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世界標準に近づく道筋を探し当てたなでしこジャパン(日本女子代表)E―1連覇

トップ写真 ©JFA

連覇がかかるEAFF E1サッカー選手権2022決勝大会。3日目は19時20分キックオフのナイトゲーム。いくぶん涼しい環境で中国女子代表と対戦しました。池田太監督は欧州遠征で活躍した選手を何名か先発メンバーから外し、この大一番に代表経験の浅い選手を起用しました。前線には飛びだしに特徴がありはっきりとしたアクションを出せる井上綾香選手(大宮V)、千葉玲海菜選手(千葉L)、植木理子選手(東京NB)。センターバックには展開力と高さを兼ね備えた宝田沙織選手(リンシェーピング)と高橋はな選手(浦和)が起用されました。

大会も3日目となり8日間で6試合。茨城県立カシマサッカースタジアムのピッチがやや荒れてきました。試合前には、ゴール前の芝の痛みを回避するためか、予備のゴールが持ち込まれ別の場所でゴールキーパーがウォーミングアップを行いました。しかし、なでしこジャパン(日本女子代表)は、そんなピッチコンデイションを感じさせない試合を行いました。

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真っ向勝負で負けないなでしこ

東アジアのライバルを退けた見事な連覇です。いたるところで繰り広げられるデュエルが見どころとなるフェアで激しい試合となりました。立ち上がりはフィジカルコンタクトで圧力をかけた中国女子代表が優位に試合を運びますが、約10分間でなでしこジャパン(日本女子代表)がそれに対応。次第にバイタルエリアでパスをつなぐ回数が増え主導権を奪い返します。全体的には、なでしこジャパン(日本女子代表)が一対一の守備の強さでピッチ上を制圧し、スコアレスドローながら中国女子代表に差をつけた印象です。中国女子代表のシュート数は4本でした。

今大会は早い仕掛けが目立つなでしこジャパン(日本女子代表)。この試合では特に、球際厳しくボールを奪い、すぐに長めのパスでディフェンスラインの裏を狙うプレーを多用しました。パスの距離は長く、スピードは速く。前線の3選手がスペースに勢いよく走り込み、アグレッシブな攻撃の印象が残ります。日本の女子サッカー伝統のショートパス戦術が、池田監督の采配により、少しずつ変化しているように感じます。試合結果は引き分けです。しかし、世界標準に近づくチームと個人の成長を強く感じさせる試合内容でした。中国女子代表を相手に、速く、強く、怖いなでしこジャパン(日本女子代表)を披露したのです。スウェーデンを主戦場とする宝田選手は「パススピードで相手をはがすことを意識した」と話しました。池田監督はパススピードについて、このように振り返ります。

「ミーティングとトレーニングで、パスのテンポとリズム、正しい角度をとってビルドアップしていこうと話しました。一戦目、二戦目を通して、選手たちの感覚が戻ってきたところもあったと思います。」

ワンランク階段を上がった試合のテンポと「奪う」強さ

欧州を中心に、世界の女子サッカーは高速で力強いものに変わってきています。ピッチを大きく使ったポジショナルな戦術を駆使し、スピーディーなパスがピッチを駆け巡ります。そんなサッカーにFIFA女子ワールドカップで対抗するためには、パスのコンビネーションの巧さだけではなく、ボールを「奪い」ゴールを「奪う」力強さが必要だと池田監督は就任直後から説いてきました。その成果が明確に表れた大会となりました。

植木選手によると「一つ一つの勝負に勝つことの積み重ねがチームの勝利につながる」という話が試合前にあったとのことです。「距離感の修正と常に声を掛け合うことを意識したことで韓国女子代表戦から修正できました。」と話すのは攻守にわたり中盤を支え続けた林穂之香選手(AIKフットボール)でした。池田監督は明るい表情で大会を振り返りました。

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