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史上初!女子だけのK―1 RING OF VENUS 「自分が女子のK―1を作っていけばいいんだ!」というKANA選手の発想

あのK―1が、女子だけの立ち技格闘技大会を開催するというニュースが入ってきました。2022年6月25日に国立代々木競技場 第二体育館で開催されるK―1 RING OF VENUSには女子選手40人が出場します。女性専用チケットも発売される女子格闘技の祭典です。大会アンバサダーに、女芸人のゆりやんレトリィバァさん&美尻トレーナーの岡部友さんが就任したことも話題になっています。

ゆりやんレトリィバァさんと岡部友さん 提供:K―1

今回は、そのメインイベントでタイトルマッチを行うKANA選手にお話をお聞きしました。KANA選手は第一人者としてK―1女子をけん引する存在です。KANA選手が所属するK―1ジム三軒茶屋シルバーウルフはK―1の名門ジムで、現役当時の魔裟斗選手の印象が強いのですが、現在は女性会員も多く生涯スポーツとして格闘技を楽しむ会員が多数いらっしゃいます。プロ選手であるKANA選手はトレーナーとして会員の指導もしています。

女子サッカー選手の中には「女の子なのになぜサッカーをやるの?」と言われたことがある人が多いと思います。多くの女子格闘技の選手が同様に「女の子なのになぜ格闘技をやるの?」と言われてきました。KANA選手は、なぜ、女性とは縁遠いと思われてきた格闘技のプロになったのでしょう。WEリーグとも共通項のあるお話です。

また、記事の後半では中村拓己プロデューサーにもインタビュー。女子格闘技のビッグマッチを開催する意義や女子格闘技の基礎知識を教えていただきました。

KANA選手 提供:K―1 

自分の試合を認めてもらえるように努力を重ねてきた

KANA格闘技を始めて8年くらいが経ちました。最初はアマチュアで試合をしていましたが、プロの立ち技格闘技イベントKrush(クラッシュ)に出場するようになりました。それからK―1で試合をするようになりました。現在はK―1 WORLD GP女子フライ級のチャンピオンです。

ステップを踏んでステージを上がっていった感じですね。少し格闘技をご存知の方はK―1にメジャー団体のイメージをお持ちです。女子の立ち技格闘技でもK―1はメジャーなイメージを有しているのでしょうか?

KANA自分がアマチュアでデビューした頃はK―1に女子の試合がありませんでした。なぜ女子の試合は組まれないのだろう?と思っていました。「自分が女子のK―1を作っていけばいいんだ!」という発想で、自分の試合を認めてもらえるように努力を重ねていきました。その結果、K―1で女子の試合を組んでもらえるようになりました。「K―1に女子の試合がある」と認知されるようになったのは最近だと思います。

女子の試合がお客さんに響かない時期が長くありました。男子と比べるとサイズが小さいし迫力に欠けると言われてきました。一発KOが少なく、決定打に欠けて判定にもつれる試合が多かったです。そこで自分は、男女の違い感じさせない試合をすることを意識して試合に臨んできました。

「女子は、パワーで倒したり、大きな技を決めることが難しいから違う方法を探る」のではなく、あえて「迫力ある試合で魅せよう」という方向でやってみたのですか?

KANAそうです。K―1の大会では男子の試合が20試合くらいあり、女子の試合は、その中で1試合程度組まれるところから始まりました。女子の試合のときに、お客さんが席を離れて休憩するのは許せなかったので男子の試合と比べても負けない試合にしたかったのです。

「当たって砕けろの精神」を意識して、ゴングがなったら倒しにいくスタイルを心がけました。プロデビュー戦から、それを体現できました。しかし、チャンピオンになると、相手のレベルが上がっていきます。世界の強豪選手と対戦すると「倒せない試合」に陥りました。次第に、力任せだけの試合は通用しなくなり、スピード、技術で相手を上回る方向に練習を変えました。

自分は52キロ級なのですが、同じ階級でも外国の選手は大きいことが多いです。まず、同じ階級でも身長がかなり違います。そして、前日の計量では自分と同じ体重で対戦の条件をクリアしても、翌日の試合のときには体重が変わることが多いです。自分は2〜3キログラム増しになることが多いのですが、海外の選手の中には5〜10キログラムくらい増やしてくる選手もいます。減量の方法が国によって違うと思います。

KANA選手 提供:K―1

小学生のときに空手から始めた格闘技

KANA元々、自分は小学生のときに男の友達が多くて空手を始めました。スポーツの中で格闘技が一番好きでした。でも、自分は体育の先生になりたい夢も持っていました。そこで、高校に推薦入学するために大好きな格闘技から離れて陸上競技に転向しました。大学を卒業したら、やっぱり格闘技をやりたいと思い、格闘技に復帰しました。ですから、自分の中で「格闘技は男子のためのスポーツ」という意識はあまりありません。

「女性なのに、なぜ格闘技をしているの?」と言われたことはありました。でも「自分がやりたいから」が答えでした。大学には、男子の競技人口が多い女子サッカー部や女子野球をプレーしている友達が多かったので、そうした競技の仲間から力をもらっていました。だから、大学卒業後に再び格闘技の世界に飛び込むことに違和感はありませんでした。

KANA選手 提供:K―1

競技人口を増やせば解決できる課題がある

KANA練習環境では苦労しました。ほとんどのジムの所属選手の大半は男性です。大きな試合が近づいてきたときに、女子選手とスパーリングできないことがありました。試合は女子選手とやるので、本来ならば女子選手とスパーリングをやるべきです。最初は、なかなか練習パートナーが見つかりませんでした。

こうした問題を解決するには競技人口を増やす必要がありますね。 

自分が始めた頃よりも競技人口は増えています。今は、他のジムに出稽古に行くこともできます。競技人口が増えれば増えるほど仲間が増えて練習環境は良くなると思います。特に、K―1 RING OF VENUSのような大きな大会では、女子選手みんなで成功させるためのチームの意識が芽生えてきます。競技人口が増えることは、とても大事だと思います。

スーリ・マンフレディ選手との対戦が発表されたKANA選手 提供:K―1

K―1 RING OF VENUSを成功させる責任

KANA女子だけの大会は世界的にも珍しいです。女子の競技人口が増えたので実現しました。お客様も女性の来場者が多いと思います。プロを目指している女子選手もたくさん見にきてくれます。だから、憧れの舞台にしなければならないと思います。女子にしかできない大会を意識しています。自分が派手な試合をして勝てば、タイトルマッチなので世界的なインパクトを残せます。世界に進出するためにも大事な試合です。全選手の覚悟を背負って戦いたいです。

今回の対戦相手はスーリ・マンフレディ選手です。どのような選手でしょうか?

KANA素手で戦う「世界一危険な立ち技格闘技」ミャンマーラウェイの世界チャンピオンです。考えられない練習をたくさんやってきた選手です。ミャンマーラウェイはパンチが当たって倒れても、降参するまで試合が続くルールの格闘技です。だからメンタルが強い選手だと思います。(今回はK―1ルールですが)自分のキャリアで一番危険な試合になります。

女子選手の活躍の場を広げたい

—WEリーグについてうかがいます。競技そのものに加えて、女性に挑戦の機会を提供する等、これまで活躍の場面が少なかった人にチャンスを提供する姿勢で行われている女子リーグです。どのようにWEリーグを見ていましたか?

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