【無料記事】【レビュー】 「柏スタイル沈黙、“ユース年代最強”を逃す」 高円宮杯U-18チャンピオンシップ 柏レイソルU-18 vs セレッソ大阪U-18 (1983文字)(2014/12/15)
高円宮杯U-18サッカーリーグ2014 チャンピオンシップ
柏U-18 0-1 C大阪U-18
得点:60分 高田和弥(C大阪)
スターティングメンバー:
柏U-18
GK16松本健太、DF2熊川翔、7麦倉捺木、20上島拓巳、37古賀太陽、MF4中山雄太(C)、6手塚康平、14山﨑海秀、FW8会津雄生、9大島康樹、23伊藤達哉
C大阪U-18
GK1齋藤和希、DF6温井駿斗(C)、9庄司朋乃也、MF2平野智也、5仲原潤也、7西本雅崇、10前川大河、37松下怜哉、FW8坂本将基、高田和弥、18岸本武流
試合終了後、7年前の記憶がフラッシュバックをした。2007年12月24日、長居陸上競技場で行われたJユースカップ決勝、柏が1-2でFC東京に敗れた試合である。あの試合後、人目も憚らず、工藤壮人は涙を流していた。
大会も会場も違う、ただ12月の寒さと、前線から繰り出す相手の激しいプレッシャーに、柏が本来の持ち味を発揮できなかったという部分が妙に重なったのだ。
このチャンピオンシップ、C大阪は立ち上がりから柏の最終ラインに猛然とプレスを仕掛けてきた。その勢いをかわして、柏はパスをつなごうとはするが、パスが短かったり、相手に引っ掛かるなどして、パスが2、3本と続いていかない。ただし、プレスに押されながらも、4分には左サイドの伊藤達哉が個人技で打開。マイナスのグラウンダークロスに会津雄生が合わせるが、柏がこうして敵陣深くに入ったとしても、集中力の高いC大阪守備陣は、身を挺してそのピンチを防いだ。
「少し時間が経つにつれて、うまくGKを使い、GKからフリーな選手へ運べと思い出させるような形で、少し落ち着いた展開になった」(下平隆宏監督)
25分過ぎからは、C大阪のプレスの勢いにも慣れてきたのか、柏がようやく持ち味である流れるパスワークを発揮し始め、コンパクトなC大阪の狭い守備ゾーンを掻い潜っては、サイドでフリーの会津、伊藤が高い位置でポイントを作る。40分には麦倉捺木のクロスを大島康樹とDFが競ったことでゴール前へこぼれ、それを会津が狙うが、これもC大阪DFの素早い寄せもあって、枠を逸れた。
後半、C大阪のプレスが強まると、柏は前半に掴み掛けていた流れを維持できなくなっていく。プレッシングサッカーを標榜するチームにとっては、奪えなくても相手のパスが足に当たり、それがタッチを割るだけで「自分たちのプレスがハマっている」という感覚を掴む。逆に、パスサッカーを志向するチームは、ボールを奪われなくても、相手の寄せによってパスが乱れると、「自分たちのサッカーができていない」と感じる。心理面でもC大阪が優位に立ち、それがさらに柏のパスの乱れを生む要因にもなった。
「どうしてもビルドアップに手間と時間と疲労が加わって、最後のフィニッシュまでパワーを持って行けなかったという印象」(下平監督)
プレスに押された局面を打開するために、柏は後方に人数を割き、その分、前の大島、会津、伊藤へ展開しても、攻撃に人数をかけられなくなり、彼らにボールが入っても、C大阪の選手の素早い寄せで囲まれてしまう。
柏の攻撃が良いリズムを奏でる時は、アンカーと、その前の2列目の2選手、そして最前線の選手を含めた4人のつながりが非常にスムーズになる。縦パスの出し手、受け手、スペースへ抜ける選手と、そのコンビネーションが綺麗な流れを生み出すが、このチャンピオンシップでは、そんな連携がほとんど見られなかった。
そして60分、セットプレーのこぼれをC大阪の高田和弥に決められ、C大阪が先制。
その後、アディショナルタイムを含めて30分以上の時間が残されていたが、柏は“はめられた”そのリズムを変えられず、特にビッグチャンスを作ることもなく、試合終了のホイッスルを聞いた。
この試合は柏U-18というよりも、今後アカデミーからトップチームへスタイルが移行されていくと考えれば、こうした展開にハマってしまった場合は、果たしてどう打開していくのか。トップチームを含めた柏の全カテゴリーに突きつけられた命題として、決して軽視してはならない問題である。
ただ、7年前に悔し涙を流した工藤、茨田陽生、酒井宏樹らは、その悔しさをトップチームの戦いに存分に生かし、彼らはプロの世界ではタイトルホルダーとなった。また、2010年の日本クラブユース選手権準優勝時に1年生で唯一出場していた秋野央樹も、当時の屈辱を力に変えて、その2年後の同大会で優勝を成し遂げた。
もちろんチャンピオンシップで優勝し、日本一になるに越したことはない。しかし、3年生は今回の敗戦をこれから先、各々が進む道で生かしていくこと、1、2年生は来年、再来年の戦いに生かしていくこと、それが何よりも重要である。
Repoted by 鈴木潤