「川崎フットボールアディクト」

【#オフログ】追悼、大杉漣さん

21日の大杉漣さんの突然の訃報はサッカー界にも悲しみをもたらした。

各方面から悲しみの声が伝わる中、中村憲剛も故人の急逝を悼んだ。23日の練習後、大杉漣さんの訃報について聞かれ、次のように答えている。

「サッカー界にとって損失ですよね。芸能界はもちろんですが、ああいう方がサッカーを普通の席で見てくれてるその価値たるや。すごい影響はあったと思います」

普通の席でJの試合を見ている大杉漣さんの写真はよく撮られてきた。あれだけの方であればチーム関係者を通じて招待席を貰えそうなもの。だが、大杉さんはそうはしなかった。一般の観客に紛れ、一般の方々とスタンドの雰囲気を味わうように試合観戦されていた。

俳優としての大杉さんも好きだったという憲剛は「単純に大杉漣さんの芝居が好きだから。単純にショックです。1ファンとしてね。もう見れないのが切ないです」と肩を落とした。

川崎フロンターレとのつながりで言うと、コラボ企画が話題を呼んだシンゴジラに総理大臣役として出演されていた。

江藤も以前一度だけインタビューをさせてもらったことがあった。鰯クラブというクラブを運営されていて、動けなくなったという意味で「不動の10番と言われるようになった」と笑わせて貰った。その時のインタビュー記事がすでに見当たらないため、一部を引用する形で紹介したいと思う。

徳島が京都と対戦した2013年12月8日のJ1昇格プレーオフの時の話だ。この試合を観客席で観戦していた姿が発見されて話題になったが、これは大杉さんの人柄とサッカーへの思いが周囲に伝わっていたことで実現したものだった。

「去年(2013年)の12月8日の昇格プレーオフは、天海祐希さん主演のドラマの撮影を都内でやっていて、夕方5時まで予定が組まれていました。試合は3時からだというのは頭にあったのですが、プロデューサーにも天海さんにもそれは言ってなかった。でも、なんとなくですがプロデューサーがそれを察知されてたみたいで、そしたら自然に耳に届いてきたのが『大杉を国立へ』という思いをみんなが持ってくれてたということ。もう泣きそうになりました」

「ドラマのチームとしてはいい雰囲気で、とても大人の現場で、最終的に3時くらいできちんと撮り終えることができました。それで着替えて、国立に向かおうと思ったら出口のあたりに主演の天海さんやもこみちくん、田中哲司さんとかスタッフのみなさんが全員並んでて『国立にいってらっしゃい!』って」

――聞いてるだけで泣けますね。
「いやー、泣きました。途中号泣でした。それで3時20分くらいにスタジアムに入って、いつもはご迷惑を掛けないよう、サポーター席の脇に座るのですが、その時は気持ちを込めてサポーター席に座って。最初に千代反田(充)選手がヘディングで決めて、津田(知宏)選手が気迫のゴール。縦一発で、高崎(寛之)選手からのヘディングでね。それで2点決まって。後半は京都にだいぶ押されましたが勝てた。あの瞬間に立ち会えたというのは、本当に夢のような時間でした。サポータとして徳島を応援して、その徳島の昇格をこの目で見られた喜び。サッカーやスポーツが持っている一喜一憂の大きさを感じました。この12月8日はぼくにとって一生忘れられない日になりました」

サッカーへの深い愛情を示してくださった大杉漣さんに、謹んで哀悼の意を表したいと思います。

(取材・文/江藤高志)

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