「川崎フットボールアディクト」

長野の健闘と王者の意地。120分の死闘はPK戦で決着/天皇杯2回戦 vs長野【レポート】

天皇杯2回戦
6月9日(水)(18:00KICKOFF/等々力/4,508人)
川崎 1 – 1 長野
PK戦 4 – 3

■橘田健人の一発

敗戦の瀬戸際にまで追い込まれていた。

サッカーの怖さと、難しさとを痛感していた。

個人的な性格なのか、わりと早い段階で僕の心情は受容に傾いていた。なるべく早い時期に敗戦を受け入れることで精神的な痛みを和らげようとしていたのだろう。無自覚な防衛反応ではあったが、それにしても心は痛かった。

フロンターレらしさが全く出せなかった前半に失点。内容の悪さを修正するのに前半の45分間を浪費したツケは大きかった。

今季無敗のフロンターレの取材の中で、敗戦を覚悟した試合はこれまで1試合のみだった。湘南との16節の試合で、後半の途中から同点ゴールが決まった82分まで、生きた心地がしなかった。ただこの経験とて相手は同じJ1のチームであり、負けていても不思議ではなかった。

J3の長野を相手にしたこの試合は勝って当然で、だからこそ負けるという事実から逃避したいという気持ちがより強く出たのだろう。そんな後半アディショナルタイム。唐突に同点ゴールが決まった。シュートを放ったのは、橘田健人だった。

長野がジャイアントキリングの達成を目前にしていた90+1分。橘田からの縦パスで攻撃がスタート。これを受けたレアンドロ・ダミアンのゴール前への配給は相手DFがクリア。このボールの処理をもたつくスキに、そのこぼれ球を橘田が強振。これがゴールに突き刺さった。

ゴールまでの一連の流れについて橘田は、「ジェジエウからボールを受けたりしてそこでフリーで持てるところがあった」ことで、精度を伴って入れられたダミアンへの縦パスを説明。自らがゴール前に走り込んだ理由について「縦パスを入れて自分も中に入っていこうという意識でやってて」と述べる。そしてシュートシーンについて「ちょうど中に入った時にこぼれてきたので。そこを拾って思い切り足を振り抜けて。入ったので良かったです」と話した。

相手守備陣の混乱に乗じた運の要素の強い得点ではあったが、運を掴めたのは自陣から走り込んだ橘田の判断があったから。ボールを前線に送り込んで、それで満足していたらあの得点は生まれていなかった。後半から入ったという体力的な余裕も含め、起死回生の同点弾につながる素晴らしい判断だった。

■ゲームプランがハマる長野

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