中野吉之伴フッスバルラボ

お父さんコーチ向け指導者講習会に参加してみた。個人の成長差を考慮した指導が必要不可欠だ。

 

▼ お父さんコーチに何をどう伝えるか

グラスルーツの育成現場を変えよう。02年ごろから育成改革をスタートさせたドイツでは、それまで当たり前に行われていた「一列に並んでのシュート練習」、「向き合った対面パス」だけを永遠続けたり、単純に「子どもを2チームに分けてボール1個でゲームをする」だけで練習させた気にならないようにと教会を中心に様々な動きを見せた。

できるだけみんなが多くのボールコンタクトをできるように練習のオーガナイズを考えよう

4対4や5対5といった少人数制サッカーのほうがはいろんな意味で有効だ

まだサッカーを始めたばかりの小さい子に対し、戦術ボードを取り出してああしろ、こうしろいわず、「彼らが笑顔で自由にサッカーができる環境」を作るところから始めようと。

あれから15年以上もの時間が流れた。ドイツは世界有数の「育成大国」と評されるようになり、優れた指導者がたくさん生まれている。指導者講習会の難易度も、取り組むテーマの複雑さも格段に上がったと、僕自身も実感している。

でも、指導者になったばかりの人のレベルはどうなのだろうか?
初心者指導者向けの取り組みに抜本的な変化があるのだろうか?
底辺層の指導者にもより高いレベルを求めているのだろうか?

そこでその疑問を肌で感じるため、「まだライセンスを持っていない」初心者指導者向けの短期講習会に参加した。対象年齢がいま自分が担当しているCユース(U15)とDユース(U13)だったことも、個人的に興味を持ったところだ。実際に、どんな話がされているのか、詳細にレポートしてみたいと思う。

インストラクターはマティアス・カンマークネヒト。現役時代は、SCフライブルクの選手として2部リーグでプレーしていたそうだ。現役引退後、地元のアマチュアクラブで成人チームの監督を務め、幼稚園からU19まで様々な育成年代で指導。また20年間こうした初心者向けの指導者講習会のインストラクターを行い、最近までは「シュツットプンクト」、日本でいう「トレセン」に近い地域選抜のコーチもしていたという。

まず最初にカンマークネヒトが参加者に語りかえたのが次の言葉だ。

「マティアスと呼んでください。今回、みなさんは金曜日から土曜日にかけて、こうして時間をとって参加してくれている。自分の時間を工面して、ここに来られた。

『指導者としての研修を受けたい』
『自分がやっていることがどうなのか』
『もっといいトレーニングができるのかを確認したい』

そういう思いで足を運んでくれたのだと思う。今日の講習会でいろんな話を聞いてみて、いろいろと心に浮かぶことがきっとある。

『うーん、普段やっていることはあまり良くなかったんだな』
『時間が長すぎたかな』『繰り返しが少なすぎたんだな』
『子どもたちにとって練習が複雑すぎたんだ』

もし、そんな気付きや反省をすることがあったとしても、それは悪いことではない。そのために、ここに来られたのだ。刺激を得て、将来的にプラスへともたらすために。すばらしいことです」

参加者は真剣に耳を傾けている。パッと見ても、年齢は幅広い。20代前半の若い指導者から50代と思われる指導者までいる。みんなフライブルク周辺のクラブから来ていた。育成に力を入れているそこそこ名の知れたクラブ、小さな町クラブなど様々だった。

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