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海外主要リーグでの活躍が日本の女子サッカーを変える 選手は「ハッピーファースト」な選択を(前篇) 元INAC神戸レオネッサ監督 石原孝尚さん

石原孝尚さんは、元教員・プロ未経験からFIFA女子ワールドカップ優勝メンバーがひしめく女子サッカーチームの監督へ。2013年シーズンにINAC神戸レオネッサで4冠(なでしこリーグ、なでしこリーグカップ、皇后杯 JFA全日本女子サッカー選手権大会、mobcast cup国際女子サッカークラブ選手権)を獲得。無敵のチームを、監督就任から、たった1年間で作り上げました。今回は、Brilliant Future Consulting 代表の石原孝尚さんにお話をうかがいました。石原さんは、現在、チームメイキングプロデューサーとして活動し「ハッピーファースト(Happy First Achievement)」をモットーとして、一人一人が輝く企業やコミュニティづくりをサポートしています。

石原さんはINAC神戸レオネッサで4冠を獲得し、頂点を極めた後は、アメリカ女子プロサッカーリーグNWSL(National Women’s Soccer League)のスカイブルーFC、オーストラリア女子プロサッカーリーグのメルボルンシティ・レディースでコーチを務めています。

国内では、2022年シーズンからは関東女子サッカーリーグ2部で戦うFCふじざくら山梨の立ち上げ時に、グローバルディレクターとして関わりました(2019年)。2021年に発足し北信越女子サッカーリーグ2部で無敗優勝したリリーウルフF石川のアドバイザーも務めています。

海外での指導経験があり、現在も欧米の指導者と親交がある石原さんは、日本の女子サッカーが再び世界の頂点に立つために何が必要だと考えているのでしょう。そして、どうすれば、日本の女子サッカーは、さらに発展していくのでしょうか。

アメリカやオーストラリアは「ハッピーファースト」だった

石原「ハッピーファーストアチーブメント(Happy First Achievement)」は「ひとりひとりを大切にした先に、最高の結果がついてくる」という僕が大切にしている考え方です。これまで、いくつものチームで優勝を目指して指導してきましたが、僕は「選手が輝き自分らしくプレーする」ことが先にあり「勝利がご褒美」となることが重要だと考えています。今までの社会は「売上の先に社員の幸せ」があり「勝利の先に選手の幸せ」があると信じられていました。売り上げ拡大を重視しすぎて社員に笑顔がない企業もありました。でも、INAC神戸レオネッサで監督を務める以前から、僕の考えはずっと変わらずに今に至っています。幸い、結果がついてきていたのでありがたいですね。

INAC神戸レオネッサは僕のキャリアでは初監督。チームには、2011年に世界一、ロンドン五輪で銀メダルを獲った素晴らしいメンバーが多く含まれていました。僕は「INACファミリー」という単語を使って「ハッピーファースト」のチームづくりをスタートしました。そして、世界で戦ってきた選手たちは、勝負へのこだわりやプロフェッショナルイズムをとても強く持っていました。

その後、アメリカやオーストラリアで指導してみたら、日本よりも、もっと「ハッピーファースト」だと感じました。彼らは勝負にこだわりますが「(ハッピー)ライフ」を優先します。サッカーと「ライフ」のどちらをとるか?アメリカやオーストラリアの選手に質問したら、確実に「ライフ」という答えが返ってくると思います。日本には、ずっと「ライフ」を後回しにするメンタルがありましたね……今の若い選手は違うと思いますが。僕は、私生活あってのサッカーだと思っています。

提供:石原孝尚さん

海外でプレーした選手が結果にこだわるのには背景がある

石原日本には「プロセス重視」な面があります。日本では、サッカーボールがそこにあると、まずボール回しをします。これは「蹴鞠」文化だと思っています。海外の多くでは、まず、一対一やシュート練習をします。ボールがあればゴールに向かいます。

日本ではミニゲームを始めた直後に、いきなりシュートを放つと、ちょっと寒々した空気になりますよね(笑)。アメリカでは、ゴールが空いていたらいきなりシュートを打ちます。彼らは、得点をすることにエキサイトしますね。日本ではパスをつなぐことを楽しく感じる傾向があります。

海外でプレーした多くの選手が結果にこだわるのは、海外では、いつも結果が求められるからだと思います。

海外でプレーされる選手は結果を重視しますが、オフ・ザ・ピッチは切り替えて「ライフ」を優先するということでしょうか?

そうです。例えば、オーストラリア女子代表選手は大会に敗退した直後にビーチでピースサインをした写真をインスタグラムに上げられます(笑)。

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