中野吉之伴フッスバルラボ

開幕に向け、ドイツの監督はプレシーズンにどんな指導を行うのか。

ドイツで15年以上サッカー指導者として、またジャーナリストとして活動する中野吉之伴。彼が指導しているのは、フライブルクから電車で20分ほど離れたアウゲンとバイラータールという町の混合チーム「SGアウゲン・バイラータール」だ。2017-18シーズンは、そこでU-15監督を務めている。この「指導者・中野吉之伴の挑戦」は自身を通じて、子どもたちの成長をリアルに描くドキュメンタリー企画だ。日本のサッカー関係者に、ドイツで繰り広げられている「指導者と選手の格闘」をぜひ届けたい。

指導者・文 中野吉之伴(【twitter】@kichinosuken

▼ 指導者・中野吉之伴の挑戦 第一回

今季はU15の監督を務めることになった。ドイツのシーズンは、地域やカテゴリーによって多少異なるが、9月から翌年7月までが一般的だ。8月は丸々夏休みというのが常識。各チームの監督は時期を考慮し、年間スケジュールを立てる。それは下記を目安に考える。

7月        /プレ準備(夏休み前の顔合わせ時期)
8月下旬〜9月中旬 /夏準備(シーズンに向けての準備)
9中旬〜12月上旬 /リーグ前半戦
12月中旬〜1月  /冬休み
2月〜3月上旬   /冬準備(後半戦に向けての準備)
3月上旬〜6月中旬 /リーグ後半戦

さて、新チームの始動はクラブによりけりだ。7月まで旧チームのまま過ごして夏休み明けからの始動もあれば、リーグ戦が終わる6月頃には新チームに移行し、夏休みまでの時間を翌シーズンに向けて利用するチームもある。SGアウゲン・バイラータールは後者だ。ちなみに、ドイツの育成年代は2学年1カテゴリーに分けられる。

U19=Aユース
U17=Bユース
U15=Cユース
U13=Dユース
U11=Eユース
U9 =Fユース
U7 =Gユース

そして、カテゴリーごとにリーグ戦が整備される。2学年1チームとして登録するクラブがあれば、育成に力を注いでいるクラブなら、各学年ごとにチームを持っていたりもする。例えば、U15をU15リーグ3部、U14をU15リーグ5部に登録し、選手に合った経験を積ませる。あまり明確に学年別に分けず、Cユース全体を実力別にファーストチーム、セカンドチームと分けて登録する形もある。SGアウゲン・バイラータールはCユース全体を実力別にわけているパターンだ。

可能なら学年ごとにチームを持ち、U19までの一貫した育成をしたいところだが、クラブの立地条件や所属リーグのレベルから、すべての年代に十分な登録人数と選手の質を集めるのは困難なのが現状だ。うちのトップチームは6部リーグに所属していて、地域ではトップレベルと言える。しかし、向上心が高く、もっと高いレベルでやりたいという子どもたちは、多少通うのに時間がかかってもフライブルク市内やバーゼルの強豪クラブへ移籍していくことが多い。そうしたクラブの立ち位置を考えると、その時々の子どもたちの数とレベルに応じて登録チーム数を変えることが現実的なやり方になる。少しずつ育成の在り方を整理し、理想としてはより適応力の高いクラブになるのを目指して。

今季は、6月下旬に子どもたちと初顔合わせだった。担当するのは、U15(Cユース)監督だ。アシスタントコーチやセカンドチームの監督とも、これがファーストコンタクトとなった。まず、彼らとは自分たちの役割、目指すサッカー、チーム分けのコンセプトなどをじっくり話し合った。Dユース(U13)から上がってきた子についは、昨シーズンの監督から「どんなプレーヤーか」というアドバイスをもらう。とは言いつつも、新規加入の選手たちのことはわからないことが多い。どんな子がいて、どんな性格していて、どんなプレーを見せて、どんな特徴があるのか。

そこで、私は夏休みに入るまでの時間を利用し、チームビルディングをテーマにしたトレーニングを数多く取り入れた。アップにロンドをしたり、素走りではなく、グリッド内を走りながら選手同士でハイタッチ、右手→左手→両手でタッチ、右足→左足→右足でタッチというようにボディコンタクトを増やした。体のいろいろな部分を使いながらゲーム形式や鬼ごっこ形式の練習をし、自然にコミュニケーションが図れる環境を大事にした。

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