中野吉之伴フッスバルラボ

ドイツの育成コーチが指摘した問題点。「それだと多くの選手が辞めることになってしまうんじゃないか?」

▼「サッカーと生きる」をテーマにインタビューをしよう。

そう考えて、真っ先に浮かんだ人物がアンドレアス・デュルだった。

通称、アンディだ。現在、51歳。息子のチームで、ずっと指導をしている。昨シーズンはアシスタントコーチとして、私を支えてくれた。とても親切で、仕事はすごく丁寧。手を抜くことを一切しない。車のない私をいつも迎えに来てくれるし、私が「チームのことに集中できるように」と、ユニフォームの洗濯、飲み物の準備といった雑用はすべて進んで引き受けてくれた。

撮影:中村僚

担当するU15の練習を終え、着替えているとアンディが入ってきた。

「久しぶり、キチ元気か?」

そう言いながら、優しい笑顔で手を指し出してきた。がっちり握り返しながら「元気だよ。チームは勝ててないけどね」と笑い返す。

アンディ「この前は1対2だったんだろ。惜しかったなぁ」
キチ「悪くない試合展開なのに嫌な形で失点して、自分たちでリズムを失う試合が続いているんだよね。ポテンシャルというか、選手の質はいいんだ。でも、まだU13から上がってきた子どもたちも多いし、去年からU15にいる子もおとなしいからね」

アンディ「U13の子らはフルピッチのサッカーに慣れるまでは時間がかかるよ。大丈夫。そのうちうまくいくよ」

気心知れた仲間との会話は心地いい。私たちは彼の運転する車で近くの店へ向かった。住宅内装会社のマネージメント担当として毎日忙しく働きながら、今シーズンはSGアウゲン・バイラータールU17セカンドチームの監督を務め、週に2回の練習と週末の試合に出かける。ちなみに、SGとは複数のクラブが活動提携したチームを指す。

SGアウゲン・バイラータールは「FCアウゲン」と「SVバイラータール」という二つのクラブの育成部が活動提携している。アンディはSVバイラータールの育成副部長でもあり、ニーダーバイラーという町の寄合代表の一人でもある。それだけのことを兼務しながら、家族の時間も大事にしている。そのバイタリティとホスピタリティの高さにはいつも驚かされる。

1軒目は駐車場が満車で入れず、2軒目でようやく店を見つけた。飲み物を注文する。テーブルに運ばれると喉を潤し、インタビューを始めた。

アンディ「WEBマガジンをはじめたんだって?」
キチ「そうなんだ。バイエルンやドルトムントといったトップクラブやブンデスリーガでプレーする日本人選手の話題ではなく、普遍的なドイツサッカーの原風景をテーマに記事を書きたかったんだ。でも、そうなるとなかなか発表できる媒体が見つからないのが現実なんだよ。マイナーかもしれないけど、サッカーと一緒に育ってきたドイツの人たちの話は、きっと日本の人たちにとって興味深いし、意味があるものがあると思うんだ」

アンディ「なるほど」
キチ「日本サッカーは成長しているし、いい選手がたくさん出てきている。でも、まだ改善しなければならないところが多いんだ。例えば、サッカーを大人になっても続ける人が少ない。一つのデータを挙げると、ドイツサッカー連盟(以下、「DFB」)約700万人の会員のうち、400万人以上が大人の選手たちだ。しかし、日本サッカー協会(以下、「JFA」)95万人が会員でうち、15万人しかいない」

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