「川崎フットボールアディクト」

トップチーム譲りの即時奪回で、FC東京U18を圧倒。3−1で勝利/プレミア2022EAST 第10節 vsFC東京U18【#オフログ】

■無敗継続

FC東京U18を相手に戦ったプレミア2022EAST 第10節は、PKで先制された川崎U18が前半だけで3点を奪い逆転勝利。昇格初年度のプレミアリーグ10試合を終えて無敗を継続した。ライバルを叩くのと同時に、今節青森山田に敗れた横浜FMユースとの勝ち点差を7に広げている。

そんなFC東京U18戦は、立ち上がりこそFC東京の圧力におしこまれる場面もあり、前半16分に#9熊田直紀にPKで先制されてしまう。

コースを読んでいたGK#21濱﨑知康は、「そっちに蹴るなっていうのは思っていたんですけど、結構速くて。止めればゼロで終われて。6失点というところで終わってたので。反省が必要かなと思います」と悔しがるが、その後前半だけで3得点して逆転。

後半のPKの決定機は#10大関友翔がクロスバーに当てて追加点とはならなかったが、3−1で勝利した。

それにしても攻撃的な守備が際立つ試合展開だった。

FC東京U18陣内に攻め込む川崎U18は、ボールロスト後に素早く切り替えて前からのプレスを敢行。トップ顔負けの即時奪回で高い位置から攻撃を再開。20分の#25志村海里の得点も、34分に#20岡崎寅太郎が決めたPKの場面も、高い位置でボールを奪い返したことで生まれた得点だった。43分の岡崎の3点目も含め、川崎U18の守備が効果的な試合だった。
■トップチームの強さを学ぶ

そんな試合を振り返る長橋康弘監督は、強さを説明する文脈で、ボール握ることがフロンターレのサッカーということではないのだと話す。

「ボールを持っているところが、フロンターレのサッカーっていうところの印象があって、若干そこを勘違いしてる選手も中にはいる」

だから、「トップの試合をもっとしっかり見ようと」と選手たちに促した長橋監督は、選手たちがその意味を良く理解してくれているのだと笑顔を見せる。

「『(トップの)チャンスってどういう風に作られているの?』っていうところもちゃんと彼らは分析して話をしながら、やっぱり守備もフロンターレだなっていうところ。そこもやっぱりトレーニングで、本人たちが意識してやってくれているので。その辺がグラウンドに出てるのかなっていうふうに思います」

この件について濱﨑はレアンドロ・ダミアンの名前を例示して、参考にしていると話す。

「トップチームもレアンドロ・ダミアン選手とかもスイッチを掛けて、前からプレスに行ったりしているんで、それは参考にしながら練習からやっています」

リーグ首位の10試合7失点の守備を実現してきた濱﨑は、GKとしての自らの手柄はさておき、フィールドの選手たちの働きに感謝していた。


「自分が止めている場合もあるんですけど、ほとんどはディフェンスラインで完結していて。ディフェンスラインとの連携もありますし、ディフェンスの松長根(悠仁)選手とか#4高井(幸大)選手とか、あとは#13信澤(孝亮)選手とかが最後、体を張ってスライディングとかで、シュートブロックとかしてくれるので。最後は自分もシュートを止めるぞっていう気合とかで止めています」

■即時奪回

いずれにしても、このFC東京U18戦では前からのプレスが効きまくっており、トップチームばりのハーフコートゲームができていた。この試合2ゴールの#20岡崎寅太郎は、後ろの選手に奪い切る強さがあるからこそ前から行けるのだと話す。

「自分たちFWのプレスもそうなんですけど、後ろのボランチとかサイドバックとかセンターバックがしっかり奪いきってくれるっていう安心感があるので。やっぱ自信持って掛けることもできますし、ナガネ(#3松長根悠仁)さんもそうですし、ミナト(#29元木湊大)とか、そういう自分のサイドの選手が、もう自分が行ったらそれに繋がって、グイグイ前に来てくれるので。あとは後ろに出されても任せられますし、本当に頼りになります」

岡崎が名前を上げた左サイドバックの元木は、一人ひとりが自分の役割を果たせているのが強さの秘訣だと説明。

「自分の役目を全うすれば、前は前でしっかり点取ってきてくれたり。守備陣は点を取ることもそうですけど、自分のところも結構強く行ったり。前から行ったとしても後ろにナガネ(松長根悠仁)さんが居るので。後ろはナガネさんに全部任せて。その代わり、前では必ずボール取ってきますよ。その変わり、後ろはナガネさんやってくださいよって(笑)」

