Jウォッチャー ~日本サッカー深読みマガジン~

「(VARのトレーニングの)推移を見極めて、今回来年からスタートできると判断しましたので、今回の決議に至りました(Jリーグ・黒田氏)」2019年8回目のJリーグ理事会後の記者会見より(4)

9月24日、JFAハウスにて2019年8回目のJリーグの理事会が行われ、理事会後に記者会見が行われた。

理事会後の会見の様子を数回に分けてお届けします。

(3)はこちら

○村井満Jリーグチェアマン

Q:湘南ベルマーレの件を聞きたいのですが、Jリーグとして裁定委員会を開きますとおっしゃいましたが、裁定が必要な場合と必要ではない場合のものがあるんでしょうか?

「基本、チェアマンが裁定を行うものは、裁定委員会に諮問するということがJリーグ規約に明言されています(※1)。裁定じゃなくて例えば厳重注意レベルであれば、それは諮問しないこともあります。もし我々の方で、これは何らかの裁定案件だという判断をした場合は裁定委員会に諮問しなければならないというルールになっています」

【ミニ解説】裁定委員会とは・・・
裁定委員会とは、競技に関するもの以外の事案を裁く機関で、チェアマンの諮問機関(Jリーグ規約第131条)。裁定委員会は5名以内の委員を持って組織される。委員はサッカーに関する経験と知識を有しまたは学識経験を有するもので、理事会の同意を得てチェアマンが任命する。委員にはJリーグの理事もしくは法人組織の職員またはJクラブの役員もしくは職員を兼ねることはできない。
裁定委員会は、申立のあった内容について調査・審理した上で、チェアマンに対し、書面により裁定案を答申する(第138条)。

※1:第 137 条〔チェアマンの決定を求める申立〕
(1) Jリーグ関係者は、次の事項につき、チェアマンの決定を求めることができる。
① 選手の契約に関するJクラブと選手との間の紛争
② 選手の移籍に関するJクラブ相互間またはJクラブと選手との間の紛争
③ 前2号のほか、本規約上の権利・義務に関する紛争
(2) 前項によりチェアマンの決定を求めようとする者は、「裁定委員会規程」の定めるところにより、裁定委員会に対し申立書を提出しなければならない。

 

Q:例えばですが、湘南ベルマーレは、正式に曺貴裁監督をどうするかをまだ決めていないんですよね?順番としては、湘南が判定を下した後にJリーグがその判定に対して正しい判定をするのか、それとももう少し考えた方がいいのか、そういうことを湘南ベルマーレ側に問合せをするというのが順番でしょうか?

「まず、曺監督が今出場を控えていることに関してはクラブの判断です。我々から何か裁定をして、その結果、自粛をお願いしているものではありません。私の立場から、この件に関して何か申し上げることはありません。いわゆる通常のステップで言うと、まず我々が裁定をして、裁定委員会からこういう処分が妥当だという諮問に対する答申が返ってきたタイミングで、仮に裁定となった場合は、当然クラブに対して我々はこういう裁定を発表前にクラブにお伝えすることになります。それから皆さんにお伝えするという順番になると思います」

Q:クラブがそれを妥当だと思うこともあれば、クラブが考える裁定よりも厳しいということもあるわけじゃないですか?

「すべての件にそれはありうるので、本件に関してあまり仮定の話はできません。ただ、Jリーグ規約上(※2)では、Jリーグのチェアマンが裁定をもって基本的には最終判断をするという一文がございますので、我々は相当慎重に本件に関しても調査する必要があると考えています」

※2:Jリーグ規約第 139 条〔チェアマンの決定〕
チェアマンは、前条の答申を十分に尊重し、かつ、Jリーグ全体の利益を考慮した上、申立に対する決定を下すものとする。

Q:例えばですが、Jリーグがこういうことで裁定を出すと、今後他のクラブも『コーチがやりました』とか『先輩が後輩に~』とか似たようなことが起きる可能性があると思います。その度にJリーグが裁定を出すとなるとかなり混乱しませんか?例えば、外国人監督のが来た時に、『俺は当たり前のように厳しく指導したのにJリーグは俺をパワハラだと言われた」と。ハリルホジッチ(元日本代表監督が)が提訴したように、そういったこともありうると思うのですが。

