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シュートレンジはハーフウェーラインから WEリーグの力を最も知るパワフルな選手 髙橋美夕紀選手(大宮V)

髙橋美夕紀選手は大宮アルディージャVENTUSのストライカー。2021年9月20日のホーム開幕戦で歴史的なチーム初ゴールを決めました。特徴は両足の力強いシュート。ハーフウェーラインを越えたあたりからが髙橋選手のシュートレンジです。前線で楔のパスを収めて、簡単に散らしてゴール前に入っていくプレーも得意です。

今回は、髙橋選手にWEリーグの力をお聞きしました。なぜ髙橋選手に?それは、髙橋選手がWEリーグの力を最も知る選手だからです。多くの選手がプレシーズンマッチに出場し、コンビネーションの調整をしていたとき、髙橋選手は、まだニッパツ横浜FCシーガルズの主力選手として2021プレナスなでしこリーグ1部の試合に出場していました。髙橋選手の大宮アルディージャVENTUS加入が発表されたのは2021年7月1日。ニッパツ横浜FCシーガルズでの最後の出場は7月10日(2得点)。大宮アルディージャVENTUSへの合流は、WEリーグ開幕まで約2ヶ月に迫ったタイミングでした。つまり、短期間で両方のリーグ戦に出場した髙橋選手は、なでしこリーグとWEリーグの違いを最も強く肌で感じている選手なのです。

私たちは小さい子たちの夢になる

両足のシュート力に自信があるようですね。

髙橋キック力には自信があります。常にゴールを見て、ゴールキーパーが少しでも前に出ていたらチャンスだと思っています。近い距離のシュートよりも遠いシュートの方が、もしかすると得意かもしれません(笑)。

私は2021プレナスなでしこリーグ1部のシーズン途中の移籍に驚きました。シーズン途中の移籍はいかがでしたか?

髙橋まさか、WEリーグ・クラブから声がかかると思っていなかったです。1月の時点で声がかかっていなかったので、今シーズンはなでしこリーグ1部で頑張ろうと思っていました。(大宮アルディージャVENTUSからオファーを受け)このチャンスは2度とないと思って迷わず移籍を決意しました。

2019プレナスなでしこリーグ1部は二桁得点、2020プレナスなでしこリーグ1部も9得点。押しも押されせぬストライカーですが、WEリーグ・クラブから、なかなか声がかからなかったのですね。

髙橋チャンスがあれば移籍したいと思っていました。でも私は個で打開するようなタイプではないので「必要としてくれるチームがあるならば行きたい」という感じでした。

2021年シーズンの当初を振り返ると、ニッパツ横浜FCシーガルズの試合では、先発出場したりしなかったりの試合が結構ありましたが、徐々に本領を発揮して2試合連続得点もされ上向きになってきたところで移籍をされましたね。

髙橋チームには良い選手がたくさんいます。自分がスタートでないときは、途中出場で得点し、流れを変えインパクトを残しました。(出場できないときは)悔しかったですが、どの立場でも、自分のやれることをやっていきたいと思っていました。調子は、常に悪くなかったです 。

移籍し、WEリーグ開幕を迎えたときに決意したことはありますか?

髙橋初のプロリーグとして、とても注目されていると感じていました。プロ選手への憧れはありましたが、女子選手は働きながらプレーするのが当たり前だと思ってきたので、サッカーが仕事になるのが不思議な感じでした。

もし、私が小さい頃から日本にプロリーグがあれば、私もプロを目指そうと考えていたと思います。でも、ありませんでした。だから、(小さい頃は)プロの実感がありませんでした。これから、私たちは、小さい子たちの夢になるのだと思います。そう考えると、もっとプレーで魅せないといけないと感じます。

髙橋選手は、ギリギリまでなでしこリーグ1部に出場してWEリーグに移籍してこられた選手なので、WEリーグでプレーする選手の中では、最もWEリーグとなでしこリーグ1部の違いをご存知の選手だと思います。違いとして感じるところがあれば教えてください。 

髙橋三菱重工浦和レッズレディース、日テレ・東京ヴェルディベレーザ、INAC神戸レオネッサのような強いチームは基盤がしっかりしています。選手が、あまり入れ替わることなく継続できているチームはすごいですね。

WEリーグの選手は個々の能力が高いです。なでしこリーグ1部では、大きく前に蹴って得点を狙いにいくチームもありますが、WEリーグは個の能力が高い上に組織的です。頭を使わないと、より良いプレーをできない印象があります。うまくはめにいかないと、前から守備に行っても無駄になるので難しいですね。

なでしこリーグ1部と比べると、守備に寄せられるスピードやパワーが違います。自分がシュートを打とうと思ったタイミングよりも、相手の一歩が早くて簡単に打たせてもらえないことがあります。なでしこリーグ1部でプレーしていたときは、シュート数が多かったのですが、今はシュートすら打てない試合もあったりします。守備には差を感じています。

個々の選手の寄せが早いのか、複数の選手が組織的に追い込んできてシュートを打ちにくいのか、どちらでしょうか。

髙橋両方あります。なでしこリーグ1部では簡単に前を向けていたシチュエーションでも、WEリーグでは、いつの間にか囲まれていることもあります。私のところでボールを失うと攻撃にならないので、収めるところを意識してやっています。特に重要なのは「やりすぎないこと」です。簡単にプレーして、周りの選手にボールを運んでもらって、自分は前で仕事をする。ゴールという結果がついてきていないので、まだ課題が残っています。

パスを受ける位置を変える工夫をしています。相手が(奪いに)行こうか、行けないか迷う位置に動いてパスを受けて、持ちすぎずにワンタッチで叩くプレーを意識しています。少しずつ良くなっているかな。

崩す形が良くなっているので早く試合をやりたい

髙橋大宮アルディージャVENTUSには、テレビで見るような、すごいメンバーが集まっていて「この中でサッカーをするのか……楽しみだな」という気持ちで移籍しました。個々の能力が高く、ベテラン選手も多いので、ゲームの作り方が上手いと感じました。

前半戦の終わりの頃は、サイドを崩す形が徐々に作れつつあったので楽しいサッカーになってきたと思います。だからウィンターブレイクに入ってしまったのはもったいないです。早く試合をやりたいです(笑)。

9月20日の第2節でチーム初ゴールとなる得点を髙橋さんが決められました。これは髙橋選手らしい、全力で打ち抜くシュートでした。あのゴールはいかがでしたか?

髙橋ニッパツ横浜FCシーガルズでは、ゴール前のフリーキックを積極的に蹴らせてもらっていました。あのときは「良いところでファールをもらった」と思いました。自分は、カーブをかけたりする「上手いフリーキック」をできないのですが、振り抜いた弾丸シュートを枠に飛ばせば絶対に入ると思ったので、思い切り蹴りました。歴史的な一弾になれば嬉しいです。でも、フォワードなので流れの中で得点しなければなりません。(得点は)もう過去のことなので忘れようと思っています(笑)。

フリーキッカーとして、大宮アルディージャVENTUSでも確実なポジションを手に入れたのでしょうか。

髙橋上辻(佑実)さんとか長嶋(洸)もいるチームですが、あのときは自分で蹴りに行っていました。自然に身体が動いたのであまり覚えていないです。この先、蹴る機会があるかは分かりませんよ。他の人にお任せすると思います(笑)。

後半戦はもっとシュートを打ちたい 

前半戦を振り返って、もう少しできるつもりだったけれど、思ったよりできなかったところはありますか?

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