「川崎フットボールアディクト」

【#オフログ】選手たちと、サポーターの2015年シーズンが始まる

todoroki

ショーンにインタビュー(【インタビュー】ショーン・キャロルが語るフロンターレやJリーグ。「選手は、フロンターレに加入したら川崎のファミリーに入る。そういう何か、特別なクラブだと思う」)したのは、英国人にとってフロンターレがどう見られているのかを知りたいという単純な動機からだった。

彼とスタジアムで会い共にサッカーを見ていると、サッカー先進国出身者らしい深い洞察に基づく過激な言葉をしばしば耳にした。そんな目を持つショーンに第三者的な視点に立ってもらい、フロンターレについての率直な意見を聞いてみたかったのだ。

実際に取材すると、ショーンからはインタビューのタイトルにも使った以下のような表現ががいくつも出てきた。

【インタビュー】ショーン・キャロルが語るフロンターレやJリーグ。「選手は、フロンターレに加入したら川崎のファミリーに入る。そういう何か、特別なクラブだと思う」
https://www3.targma.jp/kawasaki/2015/03/04/post953/

選手は、フロンターレに加入したら川崎のファミリーに入る。
そういう何か、特別なクラブだと思う。

厳しい言葉を予想していたぼくは少々拍子抜けした。
ショーンはフロンターレはファミリーだと言った。

たぶん、その通りだと思う。

そしてそれがフロンターレというクラブの根っこにある価値観で、ショーンがそこまでフロンターレの事を見ていたとは思わなかった。

フロンターレがファミリーの雰囲気を作れているのは、等々力の温かさがあるからだろうと思う。

コアなサポーターたちはたとえ不甲斐なく負けたとしても、「本当に悔しいのは選手たちだから」とブイーングをしない。そうやって悔しさを噛み殺して作ってきた不文律が、等々力の温かさの根底にある。

ぼくは、ブーイングはサポーターの権利だと思っていて、そうしたいのならすればいいと思ってきた。お金を払って試合を見に来たのだから、その試合がつまらないものなのであれば、文句を言う権利はあると思ってきた。だから、近年、時折聞こえてくるブーイングも残念ではあるが、仕方のないものだと思っている。

ところがフロンターレのコアサポーターはブーイングすることがない。彼らはその権利を有しながら、あえて行使せず「一番悔しいのは選手たちだから」と歯をくいしばって声援を続ける。そんな彼らの価値観は、ショーンのインタビューを読んでもわかるように、しっかりと等々力に浸透しているのだと思う。

連敗して苦しんで、ようやく手にした勝利の味は格別なはず。たとえばそれは、2011年中に起きた泥沼の連敗を止めたアウェイでの第26節の山形戦がそうだった。

連敗中のチームとそれを取りまくサポーターの雰囲気は悪く、試合会場はあいにく山形と遠方だった。人が集まる要素が少ない試合だからこそ、山形に駆けつけた数少ないサポーターたちは、目の前の勝利を喜んだ。ブーイングもせず、チームを信じて声を出し続けたことを心の底から誇ったはず。そして全身全霊で喜んだ。美しい光景だった。

極限の歓喜があるのだとすれば、その条件は2つだろうか。

ひとつは2011年と同様の連敗を前提にしたもの。ただ、これはもうこりごりだ。だとすればサポーターに残された最大限の喜びはタイトルしかない。

今年こそは、タイトルを手にし何もかもを忘れて喜ぶ選手たちを取材したい。サポーターの笑顔を見せてもらいたい。取材者としてその場を目撃し、その原稿を書かせてもらいたいと、切に願っている。

武田社長がタイトルを目標にし、驚かれた2007年から今季が9年目のシーズンとなる。

2007 新体制発表会見 武田信平社長
http://www.frontale.co.jp/f_spot/f_files/2007/2007_new_org/070.html

今年は3つのタイトル、リーグ戦・カップ戦・天皇杯。この3つのタイトルのうち、とにかく1つ、少なくても1つタイトルを取るということでいきたいと思います

今季はチームの立ち上げから取材をしてきて、良い準備が出来たと思っている。攻撃的なサッカーを貫く覚悟を持って、そのためにやれることはやれたのだろうと思っている。ただ、サッカーは相手があるスポーツで、絶対はない。もしかしたら苦しい時期が訪れるかもしれない。でも、そういう荒波を乗り越えて、今年こそはタイトルを手にしてほしいと思う。タイトルを手に出来るだけの積み重ねがあるクラブだと思う。

スタジアムに恐怖やヘイトは必要ない。フロンターレが優勝するとしたら、それを証明することになるのだと思う。

非常識が日常になればそれが常識になる。

新たな常識を作ろう。そして、新たな価値観を生み出そう。

それくらいの気概を持って、これから始まるシーズンに臨みたい。

長いような短いようなシーズンオフが終わり、3月7日に新たな戦いの日々が始まる。

選手たちと、サポーターの2015年シーズンが始まる。

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※本記事は川崎フロンターレ 開幕カウントダウンカレンダー 2015の、2015/3/5の記事として執筆したものです。

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