中野吉之伴フッスバルラボ

指導者としてのあり方を学んだSCフライブルクでの研修時代。好選手が育つ彼らの育成哲学とは?

▼渡独した当初から監督としてチームに関わる環境を大切にしてきた

これが、ずっと私の変わらない意志だ。トレーニングを自らで考え、指導し、試合に向けての準備をする。選手起用からチームの行動に至るまでの決定責任を自分が担い、真正面から子どもや両親と向き合う。はじめた当初はできないことが多かった。子どもたちの不満を受け止められないことはしょっちゅうだった。でも、できないから「まだやれない」のではない。やれないからこそ、「いまやらなければならない」のだ。

若者から相談を受けることがある。
「指導者になりたいです。どんなことを勉強したり、準備したりしたらいいでしょうか」

私の答えはいつでも同じだ。
「指導現場に立ちなさい。すべてはそこからだ」

まだできない自分が現場で四苦八苦しながら試行錯誤を繰り返し、「どうすれば子どもたちとの距離を最適なものにできるのか」、「どうすればもっと子供たちが楽しく、真剣に、サッカーに取り組むことができるんだろうか」と悩むのが大切なのだと思う。先に理論を学んでから、だと、練習がうまくいかないときに子どもの責任にしてしまうことがある。理論どおりにいかないことに、イライラしてしまう。「なんでできないんだ」、と。

でも、指導現場で大切なことは、「目の前にいる子どもたちを見る」ことだ。できない子どもたちが悪いのではなく、「子どもたちができない練習メニューをやろう」とした指導者に問題がある。目の前にいる子を成長させたいと、がむしゃらに向き合う時間がとても大事なことなのだ。

さて、そんな私だから「誰かのもとに弟子入りをし、アシスタントコーチとしてそばで勉強する」という機会はほとんどない。とはいえ、誰からの影響も受けていないわけではない。唯一すぐ近くで、ある程度の時間行動を共にさせてもらったのが、元SCフライブルクU15監督パトリック・ツィンマラーだ。多分、現場での指導者としての立ち振る舞い方は一番影響を受けた。

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