「川崎フットボールアディクト」

三笘薫、尽きることのない向上心【コラム】

先日、関東大学リーグの早稲田大学対筑波大学の一戦を取材した。お目当ては来季加入が決まっている三笘薫。筑波が中盤省略のスタイルを取っていたこともあり、機動的に左サイドハーフの三笘を使うわけではなかったが、徐々にその場面は出てきた。

9分の場面を皮切りに、10分、11分と連続してボールを持つと、早稲田の右サイドバック牧野潤は対応が徐々に後手に回り始める。

29分には三笘の仕掛けからマイナスクロス。中央の和田育がフィニッシュで攻撃を終わらせている。

早稲田の外池大亮監督は筑波の攻撃の核が三笘であることは把握しており、牧野に加え一列前の阿部隼人にも三笘の対応を指示。実際に37分のプレーから阿部を加えた2対1で守るようになる。

早稲田に守備変更を強いた三笘の個人能力の高さはさすがだが、試合後に三笘自身から出てきたのは反省の言葉だけだった。

「いやー、全然です。捕まってたので」

「とは言え、相手は対応を2枚に増やしてきた」と質問をかぶせると、三笘は「それで相手の重心が下がってしかけにくくなって、後半引っかかることが多くなって。なかなか左から行けなくなりました」と反省していた。

試合は筑波が1-2で早稲田に敗れたということも謙虚な姿勢の一因なのかもしれないが、それにしても筑波の1点は三笘が奪ったもの。76分に右からのクロスをファーサイドで受け、落ち着いて蹴り込んだファインゴールだった。その点について問いかけても「得点以外に今日は何もしてないイメージですし、なんかえぐりきってもないので。決定的なプレーをしないと意味がないですしこのチーム状態で自分が助けないといけない中でもっとやらないといけない」とただただ反省していた。

あまりに自己肯定感が低いので心配してしまうが、やはり怪我がちだったトゥーロンでの不甲斐なさが頭にあるのかもしれない。

「まだまだ自分の現在位置として本当に厳しいレベルなので。成長のスピードを上げないとというのは常に持っています」

来年に迫る東京五輪を視野に入れつつ、選出に近づくためにはもっと結果を出していかねばならない。そのためには「体力はまだですし守備の部分とかもそう。スピードももっと上げないといけない。クイックネスもそうですし、色々やることは多いです」と縷々課題をあげるところに彼の向上心が見て取れた。

ちなみに強化部は、その三笘に加え、旗手怜央、イサカゼインの3選手について「即戦力ですよ」と太鼓判を押しつつ「(三笘)薫の場合は常に上を目指しているからね、満足してないからね」と話していた。

強化部が即戦力と評価する実力を持ちつつ、努力を辞めない三笘はここから先、どこまで成長するのだろうか。

(取材・文・写真/江藤高志)

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