中野吉之伴フッスバルラボ

若くして指導者になった教え子の広く深い考えとは? ホッフェンハイムでの研修を経て多くの経験を持ち帰った

 

▼前回のインタビューの続き…

難しいのは、やはりプロクラブであればそれでというだけのものがある。でも、フライブルガーFCは地元でいくら強豪で、かつてはブンデスリーガに所属したことがあるクラブだとしても、いまは町クラブの一つでしかない。その中でより良いものを求めていくには、よほどのモチベーションと、このクラブへの思いを持った人を集めなければならない。

ルカ「それでもそれを成しえるだけの可能性は自分たちにもあると思うんだ。でも、そのためには何人かの指導者には『申し訳ないが、我々は他の指導者と一緒にやっていきたい』と言えるだけの勇気がなければならない。これまでの実績だけじゃなくて、指導者の本質を見極めて他のポジションに移すことだって考えてもいいはずだから」

いまクラブ内にそれぞれの年代を統括したり、トレーニングや試合を視察してコントロールできているポジションはいるの?

ルカ「いないんだ。残念だけど。適任と思われる人はいたんだ。でも、家族の時間もあるし、お金もそんなに払えるわけではないから辞めてしまった。そのポジションがすごく大事なのはわかっているんだけど、適任者を見つけるのはとても難しいよね。

ぴしゃりということができる強さがあり、専門知識や適切な決断ができ、それでいて我慢して長期的な視野で対応することができる人。うちのクラブからの条件でそれだけの素質を持った人を見つけるのは…難しい」

難しいよね。でも、本当に大事なポジションだと思うんだ。指導者に何が求められているかがわかっている人が見定めている。そうしたクラブは強いよ。

どのように成長させることができるのか。
どこへ導こうとしているのか。

子どもに対してそこの指摘、刺激があれば、クラブ全体のレベルが変わる。

ルカ「SCフライブルクでさえ苦労していたからね。昨シーズンからそこのポジションにマルティン・シュバイツァーがついたことで、育成全体にしっかりとした芯が通った。そういう形を、僕としてはフライブルガーFCでも作り上げられるように動いているんだよ。コンセプトやアイディアをもっと膨らませて、クラブとしての共通戦術理解からトレーニングにおける注意点まで。2週間に1回指導者同士で集まってディスカッションを行っている。

ホッフェンハイムで研修を受けたとき、特にそこが印象深かったんだ。ベルンハルト・ペータースがその役割を担っていたけど、すごく良かったよ。知っているでしょ? 元ホッケードイツ代表監督で、ホッフェンハイムでは育成部長を務めていた。ダメなことをしっかりとダメといえる人だよ。しっかりと相手と向かい合って伝えていたんだ。

『おい、お前がやっているのは最悪だ。別のやり方をしなければならない』

一方でしっかりと褒めることも忘れない。

『素晴らしいじゃないか。そこはその調子でやってくれ』

フットボナウトをホッフェンハイムにもたらしたのも、彼の功績の一つだ。あと、彼らは周囲の地域の町クラブに対して本当に多くの活動をしているんだ。無料の指導者講習会を開いたり、練習場を作るのをサポートしたりもしている。地域全体の底上げをするために、本当にすごい投資をしているよ」

ホッフェンハイムでは何をしていたの?

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