松長根悠仁は、その守備について「トップチームのマネです」と口にしつつ、即時奪回について説明してくれた。

「即時奪回したあとのショートカウンターが、一番ゴールに近いので。そういう意識はチーム内に共有されてるので。前の選手が頑張ってくれているので、後が付けはボールが取れるなって感触です」

ちなみに即時奪回について松長根は、8−0で勝利した横浜FCユース戦を引き合いに出して「横浜FC戦も結構そういうシーンがあったので。チーム全体で連動してボールを取ることの認識はみんな揃ってきているのかなって思います」と手応えを語ってくれた。

■目を合わせる

前からのプレスとそれによる即時奪回は、局地的に枚数をかける戦術のため、「行く、行かない」の目を合わせる必要がある。そのあたりの効果とリスクについて長橋監督は「取られた瞬間に行けるのかどうか。ただ、行って剥がされて大ピンチを食らうのであれば、どこで構えるのっていうところのコントロール」の重要性を指摘。そしてそれは「全部選手に任せている」のだという。そしてその判断基準として「(前後の認識が)バラバラになって、前は行くけど、後ろ構えているとか。そんなようなところがないように、ちゃんと共有しよう」ということを指示してきているという。

目を合わせる、ということについては元木がこんな説明をしてくれた。

「全員で目を合わせて。誰かが行かないとか、中盤が流れてこないとか、後ろが流れてこないとかだと結構、相手のカウンターを食らっちゃうんで。もう行くなら全員で行く。守備は最後、ハメたところ、思いっきり強く、行けば取れないことはないんで。それ取れなくても、前向きで時間稼ぎもできるので」

この元木の言葉を聞きつつ思い浮かぶ場面があった。前半、頑なにGKからボールをつなごうとするFC東京U18に対し、#9五木田季晋、岡崎が前から圧力を掛けてパスコースを限定し有利に試合を運んでいた中、FC東京U18が最終ラインのパスワークが逃げ切りに成功。奪いきれなかった場面があった。

さらに追いかけるのかと見ていたら、川崎U18の選手から「一回戻れ!」との声が聞こえ五木田、岡崎がプレスをやめ、ハーフライン手前あたりでセットし直すという場面があった。そのコーチングの声の主だという元木が説明してくれた。

「トップが疲れてたってのもあり中盤も疲れてて、トップと中盤で距離が空いてて。これで無理にトラ(岡崎寅太郎)が、トップが行ってもはがされたら、トップも辛いし、中盤も連携が取れてないので、休憩というか一度整える意味と、無理に守備行くという感じではなかったので。そういうの(前からの守備のオンオフ)は結構みんなのキツさで変えたりします」

と、ここまで聞いて、賢く守っているのかと思ったが、元木は自らのコーチングを脇において、守備の根底にあるものとして「気持ち」を上げていて、川崎の子らしさが伝わってきた。

「左サイドバック(元木自身)と左センターバック(松長根)はもう、気持ちで取るしかないです」と話す元木は「負けない理由はもう、気持ちだけよね。もう絶対奪うという気持ちだからね。試合で一番準備するのは気持ちですからね」と述べ、松長根も「気持ちだね、守備は。俺らは、左は気持ちしかないです」と笑顔で同調していた。

コーチングできる左サイドバックの元木と、対人やカバー、フィードなどで違いを見せる松長根の連携は鉄壁。そんな彼らの良好な関係性が伺えたのが、PKを与えた松長根を「今日はちょっと、足でちゃったね(笑)。俺の頭やられて、そこからの1対1だったけど、あれはよくなかったね」と軽くいじる元木と、それを笑って受け流す松長根の絶妙な受け答えだった。ちなみに松長根はPKになった場面について「切り返しくるかと思って足を出したんですけどね」と説明してくれた。

ちなみに守備面はもちろん、攻撃面でも結果が出ており各方面で絶賛されつつある松長根ではあるが「いやーまあ、いいんですよ、守備は。おとなしくゼロで終われれば。全然目立たなくていいので。目立つのは前の選手でいいです」ととても謙虚な一言を残していた。

さて、この日の3得点を加算した10試合での29得点はリーグ2位の数字。7失点の守備と共に攻守のバランスが取れている川崎U18はこのままリーグを独走していくのだろうか?

そんなU18の次なるリーグ戦は、7月3日に富士通スタジアム川崎にて有観客にて行われる。リーグ戦折返しの11節の対戦相手は桐生第一で、キックオフは17時だ。

■フォトレポート

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