「柏フットボールジャーナル」鈴木潤

雨中の激闘、自分たちのサッカーを貫くことで見えたものとは/高円宮杯U-18プレミアリーグ EAST 第5節 柏U-18 vs 横浜FMユース【レビュー】

高円宮杯 JFA U-18サッカープレミアリーグ 2022 EAST 第5節

柏U-18 1−2 横浜FMユース

2022年5月1日 日立柏総合グラウンド 16:00KO

得点者:29分 島田春人(横浜)、88分 内野航太郎(横浜)、90分 山本桜大(柏)

●メンバー

GK21タイガ オリバー ハーパー、DF4大槻豪、5西村龍留(Cap)、22田村心太郎、25伊達歩由登、MF3花松隆之祐、8中村拓夢(→86分 40 市村健)、10モハマド ファルザン 佐名、FW9山本桜大、13栗田翔馬(→71分 14 逢坂スィナ)、46関富貫太

 

試合前から降り続いた雨は弱まるどころか、試合開始とともに雨足は徐々に強まっていく。

そんな難しいピッチコンディションではあったが、「相手のプレッシャーを剥がし、最終ラインをブレイクすることで自分たちの時間に持っていく」(酒井直樹監督)というチームのテーマからすれば、パスをつないでいくうえでスリッピーなピッチは決してネガティブな要素ではなかった。

柏の試合の入りは非常に良く、CB、もしくはGKから出るパスを田村慎太郎が好ポジションで引き出し、中村拓夢、モハマド ファルザン佐名との連携で相手の中盤でのプレッシャーを剥がし、両ワイドへ展開、関富貫太、栗田翔馬が切れ込んで敵陣へと攻め込んでいく。

7分には関富のカットインクロスから、セカンドボールをモハマド ファルザン佐名がシュート、さらにそのこぼれを山本桜大が狙う決定機が訪れるも、横浜FMのGK高橋太陽のビッグセーブに阻まれてしまい、柏は先制のチャンスを逃した。

横浜FMのハイプレッシャーに対し、ビルドアップで応戦する柏だったが、次第に試合の流れが相手に傾き始めた苦しい時間帯にCKから先制点を許したことで、試合の主導権は横浜FMが掌握した。

「相手のプレッシャーやプレスバックが続き、最終的にF・マリノスは蹴っても9番の選手(内野航太郎)が収めてしまうため、消耗やオーガナイズのずれもあってうまくいかない時間が長くなってしまいました」(酒井監督)

そんな難しい展開の中でも、相手のハイプレスを剥がしたときには一気にスピードを上げて敵陣の背後のスペースへ出ていくをシーンも何度か見られた。だがアタッキングサードに入ったときの連携のズレや、わずかな判断ミスもあり横浜FMの中央の守備を突破するには至らず。

試合終盤には横浜FMのプレッシャーの勢いが落ち、それに伴い押し返す柏が敵陣の深いエリアまで攻め入る時間帯が訪れるも、88分に一発のボールで横浜FMの内野に背後を取られ、手痛い2失点目を献上してしまう。

失点直後には柏も途中出場の逢坂スィナの抜け出しから、パスを受けた山本が豪快な一撃でネットを揺らし、1点差に詰め寄った。この勢いに乗じてアディショナルタイムには攻勢を仕掛けて同点を狙ったが、柏に残された時間は少なく、1−2で今季のプレミアリーグのホーム初戦を落とす形となった。

ただ、横浜FMの凄まじいハイプレッシャーに対して苦しみながらも、自分たちのサッカーを貫こうとしたこと、最後まで戦う姿勢を切らさなかったことは評価したい。出し手と受け手が同じスペースを共有しながらも、受ける瞬間に相手の激しい寄せでコントロールしきれずにボールを失ったシーンも多々見受けられた。そこは「真ん中の選手がロストをせずにコントロールをして循環させる精度を上げる、普段はこだわれないところをこだわっていこうと、ひとつのきっかけになった」と酒井監督が振り返るとおり、高強度の相手をいかに剥がすかという基準は、選手たちの間でも今回の対戦を経て引き上げられたことだろう。それぞれがこの試合で感じた自分の課題を克服し、次の試合にどうつなげていくか。育成年代に重要なのは、そのサイクルである。

Reported by 鈴木潤

 

■ 試合終了後コメント

○酒井直樹U-18監督

「開幕からF・マリノスの試合を見させてもらいましたが、どの試合もハイプレッシャーで半面になっている試合ばかりでした。でもレイソルのカラーとしては、そういう相手に対し、ひとつ目、ふたつ目のプレッシャーを剥がし、最終ラインをブレイクすることで自分たちの時間に持っていくということがテーマでした。それはチームとしてのテーマでもあるので、色々と準備してきたんですが、それ以上に相手のプレッシャーやプレスバックが続き、最終的にF・マリノスは蹴っても9番の選手(内野航太郎)が収めてしまうため、消耗やオーガナイズのずれもあってうまくいかない時間が長くなってしまいました。ただ前半は良かったと思います。選手にはチーム戦術、グループ戦術を落とし込み、特に前節の流経大柏戦ではうまくできている部分が多かったですし、サニックス杯で彼らも自信を掴んできています。今日の試合は敗れましたが、決めるところはしっかりと決める、真ん中の選手がロストをせずにコントロールをして循環させる精度を上げる、普段はこだわれないところをこだわっていこうと、ひとつのきっかけになったと思います」

 

○山本桜大

「F・マリノスが相手で自分たちがボールを持てない時間帯もあったんですけど、所々でチャンスを作れたので、自分としてはもっとゴール前で決め切る決定力の課題が残りました。チームとしては繋ぐところで一人ひとりのトラップが流れて(相手のプレッシャーに)ハマっていたので、止める蹴るという基本的な部分をもっと高めていかなければいけないと思いました。最初に前に抜ける人と、後ろで見ている人が連携面でもっと声かけをしていけば、右サイドからはかなりカットインでチャンスがあったので、そこからのコンビネーションが増えたと思います。ゴールシーンは逢坂スィナくんが背後に抜けてくれて、自分はゴールを決めたかったので前へ前へという意識で出ていったら出してくれたので、あとは『入れ!』と思って思い切り打ちました」

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