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「イマドキシニア」プロジェクトで協業する女子サッカークラブと大手企業 株式会社ユニマット リタイアメント・コミュニティに静岡SSUボニータとのプロジェクトを聞く

全国で介護事業を展開する「ユニマット リタイアメント・コミュニティ(以下、ユニマットRC)が、女子サッカークラブと協業することを発表しました。しかも、そのチームが、WEリーグのクラブでも、なでしこリーグ1部のクラブでもなく、なでしこリーグ2部のクラブだということに驚きました。

しかし、そのクラブが静岡SSUボニータだと知ると、筆者は、それだけで、この協業に納得しました。なぜなら、静岡SSUボニータはアクティブ・シニア・コミュニティと共に歩んできたクラブだからです。

静岡SSUボニータ 提供:静岡SSUボニータ

静岡SSUボニータは、なでしこリーグ2部。2021年シーズンまでは静岡SSUアスレジーナの名で戦っていました。民間の調査機関・ブランド総合研究所が調査する「『スポーツのまち』として思い浮かぶ市町村ランキング」で1位に選ばれた静岡県磐田市をホームタウンとしています。

協業するユニマットRCは全国約350箇所の施設で高齢者の生活と自立を支援する介護サービスを提供している企業です。また、食事宅配サービス、レストランやカフェ、ホテルの運営も行っています。

今回はユニマットRCのお二人に、お話をうかがいます。未来ビジネス開発部の佐々木美佳さんは東京勤務。イマドキシニアプロジェクトにおけるスポーツ領域を担当しています。そして、もう一人は『磐田ケアセンターそよ風』センター長の貞政元哉さんです。『磐田ケアセンターそよ風』は磐田市役所の近くにあります。

「イマドキシニア」プロジェクトが女子サッカークラブと協業のなぜ?

この15年くらいを見ると「ユニマット」というブランドに、高品質な食を提供する企業というイメージをお持ちの方も多いと思います。

佐々木多くの方はオフィスのコーヒーのグループ会社だと連想されるのではないでしょうか。業界シェアNo.1のオフィスコーヒーサービスを提供している株式会社ユニマットライフは同じグループの企業です。私どもユニマットRCは、在宅系のデイサービス、ショートステイから入居系のグループホーム、有料老人ホームまで、幅広い介護サービスを「そよ風」ブランドで全国に展開しています。「そよ風」の特徴の一つに「食」があります。健康を維持するためにも食事は単に栄養を供給するのではなく「美味しい」ということが大事だと考えています。介護施設で、当社の管理栄養士が監修したメニューを調理スタッフが温かく美味しい食事として提供しています。同業他社と比べて、際立って美味しいと自負しています。

株式会社ユニマット リタイアメント・コミュニティ 未来ビジネス開発部 佐々木美佳さん 提供:株式会社ユニマット リタイアメント・コミュニティ

貞政お客様に食べていただいて、3ヶ月に1回のアンケート調査を行っています。「非常に美味しいです」「(肉が)柔らかいです」といった声をいただいています。

佐々木この「美味しい」が、静岡SSUボニータさんとの協業の決め手の一つでもあります。

今回の協業の舞台になる在宅系・入居系介護サービスの『磐田ケアセンターそよ風』について教えてください。

貞政複合型施設です。『磐田ケアセンターそよ風』には、デイサービス、ショートサービスがあります。お客様の身体の状態やご家族の状況によって利用サービスを選べる特徴があります。

磐田ケアセンターそよ風 センター長 貞政元哉さん 提供:株式会社ユニマット リタイアメント・コミュニティ

具体的な取り組みのご説明をいただく前に、あらためてうかがいたいのは「イマドキシニア」というカタカナのキーワードです。これを教えていただけますか?

佐々木「イマドキシニア」は私どもで商標登録をしています。戦後の高度成長期を背景とした豊かな生活を享受した、これからのお客様です。あと5年から10年で「ポパイ・JJ世代」が私どものお客様になります。雑誌・ポパイやJJをご覧になって明るく楽しい暮らしをされてきた方々です。この方々は、今までイメージされてきた従来の介護に馴染むのは難しいと考えられています。ニーズに合った、今後のサービスを早期に開発するために、私どもは「イマドキシニア」プロジェクトを進めています。介護市場は、とても大きな転換期です。

そのようなご説明をいただくと、イメージが湧いてきますね。おそらく、東京・青山にあるユニマット本社ビルのプールがあるルーフトップ・レストランで、美味しい食事をされていた方々が、これから「イマドキシニア」に含まれてくるのだと思います。

佐々木そうですね。

スポーツなら一緒にできる「食事」「運動」「社会参加」

佐々木私どもは『磐田ケアセンターそよ風』で静岡SSUボニータの選手20名に栄養支援を行います。週に4回『磐田ケアセンターそよ風』で選手に夕食を提供します。そこで、地元の選手たちとお客様との交流が生まれ、チームをお客様に知っていただきます。

逆に、スポーツ選手の力を介護サービスに活用させていただきます。お客様とスタッフと選手の交流の機会を設けます。選手と一緒にレクリエーションと機能訓練プログラムを行います。

食事を取る選手たち  提供:株式会社ユニマット リタイアメント・コミュニティ

佐々木ここで、スポーツチームとの協業を始めた理由を説明します。日本は高齢社会が進み、社会保障費が増大していきます。これからの介護の重要なポイントとしてシニアのフレイル・介護予防があります。要介護になる手前の状態を防ごうという考え方です。その三本柱は「食事」「運動」「社会参加」です。スポーツは身体を動かします。身体を動かすと食事に気を使います。対戦相手がいるので社会参加も生まれます。こうした観点で、サッカー選手という専門性を活かした機能訓練プログラムの共同開発等、新しい介護サービスの開発、提供を進めていきたいです。

皆さんが、日常では意識していないスポーツの機能や社会性が役に立つのですね。

佐々木私どもは、そのように捉えています。介護関係者や行政の方の中には「食事」「運動」「社会参加」をバラバラに考えているケースも時々見受けられるようです。実は、それを全て自然に楽しくできる方法がスポーツなのです。

地域社会と密接に結びついて活動しているスポーツチームの選手たちと一緒に食事をするだけでも「社会参加」はできているような気がしますが、いかがでしょうか?

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