「川崎フットボールアディクト」

【#オフログ】中村憲剛のW杯分析第2回目。「何が起きるか分からない」

※公開後、24時間ほど無料公開します(6月29日16時ごろまで)。

先日掲載した中村憲剛のW杯分析について、第2回目がまとまったので紹介したい。取材日は日本対セネガルの翌日。セネガルに2度先行されながらも2度追いついたグループリーグ第2戦の直後だ。

■何が起きるかわからない

本大会開幕後、憲剛は3試合で勝敗が決するグループリーグでは、1試合目を終え勝敗が出たあとの第2戦の戦い方に面白さが凝縮していると話していた。なぜならば、まだどの国も予選突破も敗退も決まっていないから。目の前の1試合の重要性は不変だが、それでも勝ち点を背景にした戦い方の変化は注目すべきポイントだという。

「当たり前ですが、グループリーグ初戦と2戦目との違いは初戦の結果が出ているということ。自分たちが勝ったか、負けたか、引き分けたか。またもうひとつのカードの結果がどうなったのか。3戦目の相手の勝ち点はどうか。初戦を勝ったチームは2連勝して大勢を決したい。引き分けたチーム、負けたチームは勝ち点3が欲しい。でも例えばですが2戦目に戦う相手が自分たちより力のあるチームなら引き分けてでも勝ち点を獲得して3戦目に繋げたい、等。
色々な状況が考えられますが、初戦を終えてから2戦目への短い準備日数でリカバリー、分析、それに基づいたトレーニングをしなければならない。そういった中での試合なので、初戦のアドバンテージもしくはその逆を鑑みての駆け引きが戦い方に反映される。これがおもしろさに繋がっています。
イラン対スペインが典型的でしたが、イランは初戦を勝利した事でかなりディフェンシブなシフトで勝ち点3を狙いつつ勝ち点1を取る戦い方、考え方で臨むことができました。そして3戦目まで繋がることを考えた上でスペインに勝ち点3を与えないことを念頭に置いた戦い方ができていました。最終的に負けてしまいましたが、自分たちのできる最大値を出して戦えていたと思います。

またブラジル対コスタリカやドイツ対スウェーデンは優勝候補と言われたブラジルとドイツが初戦で勝ち点を落とし、この試合での勝ち点3がマストな中で迎えました。両チームとも大苦戦しましたが、最終的に勝ち切っています。そこに強豪国の意地とプライドと質を感じました。
またコスタリカとスウェーデンが見せた勝ち点を取るために死力を尽くし戦う姿に心を打たれましたし、魂を揺さぶられた好ゲームでした。
ブラジルは初戦のスイス戦を引き分け、ドイツはメキシコに敗れましたが、さすがに2戦目は調子を上げて勝てるだろうとほとんどの人が見ていたかもしれません。しかし、ふたを開けたら両チームとも大苦戦を強いられた。これもやはり初戦を落としたことによるプレッシャーの凄まじさが遠因だったと思います。プレッシャーがかかることでプレーが慎重になりやすく、慎重になるということはプレーや判断の遅さにつながるため、守りを固めてくる相手だと崩しきれないシーンが多かったように思います。前回も話しましたが各国の力の差が縮まって来たことと初戦の結果によるプレッシャーで優勝候補と言えども容易な試合はほとんどないということが改めて証明されたものだと思います。ただそこに屈せず、自分たちの力を信じ、やり切って最終的に勝ち点3をもぎ取った強豪国の凄みも改めて感じました。
もちろんイングランドやベルギーみたいに2連勝で決めるところもある。そこは組み合わせもありますよね」

何が起きるか分からないチームの筆頭は日本代表かもしれない。

「戦前から勝って当然と思われるチームはプレッシャーが半端ではない。きっと勝つだろうと思われている試合ほど始まったら何があるかわからないのがサッカーであり、ましてやここはワールドカップ。ワールドカップ独特の雰囲気や緊張感が、予想しやすい試合を難しくします。それは日本対コロンビアではっきりしたと思います。
ワールドカップの1試合に向け、4年間という時間はもちろん、それ以上の長い歴史を紡いで実績を作り臨む国もある。そうしたもの全てがワンプレーで吹っ飛んで勝敗が決まってしまうことがこの大会では起こる。その最たるものが日本の初戦だったと思います。その話をしだすとまた長くなるのでここでは細かい話はしませんが…(苦笑)。なのでこの初戦で勝ち点3を取れたことが次のセネガル戦に大きく繋がったのではないかと思います」

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