無料記事【選手ストーリー】FC東京 背番号1 GK児玉剛 最終話[FC東京2年目]
(photo 同い年の森重真人と児玉剛)
京都、愛媛、山形とクラブを渡り、2019年、FC東京へ完全移籍。
プロになって11年目。
ポジションはゴールキーパー。
32歳、児玉剛の今。
最終話[FC東京2年目]
「FC東京は、首都にあって、歴史があって、規模が大きくて。そういう印象は誰もがもってると思うけど、実際入ってみて、ビッグクラブだなと思うところが結構ある。
選手一人ひとりの意識や技術、全てにおいて、人間としてもレベルが高い。
若い選手もそう。おとなしい選手が多いけど、情熱をもってやってる」
世界に通用する選手の育成に力を入れているFC東京。
児玉が加入した2019年、横浜F・マリノスに期限付き移籍をしていた17歳の久保建英がFC東京に復帰し、注目を浴びた。
2017年11月1日、FC東京とプロ契約を結んだ久保は、11月5日、J3のガンバ大阪U-23戦でプロ初ゴールを決めると、11月26日には、J1のサンフレッチェ広島戦でJ1デビュー。16歳5か月22日でのJ1出場は、森本貴幸、宮吉拓実に続き、歴代3位の年少記録となった。
マリノスで経験を積んだ久保はFC東京に復帰すると、開幕戦(川崎フロンターレ戦)からスタメン出場。リーグ戦13試合に出場し、4ゴール3アシストをマークするなど、レギュラーとしてチームの勝利に貢献し、2019年6月、レアル・マドリーへの移籍を発表した。
「タケ(久保)はうまいし、努力もする。チーム全体にいい影響を与えてくれた。若いけど、プレーで引っ張って、チームに勢いをもたらせてくれた」
2019年夏、FC東京は、ホームスタジアムである味の素スタジアムが、ラグビーワールドカップ2019の試合会場となり、リーグ戦 第24節からアウェイ8連戦の強行日程になったが乗り切り、最終節まで優勝の可能性を残して戦った。
タイトルは逃したものの、リーグ戦19勝7分8敗の勝ち点64で、クラブ史上最高順位の2位という成績を残した。
「FC東京には、勝たなきゃいけない試合に勝つ、勝負強さがある。ここぞというときに発揮できるチーム力がある」
◇
FC東京でゴールキーパーコーチを務めるのは、“シンさん”こと森下申一コーチ。
シンさんは、ユース時代から児玉を見てきたという。
そのことを、児玉は知らなかった。
いつでも呼べるように、常に児玉を見てきたシンさんは、児玉のプレーや姿勢を見込んでいた。
森下「京都ユースでのプレーはずっと見ていましたし、大学時代も見ていました。僕がジュビロのときには、獲得しようか、というところまでいきました。J2のキャリアが長くて、まだJ1でプレーしてないですが、十分できると思っています」
児玉「シンさんは60歳近いのに、めっちゃ蹴れるし、すごいっすよ」
(photo 森下申一ゴールキーパーコーチ)
◇
新型コロナウィルスの影響でJリーグが開催延期。
「今の時期、メンタル的に大変やねー、試合ないし。いつ次、試合始まるか、わからへんし」
Jリーグ再開が待たれる中断期間も、児玉はいつもと変わらない姿勢でトレーニングを続けていた。
プロになって11年目。
ポジションはゴールキーパー。
ゴールキーパーは、ひとつのポジションを長い時間かけてでも、取りにいかないといけないポジション。
児玉はケガなく2020年シーズンを迎えたが、2月23日、Jリーグ開幕戦となった清水戦では、ベンチに入れなかった。
「キーパーは試合に出るのが難しいし、ポジションによって違うけど、試合に出てなんぼやと思ってるからね、サッカー選手は。その気持ちはプロ1年目から変わってない」
FC東京には、児玉の他に3人のゴールキーパーがいる。
正ゴールキーパーの林彰洋、昨季J3の舞台で経験を積んだ波多野豪、今季トップ昇格を果たした野澤大志ブランドン。
2019年、年間を通してハイパフォーマンスを見せた林彰洋は、2019 Jリーグベストイレブンに輝いた。
林彰洋(1987年5月7日生まれ)と児玉剛(1987年12月28日生まれ)は、同い年。
「キーパーってさ、チームによっては、めっちゃ関係が悪くなったりすんねん。キーパー同士、喋らへんとか。俺、そういうの嫌やから。アキ(林)はそういう奴じゃないから、よかったよ、ほんまに」
「京都の時と今は、心の持ちようが全然ちがう。悔しいで。悔しいし、試合に出たい気持ちは当然あるけど、いい意味で落ち着いてるっていうか。自分には、もう自信があるし。『試合に出たらやれる』っていうのを常に持ってるから。
京都のときは、試合に1回も出てなかったからさー。焦ってるし、『早く1試合、出たい』っていうのがあったけど、俺はこれまでやってきて、やれるっていう自信が、今はある」
「どの年齢でも、どのカテゴリーでも、どのタイミングでも、自分が意識高くやることが大事で、どの立場であろうがやることは変わらず、毎日毎日、真剣にやることが大事」
◇
目標は、チームのタイトル。
「チームがタイトルを獲るために力を与えたい。今は、試合がないからちょっと難しいけど、常に自分の置かれている立場でできる最大限のことをする。試合に出てるんやったら、試合でいいプレーをしなあかんし、試合に出てないんやったら出てないなりに、チームに貢献する方法はいくらだってある」
「アキが試合に出てるときは、俺は同い年やし、気軽に喋り合えるから、あのプレーはどうやったとか、俺ならこうする、っていう話もできる。それはキーパーに関わらず、試合に出てるフィールドの選手に対しても、そう」
長谷川健太監督が2020新体制発表会で「チャンピオンになるためには立ち止まってはいられない。我々がチャンレンジしなければ、チームは活性化していかないという強い思いでいる。東京というチームが、アジアでチャンピオンにならなければいけない」と語った。
FC東京が狙うのは、悲願のJ1初タイトルだけではなく、アジア、そして、世界へと広がる。過密スケジュール必至の今シーズン、選手一人ひとりの役割や力強いスピリットがより生きてくる。
◇
家では、3人のお父さん。
「子どもは3人。6歳、3歳、1歳。一番上の子は、今年から小学校。俺と似てるなーと思う。
Jリーガーになれると思ってるからね。
家にいるときは、子供とあそんでるかな。
今、学校ないから、全員家におるしな。
しかも、3人おるから、誰がおらんとか、わからん、家ん中に。
気づいたら『あれ、アイツおらんくない?』みたいな」
児玉のサッカー人生は続く
photo & text by Noriko NAGANO
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