中野吉之伴フッスバルラボ

リスペクトをもってコミニュケーションを取ることの大切さ。指導者だからえらいなんてことはない

▼ リスペクトの関係ってんだろう?

ある初心者向け指導者講習会での話だ。冒頭で、教官がお願いをしてきた。

「個人的なことなので申し訳ないが、実は私の息子はSCフライブルクのU19でプレーしていて、いつも彼の試合を見にいけるように予定を組んでいるんだ。今週末はU19ブンデスリーガは試合がなかったからこの講習会を入れたのだが、カップ戦が入ってしまった。

明日、11時にボーフムと対戦する。いまU19ブンデスリーガ西部の首位に立っているチームとの試合なんだ。父親として、できたら応援に行きたい。

そこで皆さんにお願いしたいのだが、今日予定の21時30分までではなく、少し延長して行い、その分明日の予定を短めにしてもらうことはできないだろうか。全体的な内容は変わらないんだ」

当初の予定では金曜18時〜21時30分、土曜9時30分〜12時というスケジュール。それを「自分が指導しているチームの試合」ではなく、いわば個人的な用事のために変更させてもらえないかというのだ。

「参加者はどういう反応をするのかな?」と思ってみていると、誰一人文句も批判的なことも口にしない。

「大丈夫ですよ」
「何も問題ないですね」
「今夜ディスコにはいかないし(笑)」
「僕らも一緒にスタジアム言ってもいいですか?(笑)」

反対するとでも思っているのかといわんばかりのみんな。誰もが「駆けつけてあげるべきだ」と思っている。

教官は感謝し、スケジュール変更について次のようにお願いしてきた。

「では、今日は22時半までとさせてください。明日は1時間ピッチ、会議室で30分。8時半集合でも大丈夫でしょうか?」

「うーん、9時がいい」
「やっぱりディスコに行くの?(笑)」
「そこの30分は変わらないでしょ」

初めて会う者同士のはずだが、どうしてこうもコミニュケーションが円滑にいくのだろうか。教官からの圧力も、参加者からの変な距離感もまるでない。そこには健全なリスペクトの関係があった。

リスペクトの精神。

これはドイツサッカー、特にグラスルーツを語る上で欠かせないキーワードだと思っている。互いに存在を認めい、誰が上で誰が下ではなく、自分の意見を持ち、相手の価値観を認め、その関係性の中で会話をし、議論を交わし、アイディアを練っていくうえで欠かせない要素だからだ。

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