中野吉之伴フッスバルラボ

古巣クラブで感じたいつでも戻れる場所がある素晴らしさ。 アマチュアクラブの存在とは何なのか?

▼ 僕の心のクラブ「FCボルフェンバイラー」

FCボルフェンバイラーは、僕がドイツに渡ってから心の底から「ここが僕の居場所だ」とそう思わせてくれるクラブだった。クラブ創立は1954年。創立60周年の記念イベントに参加した時のことだ。クラブハウスでは、これまでの様々な歴史を振り返るスライドショーが映し出されていた。

仲間と肩を組んで笑顔を見せる人たち。
くわを担いで歩く人たち… etc.

白黒写真の中には、次々にクラブが歩んできた姿が投影されていた。60年以上前、彼らは自分たちで土地を切り開き、グラウンドを作りあげたのだ。荒れ地を耕し土を運び、平にし、そして、木を削って作ったゴールを建てた。上半身裸で、汗を流し、でも誰よりも嬉しそうに作業に精を出す写真が続いた。

僕はすごく見入っていた。「これが原点だ」と思った。

グラウンドがあるからサッカーをするのではない。
サッカーをしたい人が集まったからグラウンドを作りあげた。
スタジアムができたからサッカーを見にいくのではない。
サッカーが見たい人が集まったから、スタジアムを作りあげるのだ。

そんなことを考えながら、黙ってスライドを見続けていた。

クラブ史上初試合のスコア表、50年前の選手証、試合後の記念写真。徐々に写真の中にカラーが混じってきた。少しずつ知っている顔が増えてくる。

しばらくすると、僕たちが昇格したときの写真が映し出された。試合終了の瞬間、空を見上げて両手でガッツポーズをした日を思い出す。後ろから思いっきり抱きついてきたゴールキーパーの感触がよみがえってきた。

僕も、チームメイトたちも、こうやってこのクラブの歴史になっていたのだ。

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