「川崎フットボールアディクト」

鬼木達監督「医療従事者の方々もそうですし、たとえばスーパーであったり、配達の方々もそうですが、そういう方々に対してやっぱり差別とかそういうことが起きないことだけを願っています」【麻生レポート】

鬼木達監督が5月1日に、Web会議システムを使いメディア対応を行った。チームが取材陣に対応するのは、チーム練習が対メディアでも非公開になった3月中旬以来のこと。

鬼木監督に対しては、コロナ禍について、現在の自身の心境や心構え。チームの状態などについての質問が出た。

■医療従事者やインフラなどの従事者への感謝
鬼木達監督への取材の中、一番印象的だったのが医療従事者や、社会機能を維持するために働いているみなさんに対する感謝の言葉だった。

まずは医療従事者のみなさんに対して。

「ここで言葉にできないくらいの思いがありますし、あとは(医療の最前線では)自分が想像している以上のことが起きていると思うので。本当に、頑張ってくださってありがとう、という言葉でいいのかはわからないですが、自分が感染するリスクがある中ですごくやられていると思うので。疲弊していると思うので。本当に自分たちは、何ができるのかなという思いで常にいるというのが正直なところです」

さらに医療従事者を含めた、社会機能を維持する業種のみなさんには次のような言葉を残した。

「なんて言葉をかけていいのかわからないですが、本当に『ありがとうございます』ということと、あとはそういう方々。医療従事者の方々もそうですし、たとえばスーパーであったり、配達の方々もそうですが、そういう方々に対してやっぱり差別とかそういうことが起きないことだけを願っています」

■フロンターレの現状
コロナと戦う最前線のみなさんへの思いとともに、フロンターレの現状はどうなっているのだろうか。そもそもチーム練習は3月26日から中止されており、その時々の社会情勢を見つつ中止期間の延期が繰り返されている。だからこそ選手のコンディションをどう維持するのかは重要なポイントだと考えるが、現状チームから選手たちに何かしらのメニューを与えているということはないとのこと。ただしZoomを使った全体ミーティングが1度。さらにメールという形で、全員に発信したという。

練習について選手たちに伝えてない理由については、まずは医療の現場にいかに迷惑をかけないことを優先させているからだという。

「他のチームは色々あるみたいですが、自分たちは全くそうしたことは言ってなくて、メッセージとしても今こういう時に何をすべきかということで言うと、とにかく医療従事者の方のみなさんのために何ができるのか。
(それは)まずは自分たちが罹らないということと、(そして人に)感染させないということに重きを置いてくれと。あとは選手と家族の健康第一だからということで、そういう意味ではメニューは何も伝えていないです」

またJリーグについては、公式戦延期の影響で、ルールの変更がすでにいくつか発表になっている。たとえばJリーグからは今季の降格がないこと。JFAからは天皇杯のJ1からの参加クラブが2チームに限られる旨の発表などがなされている。またFIFAでは過密日程を前提に5人の交代枠が議論されている。そうしたサッカーの環境の変化がある中、公式戦再開に向けて考えることも多いのかと思われたが、鬼木監督自身は、サッカーとは距離を取った生活を送っていると話す。

「それこそぼくも何もしてないというと変ですが、いつ始まるのかがわからないので。そういう意味で言うと、できるだけサッカーの事というよりも違うことに頭を置きながら、パンクしないように過ごしてました」

家族と過ごす時間が増えており、そこに重点を置いているという。

「(三密を避けて)少し散歩したりとか。あとは家にいる時間も長いので、家族で映画を見たりとか。最近で言うと、みんなで体幹をやってみようと言ってやったり。あとは自分自身でいうと、今までほとんど料理をしたことはなかったのですが、朝昼を作ってみたり。そういうことはやってますね」とのこと。ちなみにこれまで作ったのは「最初が焼きそばで、次がチャーハン。それで昨日がパスタ」だったという。

「やたら今、そういうムードなので料理番組も多いんですよ。簡単に手軽に作れるみたいな。そういうのを見ていたので作ってみました」

今は戦闘スイッチは完全にオフになっているようだが、今後公式戦再開のロードマップが示されたときに、気持ちが切り替わればいいだけのこと。そういう意味ではいい時間になっているのかもしれない。なお、公式戦再開の暁には「良いサッカーを見せたい」のだと語気を強める。

鬼木監督のサッカーとの向き合い方の根底にあるのは、お客さんを喜ばせたいという思い。だから、議論されている無観客での公式戦再開が現実のものになったとしても「サッカーの熱量はぼくの中では絶対に落とさせない、と思っている」のだと話していた。

サッカーが日常から切り離されてから随分と時間が経過した。そんな社会情勢の中、鬼木監督の考えの中心にあるのは、社会生活を支えてくれているみなさんにいかにして迷惑をかけないか、ということ。それがよくわかった取材だった。

(取材・構成・写真/江藤高志)

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