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出産し現役復帰、「海外で生活をしたい」夢、「中盤でプレーしたい」夢を同時に女子サッカーで実現 6年ぶりに日本でプレーする堂園彩乃選手(レアル・ウニオン・デ・テネリフェ)

欧州で活躍する日本人女子サッカー選手が今年も日本に集結。『第2回 欧州組集結チャリティーマッチ in 女川』が2022年6月19日(日)に女川スタジアムで開催されます。対戦カードはプロタゴニスタVS 早稲田大学ア式蹴球部女子。プロタゴニスタはスペイン6季目の千葉望愛(みのり)選手が発起人となり欧州で活躍する日本人女子サッカー選手が集まる、この日限りのチームです。

プロタゴニスタのメンバーの中で #女子サカマガ が注目したのは堂園彩乃選手(レアル・ウニオン・デ・テネリフェ)。2021年8月にスペインで長女を出産し、復帰後もレギュラーメンバーとして所属チームで奮闘している選手です。

千葉選手と堂園選手の付き合いは長く、堂園選手が高校を卒業して浦和レッズレディース(当時)に加入した2008年にまで遡ります。当時の千葉選手は浦和レッズレディースユースの所属。同じグラウンドで練習して接点が生まれました。2014年シーズンは浦和レッズレディースでチームメイトになっています。堂園選手は千葉選手について「常に前向きに行動していて、年下だけれど学ぶことが多い存在」と言います。

千葉選手のサポートを受けてスペイン移籍を実現

2015年シーズンにオルカ鴨川FCでプレーし引退した堂園選手は「やらないと後悔する」と思いスペイン移籍を決意します。既にスペインで活躍していた千葉選手から現地のコーディネーター等の紹介を受けトライアウトに参加。スペインへの移籍を実現しました。現在、千葉選手はスペイン女子C.D.フェマルギンSPARグランカナリアに所属。堂園選手も同じスペイン女子のレアル・ウニオン・デ・テネリフェでプレーしています。千葉選手はグランカナリア島、堂園選手はテネリフェ島で暮らしています。2つの島はモロッコの南西に浮かぶカナリア諸島にあり隣り合わせです。どちらの島にも人気のビーチがあり、人気の観光地となっています。

今回のインタビュー取材は堂園選手と千葉選手がリーグ戦で対戦(トップの写真)した翌週に行われました。

欧州から観光客が集まるテネリフェ島

中盤の真ん中でのプレーを見てほしい

堂園東日本大震災後の東北に行くのは初めてです。ずっと、行ってみたいと思っていました。今回は、プロタゴニスタで試合に出場するという良い機会をいただき帰国を楽しみにしています。3年ぶりの帰国になります。これまでは、コロナ禍で帰国をずっと断念していました。少しずつ規制が緩和されて帰国しやすくなりましたが、私の地元は鹿児島県なので東京や大阪で帰国してからのホテル生活や、公共交通機関を使わずに鹿児島まで移動することが大変だと考えて我慢の2年間でした。去年は、妊娠したので帰国することができませんでした。今回は、鹿児島にも帰る予定です。

プロタゴニスタでの試合について思いを教えてください。

堂園日本でプレーしていた頃の私をご存知の方は、サイドハーフやサイドバックのイメージが強いと思います。今、私はトップ下やボランチでプレーしています。プロタゴニスタでの試合でも、中盤のポジションでプレーしてみたいです。「プレースタイルが変わったね」とか「走り方は変わらないね」とか、妊娠・出産後も健康にサッカーをできている姿を見てもらいたいです。

日本ではサイドでプレーしていた選手が、海外では中盤の真ん中でプレーされている例が多くありますね。

堂園私は、高校生のときに中盤やフォワードでプレーしていたので、浦和レッズレディースにいるときから心の中で、中盤でプレーしたいと思っていました。でも、私よりも優れた選手がいたので、中盤でプレーする自信はありませんでした。スペインへ渡ってからはチャンスをもらって中盤でプレーすることができました。

堂園さんは「海外で生活をしたい」夢、「中盤でプレーしたい」夢を同時に女子サッカーで実現したのですね。

「大西洋のハワイ」と呼ばれるテネリフェ島

子どもが多い美しい島での暮らし

堂園カナリア諸島のテネリフェ島は小さな島で3時間あればクルマで一周できます。北と南で分けると、北側には緑が多く高い建物のある街があります。南側には緑が少なく溶岩の地形。島は一年中暖かく天気が良く過ごしやすいです。最近、ドイツやイギリスからの観光客が帰ってきて、そこら中で色々な言語が聞こえてきます。海があり山がある、私が大好きな島です。

テネリフェ島はスペインの中でも子どもが多いところです。公園が多く、子ども達が走り回っています。子育てしやすいのかもしれません。日が長いので、23時になっても公園で遊んでいる親子がいて、最初はびっくりしました。

世界遺産に登録されたテイデ国立公園

「ゴールを奪われなければ良い」スペインの守備戦術

スペインの女子サッカーと日本の女子サッカーの違いはいかがですか?

堂園トレーニングに器具を使ったフィジカルトレーニングを多く取り入れています。私は、スペイン人と日本人の身長にあまり違いがないと思うのですが身体の強さは違います。身体をぶつけるプレーに、日本との大きな違いを感じます。

プレーにも違いがあります。プレー中にピンチを迎えて危険だと感じたら、タッチから外にボールを出してプレーを切ります。こちらに来ると、日本の女子サッカーはスローイングが少なく感じます。日本人は、つなげる意識が強くタッチラインから外にボールを出さないからだと思います。スペインには「ゴールを奪われなければ良い」という考えがキッパリとあります。だから、ピンチになると簡単に外にボールを蹴り出して、プレーを断ち切ることがよくあります。

それから、抜き去られたときに、あからさまに相手を手で引っ張って止めることも戦術とされています。日本では、こうした反則は指導されてこなかったので全く違いますね。こちらにきて1年目の試合後のミーティングで「彩乃、あなたは、このプレーのときにファールしなければといけなかったよ」と言われました。ずっとサッカーをプレーしてきて、初めて「ファールをしなさい」と指示を受けて衝撃を感じました。こちらの選手たちは、小さなときから、決定的なピンチにファールをしないと怒られる指導を受けているので、ピンチには自然と手が出ます。ファールをすることで高い評価を得られます。

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