【コラム】夢を与えられる職業(川島永嗣)
唐突に声を掛けられた。
「川島選手は練習に来てますか?」と。
その川島は10日の午後練習を終え、ちょうどファン対応を始めた直後。一人ひとりに丁寧に対応する川島を教えると「ああ、良かった」とホッとしたような表情を浮かべた。
小学校4年生だというそのサッカー少年は、大活躍する川島永嗣をテレビで見て興奮。GKというポジションに憧れを抱き、そこに自らの未来を投影させたという。具体的な大会名はわからないというが、李忠成が渾身のボレーシュートでアジアカップを日本代表にもたらした大会だというから、2011年のアジアカップだ。この大会での川島永嗣のプレーと言えば、日韓戦でのPK戦などが思い出されるが、いずれにしても優勝で幕を閉じたこの大会での川島の活躍が少年のゴールキーパーというポジションへのあこがれに火をつけたことになる。
今もGKを続けているというその子について帰宅前の川島に聞くと「ああ、あの子ですよね」と思い出しつつ、夢を与えられるプレーの大事さを次のように話してくれた。
「代表とか海外でプレーするとかを抜きにしても、そうやって人を感動させるプレーをするというのがプロだと思います。そこはやっぱり(プロサッカー選手として)いろんなものの大前提にあると思うので、そうやって日本の中でもキーパーをやりたいと思ってくれる子が増えてくれるのは嬉しいですね。自分はそういうプレーを見せられるようにまだまだ頑張ります」
所属クラブがなかったため直近の日本代表からは外れていた川島だが「また自分が試合に出て、勝ち取らなければならないことだと思います」と代表復帰に向けて闘志を見せていた。そして「日本代表というのは常にそれにふさわしい人が選ばれる場所だと思うので」と力強く述べてくれた。
なお、川島永嗣のフロンターレでの練習参加は11日で終了。就労ビザの取得を待って新天地での新たな戦いの日々に入る。
(取材・文/江藤高志)