「川崎フットボールアディクト」

【#オフログ】九州サッカー紀行。情熱を煮詰めた先にある純粋さと、それぞれのサッカーとの関わり方

テゲバジャーロの綾町の人工芝での練習を取材したその日の午後が、フロンターレの綾町合宿の初日練習だった。先日紹介した綾町教育委員会の松原航生さんたちが丹精込めて育てた天然芝はJクラブも満足するレベルに整備されており、素晴らしく美しかった。九州リーグを戦う2チームの練習環境を見せてもらったあとだっただけに、綾町の芝生は芸術品のレベルに思えた。


いつもは練習場に到着する選手バスを笑顔で出迎える松原さんが練習時間に姿を表さなかったことがあった。聞けば芝を管理する機械の納入に立ち会っていたという。「自治体レベルでこれを導入するのは初めてじゃないですかね」と話す笑顔には少しだけ誇りのようなものが見て取れた。Jクラブを迎え入れることができる芝生を育ててきた矜持のようなものが綾の人たちにはあるのかもしれない。

九州を拠点にする3クラブを取材したことで、改めてフロンターレの立ち位置がわかる気がした。フロンターレの選手の週給が、年収に匹敵する選手も居たはず。そんなとてつもない格差を想像しつつ、それがサッカーでメシを食うということなのだろうとも思う。覚悟を持ったサッカー選手の生き方がそこにあり、サッカーに対する情熱を煮詰めた先にある純粋さの一つの形なのだろうとも思う。

天皇杯は彼らが同じ土俵で戦う機会を提供している。それが開かれたサッカーというスポーツの醍醐味だ。そうやって格差が交わる時に、まれにとんでもないサクセスストーリーが生まれることがある。そんな可能性の存在にサッカーのおもしろさが、ある。

(取材・文・写真/江藤高志)

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