緒にカフェに行かなくなりました(笑)。

上司の酒に付き合わされた昭和のサラリーマンみたいですね。みなさん、どのようなオーダーをされるのでしょうか?

寺脇スイーツはオーダーしないです。1軒目でコーヒーを飲んだら2軒目はジュースを飲むみたいな感じです。おしゃれなカフェが多いですよ。オープンテラスもあります。

「今日の12時が締め切りだから」移籍市場が閉じる直前にクロアチアへ

寺脇3月6日に、この先も選手登録をできないことが分かりました。そこで、代理人が近隣の国で移籍先を探してくれました。移籍市場が閉まる直前になっていたので、トライアウトがない移籍に条件が限られます。「もう、移籍できるチームはないかも。次の挑戦は夏の移籍市場かも。」と電話で言われました。その電話中に代理人に情報が入ってきました。それが、クロアチア2部リーグのメジムリェ・チャコヴェツからでした。どの程度のレベルのリーグなのか分かりませんでした。動画も見ませんでした。順位表だけを見ました。でも「今日の12時が締め切りだから」と言われて決断することにしました。

3月20日にクロアチアに飛びましたが、ギリギリまで、モンテネグロでは練習に参加させてくれました。良い方々に恵まれました。感謝しています。

6月までのクロアチア女子2部リーグ終盤戦。寺脇選手は1部リーグ昇格への切り札としての期待を背負ったのではないでしょうか?

寺脇おそらくそうだったと思います。

クロアチアは、モンテネグロと比べてどうでしたか?

寺脇クロアチアも道路脇に道を横断したい歩行者がいたら車が必ず止まってくれるのですが、横断歩道がある場所だけです。横断歩道の場合は、ほぼ100%、車は止まってくれます。

クロアチアは街並みが綺麗で、何よりゆったりしている感じがありました。自分の中で「落ち着く」気持ちになる国です。クロアチアの方が、モンテネグロよりもさらにフレンドリーな方が多いですね。サッカーに興味をお持ちの人が多いです。チームの練習グラウンドはオープンな感じになっていました。通りがかった人が試合を眺めたりしています。私の名前を覚えて「アユリ!アユリ!アリガトウ!」みたいに、知っている日本語を並べて話しかけてくれたりします。

クロアチアに入ってすぐに、地元の新聞記事に取り上げていただきました。その影響で、街でも「サッカー選手だよね?新聞見たよ。」と話しかけられました。サッカーがすごく盛んです。休み時間になるとみんながサッカーをする感じです。そして、自由に使えるグラウンドが多いです。

自分は学生も住んでいる寮に住んでいるのですが、ご飯を食べ終わると男の子達がドアをノックしてきます。「サッカーするからボール貸して」とやってきます。自分の話を聞きに来るのではなくて、ボールを借りて返しに来る繰り返しです(笑)。

クロアチアの街並み

2部リーグでのプレーはいかがでしたか?

寺脇技術の面では日本人の方が上です。ただ、フィジカルコンタクトのパワーは2部でもあります。二桁得点で勝つ試合もあり「もう少し上でやりたい。1部リーグに昇格したい。」気持ちになりました。

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