「柏フットボールジャーナル」鈴木潤

【無料記事】【レビュー】 「終盤の連続弾で勝利した柏U-18が首位奪還」 U-18プレミアリーグEAST第13節 柏レイソルU-18 vs JFAアカデミー福島 (2014/09/15)

9月14日 U-18プレミアリーグ第13節

柏U-18 4-1 JFAアカデミー福島

得点者:34分 白川恵士朗(柏)、70分 谷口憧斗(アカデミー)、81分 浮田健誠(柏)、83分 デン・ヘイジャー・マイケル・ジェームス(柏)、90+3分 宇野木悠佑(柏)

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柏U-18

GK1木村真、DF2熊川翔、3鈴木哲平、7麦倉捺木、MF4中山雄太(C)、6手塚康平、10山本健司、13安西海斗、FW8会津雄生、19浮田健誠、24白川恵士朗

 

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JFAアカデミー福島

GK1似島康太、DF3宇野能功、5堀大貴、16牧野潤、MF7金城ジャスティン俊樹(C)、8瀬川泰樹、9加賀山泰毅、13浅見貫太、FW10草野侑己、11高森大夢、18谷口憧斗

 

前々節の札幌U-18戦、前節の流通経済大柏戦と連敗し、首位から陥落した柏U-18にとっては、この試合前日に清水ユースが青森山田に敗れたことによって、首位に返り咲くチャンスが訪れた。

キックオフ直後こそ、JFAアカデミーが前線からプレスを仕掛けて押し込み、その勢いで敵陣深い位置でのFKやCKを何本も取って柏のゴールに襲い掛かる。ただ、JFAアカデミーの出方に慣れ、どこにスペースが空いているのか、相手がどのように仕掛けてくるのかという部分を見極めると、徐々に柏が本来のリズムを取り戻していく。

実はこの試合では、大きな試みがあった。4-3-3システムの柏が、アンカーの安西海斗が最終ラインに降りて、鈴木哲平と手塚康平の間に入り、3-4-3の形にシフトチェンジする。それによって「CBが高い位置を取れて攻撃に参加できる」(手塚)というのだ。初の試みとあって、実戦ではなかなかスムーズにいかない部分も多々見られたが、4-3-3と3-4-3の使い分けができるようになれば、また柏の攻撃の形としても新たなオプションが加わることになるだろう。

 

中盤の3枚がゾーンの間を的確に突き始め、左サイドでは会津雄生と麦倉捺木、右サイドでは白川恵士朗と熊川翔、中盤からサイドのユニットへボールを散らして、縦と横の幅を巧みに使って柏が攻撃を組み立てていく。14分には熊川のクロスからファーサイドの中山雄太がヘッドを放つも、これは惜しくもバーを叩いた。

対するJFAアカデミーは一転して押される展開になったとはいえ、いわゆる“ベタ引き”状態ではなく、しっかりと3ラインをコンパクトにしてブロックを作り、ボールを奪ったら素早く前へ出ていく姿勢を見せる。戦術的・組織的に統率がなされ、柏の攻撃には最後の縦パスに対処し、そこから鋭いカウンターを繰り出していった。

先制点は34分、柏が挙げる。浮田健誠のポストプレーから右サイドの白川が左足でゴールのニアサイド上部を射抜く。前半は1-0で柏リードで終了した。

 

後半はさらに試合が動いた。試合自体の構図は変わらないが、JFAアカデミーの戦い方はしっかり整理されていたため、柏はボールを握りながらも、切れのあるカウンターに度々脅かされる。59分、JFAアカデミーの草野がGK木村真へのチャージで一発退場になってしまうが、これは柏の背後のスペースをスピーディーに突き、加賀山泰樹からのパスに抜け出した草野のボールタッチが大きくなってしまったため、そのボールに対するチャレンジの末、木村へのアフターチャージになってしまったもの。結果的には退場になったものの、「10番のコントロールが良かったら失点していた。うちの甘さが出てしまった」と下平隆宏監督も認める、JFAアカデミーの鋭い攻撃だった。

しかも、数的優位を得た柏は、この後サイドから素晴らしい攻撃を見せるのだが、“1人多い”という意識ゆえに綺麗にやろうとし過ぎたのか、ボックス内で必要以上にパスをつなぐ場面が目立ち、良い形を作るのだがフィニッシュまで行けない。そうこうしているうちに、宇野能功のロングフィードから谷口憧斗のランニングと絶妙のトラップ、そしてシュートまでの素早いアクションによって、JFAアカデミーが見事な同点ゴールを決めた。

 

「首位に戻るチャンスだったので、みんな今日に懸ける意気込みは大きかった」(中山)