「先程申し上げたように、本件に関しては私のところにまだ何も来ていない状況で、それが裁定案件になるかならないか分からない状況の中で、今のご質問にはお答えできない状況です。おそらくいろいろなことが想定されるのが事実ですので、そこに関して慎重に(やっていく)。おそらく弁護士のチームも事実確認をしているんだと思いますが、今日現在、私もまったく分からないので、あたかも裁定のようなことは(言えません)」

Q:そういうことを言いたいんじゃなくて、Jリーグが今裁定を出してしまうと、自分達の首を絞めることにならないかということです。

「それも含めて、その判断はタイミングをみて行いますので」

Q:VARについてお伺いします。チェアマンのお話にありましたように、VARの導入を当初の2021年の話から1年間前倒しできたのは、VARのトレーニングであるIFABが定めるステップをしっかり踏むことが大事であると以前お話いただいていたと思います。実際1年間前倒しができた、期間を縮めることができたのは、例えば二種でのトライアルなど最初は予定していなかったけどこういう試験をやれたなど、そのあたりを詳しく教えてください。

※黒田フットボール本部長が説明
「お手元にお配りしている資料の下の方(※下記を参照)ですけれども、2018年と2019年に、いわゆるVARとアシスタントVAR(AVAR)ができるようトレーニングをしてまいりました。1年目は19名の審判員の方にトレーニングをすることができました。今年はその約3倍の人数のトレーニングを行いました。関係各位のご協力もありまして、今年2月から12月までの下記の機会でVARのトレーニングが非常に順調に進みました。今年開幕するときに、YBCルヴァンカップのプライムステージでVARを導入するということを決議しておりますので、もうすでにその当時から全体的にはVAR導入の方向でJリーグは進んでいました。あとはこのトレーニングが順調に進むかどうかというのが、実際に(2020年からの)リーグ戦に入れられるかどうかというところでした。この推移を見極めて、今回来年からスタートできると判断しましたので、今回の決議に至りました」

2020シーズンのビデオアシスタントレフェリー導入試合について(Jリーグ)
https://www.jleague.jp/release/post-60611/

■VAR導入に向けた、これまでの取り組み

取り組み内容
2018年 2月 VARの理論・プロトコールに関する講義
3月 VAR機材を使用してのトレーニング
4月 明治安田生命J1リーグでのオフラインテスト
6月
7月
学生デモンストレーターを活用したトレーニング(オンラインテスト)
8月 SBSカップ国際ユースサッカーでのオンラインテスト
9月 JリーグU-17チャレンジカップでのオンラインテスト
明治安田生命J1リーグでのオフラインテスト
10月 明治安田生命J1リーグでのオフラインテスト
11月 Jユースカップ決勝でのオンラインテスト
12月 Jリーグインターナショナルユースカップでのオンラインテスト
2019年 2月 NEXT GENERATION MATCHでのオンラインテスト
VARの理論・プロトコールに関する講義
4月 VAR機材を使用してのトレーニング
5月 学生デモンストレーターを活用したトレーニング(オンラインテスト)
6月 学生デモンストレーターを活用したトレーニング(オンラインテスト)
U-16インターナショナルドリームカップでのオンラインテスト
7月 国際ユースサッカーin新潟でのオンラインテスト
EURO JAPAN CUPでのオンラインテスト
明治安田生命J1リーグでのオフラインテスト
8月 SBSカップ国際ユースサッカーでのオンラインテスト
学生デモンストレーターを活用したトレーニング(副審に特化したプラクティカル)
明治安田生命J1リーグでのオフラインテスト
9月 VAR機材を使用してのトレーニング
JリーグYBCルヴァンカップ 準々決勝でのVAR導入(計8試合)
10月 【予定】JリーグYBCルヴァンカップ 準決勝・決勝でのVAR導入(計5試合)
12月 【予定】J1参入プレーオフ 決定戦でのVAR導入(1試合)
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