「川崎フットボールアディクト」

ミスで生じた僅かなズレと、チャンスを決めきる決定機の差/天皇杯3回戦 vs東京V【レポート】

天皇杯3回戦
6月22日(水)(19:03KICKOFF/等々力/7,534人)
川崎 0 – 1 東京V

■精度上がらず

監督会見の冒頭、鬼木達監督は敗因として「自信」という単語を口にして「それに伴う技術」の必要性に言及した。裏を返せば、それだけミスの多い試合だということ。試合開始直後、東京Vの前からの圧力を受けたフロンターレはミスを連発。試合をうまく進めることができなかった。

たとえば松井蓮之は自らを含めたチーム全体の入りの印象として「最初は相手の勢いに負けてしまって」ピンチを招く場面が複数回あったのだと反省。そして、チャンスで決めきれなかった攻撃面を含め、ミスの多さに敗因を求めていた。松井自身は前半30分頃までには安定感を取り戻すが、試合の入りで簡単なミスが続いてしまい、波に乗れていない様子が伺えた。

佐藤凌我に先制弾を許した39分までの間にフロンターレは、松井とマルシーニョの決定機を筆頭に、複数回のチャンスを作り出している。先制のチャンスが無かった訳ではないという意味で、為す術がなかったわけではなかったが、チャンスを決められなかったことが最後まで尾を引く形となった。

「攻撃のところもキーパーと1対1になるチャンス。ああいうのを決めきれないと、ああいう苦しい展開になるのかなと思います」と話す車屋紳太郎は、前半の試合運び自体は評価する立場を取る。

「前半は正直、守備のところはすごく良かったと思うし、切り替えのところもすごいみんな速くて、良かった」

だからこそ1失点目がもったいないと話す。

「あのカウンターから1失点が、本当にもったいなかったなと思う」

後半との比較にはなるが、前半はアンカーから前にボールが入った際に、スピードアップしきれていなかった。ボールを大事にするところと大胆さのせめぎあいではあったのだろうが、ボールを大事にした結果、攻撃が遅くなり、東京Vに守る時間を与えてしまった。ただし、前半については評価できる部分もあったと車屋。

「ああやって短くつなぎながら侵入していくというのは、練習からもやっているので。あれも一つのやり方だと思う」

その攻撃に課題を提示するのだとすると、組み立てた攻撃をできるだけシュートで終わらせたかったということ。それができないと、カウンターのリスクを背負うことになるからだ。

「最後のところで結局それが(シュートで)完結しないと一気にカウンターを食らうシーンもあったので。そこの精度を上げないといけない」

ちなみに東京Vのカウンターに対しては「早めに潰すことだったり。今日は結構、そこはできていたとは思います」として、だからこそ攻撃の質が問われたと肩を落とした。

■後半ペースアップも決めきれず

後半の開始時にフロンターレは3枚を交代。脇坂泰斗、橘田健人をインサイドハーフに。また遠野大弥を右のウィングに入れたこの交代采配でフロンターレはペースアップ。より縦に速い攻撃が増えたが、それはリスクを取ることでもたらされた成果だとも言えた。

交代出場時に鬼木監督から「セカンドボールのところだったりとか、どんどん前に顔を出していくこと」についての指示を受けていたと話す橘田は攻撃のテンポアップに大きな役割を果たしており、特にその中でも54分の決定機は惜しかった。脇坂からのラストパスを引き出した橘田は、相手DFをワンタッチで外し、GKとの1対1に持ち込む。

「ゴールを狙ってたので。決めきれればよかったんですが、あそこで決められたら、試合の展開も変わってたので。そこは悔しかったです」

ゴールを陥れるまでには至らなかったが、この場面に象徴されるように後半はより高い位置でボールを保持。鬼木監督の交代采配と合わせ東京Vを揺さぶり続けた。

鬼木監督は60分にシミッチに代えて家長昭博を投入。さらに71分にはマルシーニョから小林悠を投入し、最終的に4-4-2のシステムで東京Vゴールに迫る。しかし相手ゴール前での精度が高まらず。試合最終盤、ベンチからの指示を受け、車屋と佐々木旭のポジションを入れ替え。左利きの車屋のクロスに期待をかけるが、最後までゴールを破る事はできなかった。試合はそのまま0−1で終了し、今季の天皇杯はこれで敗退となった。

■試合の背景

フロンターレは、札幌戦からの連続先発選手はチョン・ソンリョンと車屋紳太郎2選手のみで、そういう部分でも試合の入りの時間帯で東京Vの激しいプレスに後手に回る時間が長くなった印象があった。

ただし選手の入れ替えという意味では東京Vも同じで、リーグ戦からは6人を入れ替えての試合となっていた。特にプロデビュー戦だった18歳の西谷亮を筆頭に若手選手を多く起用。山口とのリーグ戦では先発11選手の平均年齢が27.45歳だったのに対し、このフロンターレ戦では23.7歳と大幅に若返っての試合となっていた。

監督交代直後の若手主体の編成。そして交代枠が5枚あるということで、東京Vはペース配分を無視したプレスをかけられる状態でもあった。失うものがないという点でも、フロンターレにとっては難しい一戦だったと言える。

なお、決勝ゴールの佐藤凌我は明治大学在学中の2019年に瀬古樹と共に天皇杯2回戦でフロンターレと対戦。フロンターレがオウンゴールの1点で辛勝した試合のリベンジを自らの得点で果たすこととなった。

東京Vは2008年の味スタでの最終節にフロンターレと対戦したのがJ1での現時点での最後の試合となっているが、城福浩監督に交代した今季、どこまで成績を伸ばせるだろうか。天皇杯の行方とともに注目したいと思う。

(取材・文/江藤高志)

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