目まぐるしく変わる布陣 ベンチワーク対決にWEリーグの楽しさを見た 「感銘を受けた」の声も聞こえた大宮アルディージャVENTUS0―1日テレ・東京ヴェルディベレーザ
NACK5スタジアム大宮で開催された試合は両チームのベンチワークでピッチ上の選手の配置が目まぐるしく変わり、油断のできない90分間となりました。2022年3月27日、2021―22 Yogibo 第15節はWEリーグ逆転優勝を目指し負けられない日テレ・東京ヴェルディベレーザが虎の子の1点を守り切り、大宮アルディージャVENTUSを下しました。
大宮アルディージャVENTUSの岡本武行監督は82分に3回目の選手交代。ベンチに戻り戦況を見つめました。その後、テクニカルエリアに飛び出して檄を飛ばしたのは、控え選手だったスタンボー華選手でした。「切り替えろ!」という大きな声がピッチからスタンドを反響。本来のテクニカルエリアの機能に照らし合わせて考えれば、スタンボー華選手がそこにいるのはイレギュラーなことですが、勝ちたい気持ちが痛いほどに伝わってきまた。ピッチ上の選手たちは1点を目指して必死に食い下がりました。しかし、最後は、日テレ・東京ヴェルディベレーザが上手く時間を使いタイムアップ。オレンジ色のユニフォームの選手たちの多くは膝に手をついてうな垂れ、悔しさを噛み締めます。大宮アルディージャVENTUSにとっては遠いゴールでした。
この試合の入場者数は1千139人。2022年3月6日に開催された第12節は4千24人でしたが、それは、スタッフによる団体入場を多く集める現場の努力があってのこと。この試合のスタンドの光景が、ウィンターブレイク明けの現実を反映しているといえます。けっして多いとはいえない観客数でしたが、最後まで緊張感と興奮の途切れない試合となりました。選手は頑張り、両チームのベンチワークが、それを後押ししました。そして、ファン・サポーターは惜しみなく拍手を贈りました。
戦術の読解が楽しいWEリーグ
近年、ネット上には多数の戦術マニアが出現し、ブログやユーチューブで、独自の見解を披露しています。スピードの速いJリーグで、選手の配置や戦術を正確に捉えるのは大変なことです。それをスタンドから読み取れる戦術マニアは、高い人気を誇っています。
ところが、WEリーグならば、自分でスタンドから選手の配置や戦術を読解し楽しむことができます。なぜなら、試合のスピードがJリーグよりも速くなく、選手や監督の声を聞き取ることも容易だからです。
この試合では、90分間の試合中に何度も選手の配置が変わり、試合の流れを変えました。Jリーグでは味わえない面白さを感じたファン・サポーターが多かったかもしれません。試合後の氷川神社参道では、こんな会話が聞こえてきました。
「面白かったね。」
「自分は、今まで女子サッカーをテレビでしか見ていなかったのですが、初めてスタンドから見て認識が変わりました。面白かったです。感銘を受けました。」
Yogibo WEリーグ 第15節
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#WEリーグ #これは新しい日本のキックオフだ pic.twitter.com/ug5Gcii4nt— WEリーグ|日本女子プロサッカーリーグ (@WE_League_JP) March 27, 2022
スタートは442と4132の対決
大宮アルディージャVENTUSは、左サイドバックに鮫島彩選手、左ミッドフィルダーに仲田歩夢選手を配置した442で試合に入りました。対する日テレ・東京ヴェルディベレーザは植木理子選手をワントップに、三浦成美選手をアンカーポジションに置いた4141……か4132かわからない配置です。登録上はツートップなのですが、山本柚月選手は右のタッチライン付近をスタートポジションとし、左右非対称の布陣になっていました。右サイドバックには、いつものように清水梨紗選手。左サイドバックには宇津木瑠美選手が入りました。宇津木瑠美選手は国内復帰後、初先発です。
424とその対策
日テレ・東京ヴェルディベレーザの両サイドバックは精度の高いクロスを武器にしています。大宮アルディージャVENTUSは、その対策を講じてきました。日テレ・東京ヴェルディベレーザが最終ラインでボールを保持すると、442の配置は、両サイドのミッドフィルダーが両サイドバックの前に立ちはだかる424に移行します。立ち上がりの時間帯は、日テレ・東京ヴェルディベレーザの両サイドが機能しませんでした。
日テレ・東京ヴェルディベレーザは、対策として、ボールを保持すると両サイドバックを高い位置に上げます。最終ラインは村松智子選手と岩清水梓選手の2枚とし、2人は中央を開いて大きく幅をとります。これにより、大宮アルディージャVENTUSの424が機能しなくなります。そして、逆に大宮アルディージャVENTUSの両サイドのミッドフィルダーが、清水選手と宇津木選手のポジションにより自陣に押し戻されることになりました。これにより、大宮アルディージャVENTUSは前の人数が減ってしまい、ボールを奪ってもサイドから速攻を仕掛ける選択肢を失ってしまいます。日テレ・東京ヴェルディベレーザの中央を固める木下桃香選手と中里優選手が中央のパスコースも限定することで、大宮アルディージャVENTUSは、再三、ゴールキーパーにまでボールを下げることになります。
前半は日テレ・東京ヴェルディベレーザの波状攻撃が続き、大宮アルディージャVENTUSが凌ぐ構図となりました。
駆け引きが激化する大宮アルディージャVENTUSの左サイド
日テレ・東京ヴェルディベレーザは前半で宇津木選手をベンチに下げます。宇津木選手のポジショニングに迷いが感じられ、左サイドのパスが思うようにつながらなかったことが要因かもしれません。宮川麻都選手を投入します。
逆に、大宮アルディージャVENTUSは中央での縦パスのコースを作るために仲田歩夢選手が中に絞りディフェンスラインと駆け引き。中央の枚数を増やします左サイドのタッチライン際に空いたスペースに鮫島選手が移動し高い位置と幅を確保します。これにより、大宮アルディージャVENTUSは、前半にはできなかったアタッキングサードへの侵入を実現。チャンスを生み出すことに成功しました。NACK5スタジアム大宮のテンションが上がります。
64分に日テレ・東京ヴェルディベレーザは土方麻椰選手と大山愛笑選手を投入します。大山選手がワンアンカー。その前に土方選手と三浦選手が並びます。日テレ・東京ヴェルディベレーザがボールを保持すると、大宮アルディージャVENTUSの前からのプレッシャーを回避するために、大山愛笑選手は2人のセンターバックの間の位置に下がり、余裕を持って大きなパスの展開を図る、いわゆる「アンカー落ち」の布陣をとります。そして、前半から盛んに仕掛けていた右サイドの山本選手が突破を試み、大宮アルディージャVENTUSの左サイドのポジションは下がっていきます。大宮アルディージャVENTUSにとって攻撃の生命線となるべき、鮫島選手と仲田選手のコンビネーションを遮断しました。
得点は「監督采配がズバリ的中」なのか?
この試合唯一の得点は、右サイドの仕掛けから生まれました。
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