残り10分。その“首位奪還”に懸ける柏の強い気持ちが結果となって表れる。

この日、大島康樹に代わってスタメンで起用された浮田健誠。この試合では好機を何度も迎えていたが、GKのファインセーブ、バー直撃など、あと一歩及ばずゴールには至らなかった。そこで“決まらない”ということをナーバスに捉えるのではなく、「前節や前々節に比べたらシュート数は多かったので、打てば入るという気持ちでいました」と、チャンスを狙い続けた結果、81分にその時が訪れる。手塚康平の浮き球パスをデン・ヘイジャー・マイケル・ジェームスがヘッドで折り返し。ファーサイドの浮田はトラップで落とした後、左足を振り抜いて角度のない位置からニアを破る。

この土壇場での失点に、ここまで数的不利を強いられながらも粘り強い戦いを見せてきたJFAアカデミーも力尽きたのか、83分には浮田、会津の連携で鮮やかに崩し、マイケル・ジェームスが決めて3点目。さらに後半アディショナルタイムには、途中出場の大島康樹が、同じく途中出場の宇野木悠佑にドンピシャのスルーパスを通し、宇野木がGKかわしてゴール、4-1とした。連敗中でこの一戦を迎え、柏の「首位に立つこの機を逃すものか」というメンタリティーが、終盤の連続ゴールを生んだ。

首位を奪還した柏のキャプテン、中山は「僕たちにはプレミアで優勝するという目標がありますが、それだけにうつつを抜かすのではなく1つ1つ目標を持って、自分たちのサッカーをやっていきたいという統一意識はある。それに向けてやっていきたいと思います」と、これからの意気込みを語った。

次節は、この夏の日本クラブユース選手権王者、三菱養和SCユースが相手となる。首位に立ったとはいえ、まだまだ厳しい戦いは続く。その強者が集うハイレベルの戦いこそ、このユース年代のトップを決するプレミアリーグの醍醐味だ。

 

●試合後のコメント

下平隆宏監督

「単純に勝てば首位に戻れるということで、今日の試合は勝つことに関してはこだわりを持って臨ませました。立ち上がりはJFAアカデミーの方がセットプレーなどで圧力をかけてきましたが、そこはどこのチームもそうだし、それがどのように来ているかが見えてくると落ち着くだろうと思っていました。流経柏戦ではそこで失点してしまったので、セットプレーの守備ではより集中しなければいけないし、自然と流れは来ると思っていたので、それでゲームの主導権を握る流れになったのは良かったと思います」

 

―10分過ぎからはゾーンの間を取りながら、レイソルらしい攻撃ができました。

「良いゲーム運びができたと思います。あとは、今日のゲームでは特に背後を取りに行く意識を持たせていました。いつもオーバーラップを囮で使っていたので、多少相手に読まれていたとしてもSBを使えと話し、2列目が背後をランニングしたら、それも思い切って使っていこうと。相手の嫌なこと嫌なことをやってみようと伝えました」

 

―相手に退場者が出た後に失点してしまったことは?

「心の隙がありましたね。1点リードしているし、相手が退場したということで。相手のカウンターを食らっていましたし、あれで失点していてもおかしくはなかったです。退場の場面も、10番(草野侑己)のコントロールが良かったら失点していたでしょう。そこにうちの甘さが出てしまいました」

 

4 MF 中山雄太

「今日の意気込みは、もちろん2連敗中で、僕たちは(プレミアリーグを優勝して)日本一を目標にしているので、3連敗はできない。昨日、エスパルスが負けて、首位に戻るチャンスでした。みんな今日に懸ける意気込みは大きかったです。みんながアグレッシブにできたと思います。最初から相手のプレッシャーを剥がしていきたかったですが、前節は相手も大勝して勢いがあると思っていたので、1つ1つ対処して自分たちのサッカーに持っていきたいと思って、形は途中から良くなったので、落ち着いてやっていこうというメンタルになりました。バーに当てたシュートは決めたかったです。自分たちが4点ぐらいを取って勝っている試合では、自分もゴールを決めないと、心残りになるので(苦笑)、勝ったのは嬉しいですけど、個人的な意見ではゴールも欲しかったです」

 

6 MF 手塚康平

「今日は札幌、流経柏と連敗していたので、絶対に勝たなくてはいけないと思って臨みました。ここで負けたら優勝が遠ざかってしまうと全員が思っていたので、良い結果につながりました。今日はCBで出ましたが、前にCBで出場した時も組んだのが(鈴木)哲平でした。その時も大事な試合で、その時は完封できましたが、今日は1失点。自分が競り合いに弱いので、代わりに哲平が弾き返してくれて、助け合いながらやれてよかったです。アンカーをやる時も守備が課題なので、CBで守備をやって、その経験をアンカーの時につなげたいです」

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