「川崎フットボールアディクト」

背中で引っ張る男の仕事と、劣勢を跳ね返したチームの反発力/J1 第28節 vs神戸【レポート】

J1 第28節
9月29日(水)(19:03KICKOFF/等々力/4,932人)
川崎 3 – 1 神戸

■才能の塊の努力

試合終了間際のこと。

フロンターレのゴール前で神戸の選手がパスミス。これを拾った宮城天がサイドを変えつつ前方にクリア気味に蹴り出す。意図があるようには見えないキックで、そのまま見逃したとして誰からも何も言われないボールだったが、家長昭博はこれに鋭く反応した。より良いポジションに居たはずの初瀬亮とのスプリント競争に勝ち、ボールをコントロールした。時間は90+5分のこと。ボールを奪い返したフロンターレは一息つくことができ、高い位置を取られた神戸の選手たちは帰陣を強いられた。誰もが疲弊していた時間帯だったからこその価値あるワンプレーだった。

このプレーが特徴的で、家長昭博という選手は本当に不思議な力の出し方をする人だ。チームが元気な時はそれなりに。ただし誰もが疲弊した試合終盤に突然爆発的に力を発揮して効果的なプレーをする。自らの得点で3−1とした試合終了間際のこのプレーはチームを助けた。

その家長について鬼木達監督に質問してみた。

「ゲームの中で流れを読めますし、相手の嫌なことをできる時間を作るところもそうだし、今日で言ったら、やっぱりゴールに向かう姿勢のところ。そこが素晴らしかったと思います」

さらに鬼木監督は53分のPKの失敗に言及しつつ、3点目を取るための隠れた努力を明らかにした。

「PKは外しましたけども、でもその後ね、やっぱり取るのが家長だなと。さすがだなって思いありますし。まあ言ってしまえば、昨日一人ずっと残って、そういう角度のシュートをやってたので。本当に大したもんだなと思いますね」

この自主練習についての家長の回答は次の通り。

「優勝するにあたって大事なのは、やっぱり自分が引っ張っていかないといけないと思うし、それは大前提だ思いますが、ゴールだったりアシストだったり、というのはもっと必要だと思いますし、優勝というよりも自分が。そういう意味では練習はしてましたし、それは本当に練習した角度で、しっかりシュート打てて。練習は嘘つかないなと思いながら、試合後に思っていました」

家長という選手については才能の塊であるのは間違いないのだが、その才能をコンスタントに出し続けるための努力を常に続けてきた選手でもある。全体練習終了後。必要とあらば止める、蹴るの基礎練習に打ち込み、疲労がたまる連戦の最中には、クールダウンを目的とした30分間程度のジョギングを欠かさない。才能の塊が努力をまとっている、との表現も決して大げさではない。

「練習は嘘つかない」との言葉は言い得て妙だった。

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