Jウォッチャー ~日本サッカー深読みマガジン~

「たくさんあるホームタウン活動の中で、できるだけたくさんの関係者が関わっているものを増やしていきたいと考えています(Jリーグ・藤村氏)」~2019年第3回のJリーグの理事会より(4)~

3月19日、JFAハウスにて2019年3回目のJリーグの理事会が行われ、理事会後に記者会見が行われた。

理事会後の会見に続いて、Jリーグ社会連携本部藤村本部長より Jクラブのホームタウン活動についての説明が行われました。

(3)はこちら

2018年のホームタウン活動報告はこちら(PDF)

○Jリーグ社会連携本部 藤村昇司本部長
「たくさんあるホームタウン活動の中で、できるだけたくさんの関係者が関わっているものを増やしていきたいと考えています。例えば甲府さんは地元の医療機関に直接声掛けて障がい者の方と一緒に活動をしています。これも素晴らしい笑顔があるほんとうによい活動です。
一方で、(川崎フロンターレは)そこに川崎市が入ってきて支援したり、NPO法人さんが入ってくると、フロンターレだけの話ではなくなって川崎市中のそういった施設の方に、川崎市から声をかけることができるんです。そうするとフロンターレの試合が年間でいつに何試合あって、この試合に何人集めてくださいというお願いの仕方が前もってすることができます。そうすることで、障がい者と一緒に就労体験する機会が年間を通じて安定して開催することができます。

川崎フロンターレホームゲームにてゲームスタッフとして障がい者就労体験
就労体験in 「フロンターレ」川崎フロンターレ×ピープルデザイン研究所×川崎市(PDF)

安定して開催するために、市や施設の方に寄り添って、一緒に動いてくださるNPO法人さん(ピープルデザイン研究所)がいらっしゃることで活動が回っていく。そこからフロンターレの枠を超えて、川崎市のハロウィンパレードやアメリカンフットボールを手伝いに行く活動を年間を通してやっているので、それを体験した方が正規就労に就く率がすごく高くなっています。

クラブと障がい者施設の1対1で完結するのではなくて、たくさんの仲間を集めていろいろな力を結集して大きな活動にできると、社会的に価値がある成果が出てきます。たくさんの仲間を集めてくださいと伝えています。たくさんの人が集まるためには、共通のテーマがないとダメだと思っています。障がい者の方で正規就労の方が増えれば税金で助けてもらう立場から働いて税金を納める立場に変わりますので、その方々のプライドもあるでしょうし、行政コスト削減という社会的効果もあります。

そういったたくさんの人が集まるようなホームタウン活動を「シャレン活動」と呼びたいと考えています。シャレン活動がもっともっとクラブを中心に55のホームタウンの中に増えていくことで、きっともっと良い社会ができると思いますし、それがクラブの地域や企業様に対する信頼という形で必ず返ってくるというお話をさせていただいています。

今日の実は、理事会で「シャレン」という言葉の商標登録をしてロゴを作成することを提案しました。また地域に対するおかしいくらいの愛情を持ってシャレン活動をしていこうという意味を込めて「Love&Crazy」というスローガンを掲げてまいります。社会課題に取り組むというとつい難しい顔になりがちですが、我々はプロスポーツで楽しんでいただくことが仕事なので、こういう社会活動もみんなでわくわくしながら、ニコニコしながらクレイジーに取り組んでいこうよということを、本日の理事会の中でお話しさせていただきました。ロゴなどは後日、発表させていただきます。ありがとうございます」

~質疑応答~

Q:基本的なことで恐縮ですが、社会課題に共通のテーマをもって取り組むホームタウン活動は素晴らしいと思ったのですが、基本的にはどういうテーマ設定はクラブが決めるのかはクラブが決めるのか、Jリーグが決めるのでしょうか。

「クラブに委ねることだと考えておりますが、場合によってはクラブの外の方がテーマオーナーになることもあります。昨年の『Jリーグをつかおう』のような形でもいいと思います。大事なのはテーマオーナーがいることで、熱意があって本気で課題解決をしたいという、そういう熱が無いと伝わらないと思います。そういう方と一緒であれば、クラブであっても、外の方でも良いですし、ひょっとしたらJリーグの誰かかもしれません」

