「川崎フットボールアディクト」

【新体制発表会見】こぼれ話。会見の場で笑いを取るということ

新体制発表会見にて、「ずっとこのチームを見てきたので、プレー面ではもちろん、ピッチ外のところでも何をしなければいけないのかというのは(場内・笑)、すごい分かっているので」との発言で見事に笑いを取った三好康児は、この笑いが狙い通りだったと振り返る。思った以上に会見の雰囲気がすごく、そのために緊張していたと話すあの場で、「笑いは取りたいな」と思い、見事に取ったことについて「狙い通りです」と言ってのけるのだから強心臓だとしか言いようがない。

ユース時代、下級生には順番に練習試合時に副審が回ってくるが、ある試合中に三好が副審を務めた時のこと。ゴールが決まった場面で三好はオフサイドの判定。当然のことながらノーゴールに。もちろん、ノーゴールにされた側の選手は「ちゃんと見てろよ!」と悪態をついたが、それに対し三好はボソリと「オフサイドだし」とつぶやいていた。その言葉のやりとりを現場で見た立場から言わせてもらうと、それは三好の気持ちの強さが出たものとして説明が付くものだった。

無口な三好を見ていて、おとなしい選手なのかなと思ってきたが、どうやらそうではないということが、たとえば先輩をいじる姿からじわじわと見えてきつつある。風間監督はよく「技術は頭の中にある」と話すが、どんな大舞台にも物おじしない強心臓は、そういう舞台を乗り切るためにも有効である。新体制発表会見での自己紹介の姿から、改めて三好という選手の伸びしろを感じさせられた次第だ。

ちなみに真横で笑いを取られた形の板倉滉に、三好の意図的にとった笑いについてやられた感があるのかどうか聞いてみた。すると板倉はそうでもないと話す。覚えている方もおられるかもしれないが、板倉は自己紹介時に順番を間違え、早めに席を立ってしまった。その後、自分の番が来た時、そのハプニングを自らまくらに使い笑いを取っていた。臨機応変な発言によって手にした笑いだったわけだ。時々刻々と局面が変化するサッカーにおいては、そうした状況判断は試合の行方を左右する大きな要素となる。彼ら二人が取ったあの新体制発表会見での笑いは、掘り下げると意外とサッカーにも通じるおもしろさがあると言える。

(取材・文・写真/江藤高志)

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