サッカーの羅針盤

【進化する補強リスト2022】ジュビロ磐田編1/18:仙台の地でバージョンアップした上原力也の帰還と挑戦

2021シーズンはJ2優勝という最高の形でJ1昇格を果たしたジュビロ磐田。歴史に残る素晴らしいチームでしたが、マサくんこと鈴木政一監督が退任し、終盤戦で代行を務めた服部年宏コーチも福島ユナイテッドの監督に就任しました。

ヴァンフォーレ甲府を3位に導いた伊藤彰新監督のもと、どういったチームでJ1復帰のシーズンに挑んで行くのか。

 

杉本健勇(←浦和レッズ)

J1復帰シーズンとなる磐田にとって前線は鍵になりますが、この大型FWが加入しました。セレッソ大阪で2017シーズンには22得点を記録しましたが、移籍した浦和レッズでは鳴かず飛ばず。

2021シーズンは浦和でも出番を得ればポストプレーや前からの守備で存在感を見せましたが、得点力は影を潜めていました。しかし、夏に期限付き移籍したマリノスではボックス内での仕事が増えて、11試合で3得点という記録以上にインパクトを見せました。

象徴的だったのがマリノス移籍初ゴール。堅守の名古屋グランパスを相手に、FKのセカンドボールからティーラトンのクロスにヘッドで合わせました。

そして試合後のフラッシュインタビュー

何かと誤解されやすい傾向もありますが、メディア対応は人一倍よく、謙虚な素顔が垣間見えるインタビューです。

杉本健勇がマリノス移籍時に語っていたのは日本代表復帰。マリノスでも森保一監督を認めさせるレベルの活躍には至りませんでしたが、ジュビロでは遠藤保仁をはじめ山田大記、大津祐樹など出しては多く、小川大貴からのクロスもあります。

また同じ長身FWでありながら、タイプの異なるファビアン・ゴンザレスやジャーメイン良とのコンビをどう築いていくのか。できるかぎりボックス内で勝負できる環境を整えることがゴール量産の鍵になるでしょう。

杉本健勇取材記事:「磐田から”あの場所”へ」杉本健勇が”ラストチャンス”と語る意味

 

 

ジャーメイン良(←横浜FC)

アメリカ人の父と日本人の母を持つジャーメインは高い身体能力を持つ左利きのストライカーということで、高校時代から期待されていました。流通経済大柏からそのまま流経大に進み、2017年にはユニバーシアードの代表として優勝を果たしました。ベガルタ仙台の特別指定選手として川崎フロンターレ戦でデビューしています。

大きな期待を背負っただけに、仙台の3シーズンではたまにすごいゴールを決めるものの、安定してチームを勝利に導くことができずにもがき苦しんだ経験があります。今でも当時のゴールを振り返ると、全てインターナショナルレベルの選手かと思うほどにダイナミックです。言い換えると、一にも二にも継続性が飛躍のための課題ということになります。

横浜FCでは前線の主力としてセンターフォワードから右サイドハーフ、さらには二列目も担い、多様な働きを見せました。2得点2アシストという結果だけ見ると物足りないですが、その数字だけで測りきれない攻守の貢献をしていたと思います。だからこそジュビロも獲得の手をあげたのでしょう。

ただ、やはり結果を出すことに関してはまだまだ課題が見られるのも確かです。ボックス内で良い形を作ってゴールにつなげていくこと。おそらくJ2ならば現時点でも二桁を期待できるタレントですが、J1となると型にハマってゴールを量産できるポイントは狭くなるので、フィニッシュの幅広さや味方の意図を読み取る観察眼、センスも問われてきます。

スプリント力が高く、シュートのバリエーションも豊富に持つ選手だけに、そこに味方のパスを引き寄せていく説得力のあるポジショニング、動き出し、パーソナリティーが求められてくるでしょう。ただ、ジュビロは良いパサーに事欠かないので、それがしっかりとできればゴール量産の道が見えてくるということです。

あとは伊藤彰監督の戦術を早期に理解して落とし込めるか。仙台では渡邉晋監督(現・モンテディオ山形コーチ)の薫陶を受けた選手でもあるので、そうしたところにも期待です。

関連記事:”俊英”ジャーメイン良が仙台で恩師から学んだもの:伊藤彰監督は”ナベさん”に通じる

 

袴田裕太郎(←横浜FC)

左サイドのスペシャリストとして期待されますが、3バックの場合はウイングバックより左センターバック での起用がメインになりそうです。見た目は髪型を含めて森岡陸に似ていますが、もう一回り大きく、守備の時にガツっと当たる感じが頼りになりそうです。

持ち味はやはりボールを奪う能力で、パスカットなども見所はありますが、何と言ってもドリブラー から直接ボールを奪って味方の攻撃につなげるプレーが目を引きます。4バックであれば左サイドバックがメインになりますが、やはり可変性の高い3バックを採用する伊藤彰監督のもとでは、スタートポジションが中央でも、ボールを動かしながら左ワイドに開くシーンが多く、それが前の選手を引き上げることにもなります。

磐田のU−15に在籍した経験を持ち、過去には浜松開誠館高校と明治大学で2回ジュビロに練習参加して、内定を勝ち取れなかった袴田ですが、見返したいと言う思いだけでなく、やっぱりジュビロでプレーしたいと言う思いを持ち続けていたようです。

「自分としてはいつかジュビロでプレーしてみたいと言う思いは持ち続けていたので、明治大学や横浜FCでも、そこの目標に向けてやり続けていた。そこはブレずにやり続けてよかった」そして横浜FCでJ2とJ1の両カテゴリーをプレーしていることで「J1とJ2では全然違う」と語ります。

ベースとなる身体能力に加えて、昨年の残留争いで鍛えられたタフネスや集中力を発揮していけば、左利きと言う特性を生かせる3バック左のエキスパートとして、ジュビロの攻守をさらに引き上げる期待があります。しかしながら伊藤槙人や未合流ですが新外国人のリカルド・グラッサなど、ハイレベルなライバルが多くなります。

その意味でも伊藤監督の戦術に早く順応して、ボランチの遠藤保仁や左ウイングバックの候補になる松本昌也と良い連携を構築できるか。2019年にはウイングバックもやっていたので、複数ポジションができる選手としてもアピールしていくことになりそうです。

関連記事:入るから活躍するへ。袴田裕太郎の夢の続き:ジュビロを見返してやると思ったこともあった

 

上原力也(←ベガルタ仙台)レンタルバック

正直言えば、ベガルタ移籍前までの上原に関してはジュビロ磐田のサポーターに説明する必要は全くないかもしれません。ただ、1つ言えるのはジュビロでの経験はベガルタでも確実に生きていたということと、ベガルタで学んだことを改めてジュビロで生かせる可能性は高いということです。

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