【記事一覧】Jリーグ25周年未来共創『Jリーグをつかおう!』ワークショップ
https://www4.targma.jp/jwatcher/2018/09/03/post4010/

Q:逆に言うと、地域それぞれでテーマを設定したほうが良いということなのでしょうか。
「そうですね。地域の実情に応じて、地域、地域で行っていく活動がある一方、55クラブ横串で取り組んだ方が良いという活動が見つかれば、それはスケールを生かしてJリーグが旗を振って全国で取り組もうというパターンも出てくるのではないかと思います」

Q:回数を競うような話ではもちろんないと思うのですが、20,032回というのは過去で最も多い活動回数でしょうか。クラブで例えば積極的に取り組んでいる回数が多いなどの傾向はあるのでしょうか。

「FC東京や浦和レッズが活動数が多いと思います。逆に湘南がすごく少ない回数だったんですが、今日は理事会に真壁会長もいらっしゃっていましたが、おそらくNPO法人の分がすっぽり抜けていますということでした。
本当にクラブの皆さんのご報告に伴うので、報告する方のまめさや熱意や時間の有無で左右されてしまうのではないかと思います。ただ、3年間同じ手法で調査をしておりますので、経年変化や傾向をご覧いただく分には、ある程度参考にしていただける数字だと思います」

Q:Jリーグとしての到達点は?もちろん回数が目標ではないと思いますが、Jリーグとして目標、到達点、指針で掲げられていることはありますか。

「内々に回数の目標は持っていますが、それはあまり表に出ていかないほうが良いと考えています。先ほどの1ピクチャー1ワードという表現で活動が持っている価値や、Jクラブがそこにあってよかったなということを切り取って、なるべくたくさん発信していくことが、当面のKPI、KGIだと考えています。クラブにも1ピクチャー1ワードで、どんな写真を撮ってどんな言葉で書いたら伝わるか、ということをトレーニングしてもらいたいと考えています」

Q:2019年ホームタウン活動助成についての中で、29クラブ90件と書かれていますが、これは1件あたりの助成金額の上限は決まっているのでしょうか。
「1件当たりの上限は200万円です。年間を通じて行うチーム活動の時は年間200万円と決まっていて、単発での活動は上限約50万円という二つにケース分けています」

・■地域スポーツ振興活動、及び介護予防事業(Jリーグ独自予算):
・29クラブ、90件
・助成予定額 30,000,000円
2019年度 Jリーグ地域スポーツ振興活動および介護予防事業 助成一覧

Q:2019年度の活動の90件の活動中で、基本的には一般の方向けの活動が多いと思いますが、例えば湘南ベルマーレのビーチバレーチームなどのプロチームの活動も認められるのでしょうか。
「はい。総合型地域スポーツクラブを目指そうとか、サッカーだけではないというのがJリーグ設立からの理念なので、サッカー以外のスポーツに助成をつけていきましょうという制度で、その場合トップチームを抱えてそれをサポートするような取り組みも助成対象としており、トップアスリートが全国大会に行く時の遠征費などにも使っていただいています。ただそれをするために、必ず地域で普及活動をすることを条件にしていて、スポーツを広めるベクトルを必ず持つようにしていただいています」

Q:ずっとホームタウン活動のデータを取っていて、活動内容の変化とか、かつて多かったけど最近はこういうものが多いとか。もっと言うと地方と都市圏の違いなどのはっきりした違いが出ていると、傾向をつかめているものはありますか。藤村さん個人の感覚的なものでもいいので・・・。
「そこまでは分析できていないです。割とクラブは変わらずやっているのではと思います。よく話を聞くと、もうシャレンになっている活動もたくさんあります。それもいいけど、意識的に新しい人と触れ合うチカラがこの分野にはありますので、それを続けていくとクラブが新しい顧客を獲得することに絶対につながってくるはずなので。毎年同じ人と同じイベントの話をするのもいいですけど、新しい人と新しい活動をしていきましょうというメッセージも伝えています」

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