中野吉之伴フッスバルラボ

ヘルタベルリン元育成部長フランク・フォーゲル「両親から子どもへの期待は大きい。だがあまりに活発に関わろうとする両親は問題になることが多い」

 

▼ 大都市ベルリンではどんな取り組みをしているのか

僕が暮らすフライブルクはドイツ南西部にある20万人都市だ。

電車で南に40分いけばスイスのバーゼル、西に50分いけばフランスのコルマールという立地。昔から他国との交流が盛んである。東には広大な黒い森が広がり、人々はその合間を縫うように村や町を形成してきた。

そうした土地柄からか、どことなくのんびりとした雰囲気がこの地方にはある。成功するためにあくせく働くよりも、身の丈に合った歩みで、いまの暮らしを大切にしながら取り組む人が、僕の周りにも多い。そのような在り方はとても居心地がいいし、だから僕はフライブルクから離れられずにいる。

ただ、どこの都市もそういうわけではない。人が多く集まれば、また違った生活が生まれる。大都市にはその地のメリットとデメリットがある。フライブルクから見た姿がそのままドイツの『いま』というわけではないのだ。それはサッカーの育成においても同じことが言える。

そこで、特集の第二弾はブンデスリーガ「ヘルタ・ベルリン」の育成部長、フランク・フォーゲルの言葉を紹介したい。「サッカー年代別トレーニングの教科書」でもコラムで登場してもらったが、その内容とは違うテーマをここでは取り上げてみようと思う。

▼ 受け身の子どもたちがベルリンで増えている?

「いま一番大切だと思う点は、選手が自分から活動的に関わっているかどうかだ。今日の社会では、メディアや携帯、プレイステーションといったものが、受け身の子どもたちを多く生み出している。ここベルリンでも、よくも悪くも、ずる賢い子どもたちが生まれてくるストリートサッカーの現場が少なくなっている。

それだけが原因ではないだろうが、ピッチの上で不安がったり、自ら取り組もうとしない子どもが増えていると感じている。だが、自分らしく生き生きしているということは成長に欠かせない大事な要素ではないか」

これは「タレントを見つけるのにどこをみるのか? 何が必要な要素だろうか?」と尋ねたときの答えだ。ネットが生活と密着し、様々な技術が子どもたちの身近にあるのが現代の在り方だ。それが今後もさらに発展していくとなると、将来の子どもたちにこれまで通りのアプローチしかないのでは心もとない。

物事に集中して取り組む力を育む環境を提供することがどんどん難しくなる。技術やいまの常識を、かつてのように戻すことはできない。子どもたちはその社会で生きているのだから。社会はどんどん変わっていく。

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