中野吉之伴フッスバルラボ

ゲーム全体を見て攻守でどこに起点を作るか。それを試合中に分析する力の大切さ

▼1月の一時帰国で楽しみにしていることがあった。

それは自分でもプレーすること。親交のある大豆戸FCのコーチ陣が「練習後にボールを蹴っている」という話を聞いたので、急遽混ぜてもらった。日本でサッカーをしたのはいつ以来だろうか。日本サッカーを肌で感じるにはやはりプレーしてみるのが一番だし、仲のいいサッカー仲間とボールを蹴る感覚は格別なものがある。

そして、たまたま偶然にもフライブルガーFCで監督をしていた頃の教え子、タレックが企業研修で日本に短期留学中だった。しかも滞在先が川崎ということだったので、「一緒に蹴らないか?」と声をかけてみたら、すぐにOKの返事が来た。

待ち合わせ場所は新横浜駅。初めての日本でちゃんと来れるのかと少なからず心配していたが、さすがに現代は違う。グーグルマップを駆使し、きちんと乗り換えてやってきた。ただ勤務初日だったそうで少し残業があったため、待ち合わせ時間から大幅に遅れてやってきたことには苦笑いだ。

「いや、仕事が長引いて…」

そんな言葉を口にして登場するドイツ人。早速、日本の洗礼を浴びたようだ。タクシーでグラウンドに向かいながら、思い出話に花を咲かす。彼は、私がU18で監督をやっていたときの選手だ。小柄ながらスピードと切れ味が武器のアタッカーで攻撃の切り札だった。その後ベルギーの大学に入学し、現地の3部クラブでプレーしながら無事に卒業して、就職したという。

到着すると大豆戸の指導者仲間と挨拶もそこそこに、すぐ着替えてアップに入る。タレックとパス交換しながら体を温める。不思議な感覚だ。懐かしくて、昔と変わらないテンポで、でもあの時からすでに何年も時は経ち、いま横浜でサッカーをやっている。

この日はハーフコートで10対10での試合だった。相手チームは比較的に若い選手が多く、40代選手を抱えるこちらとは体のキレ味が違う、と思いつつも私自身は楽しみだった。なぜなら昔から強い相手とするのが好きだったから。そうした相手に何ができるのかを見つけていくのはとてもスリリングで刺激的なチャレンジ。

ゲームが始まると、すぐに相手は早めのプレスでボールを奪いに来る。ボランチでプレーした私のところにボールが入ると一気に寄せられて、奪われるシーンも多かった。ボールを奪うとパスを左右に展開しながら、FWへうまくパスを当てて、落として、そこからダイレクトでまたスペースにというのが得意の形のようだ。

序盤はこれに翻弄されて、一気に失点を重ねてしまった。サイドで孤立していたタレックも思い通りのプレーができずにさしたる活躍ができない。最初の休憩時間に大豆戸のコーチがタレックに「問題点はどこだと思う?」と聞いた。

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