中野吉之伴フッスバルラボ

池上正さんとの対話から考える育成現場に求められるものは?子どもでもわかる透明性と1+1を2以上にするために

 

1月に大阪で、池上正さんとトークイベントをさせてもらった。

 池上さんの本「サッカーで子どもをぐんぐん伸ばす11の魔法」と出会えて以来、大きな影響を受けた私にとっては、とても幸せな時間だった。

技術や戦術、フィジカルやメンタルという「要素」を取り上げる本が多いなか、この本は「人」と向き合うことの大切さをテーマに書かれており、「指導者として、親として、それ以前に人としての在り方を、これほど痛烈に問いかけてくる本はなかなかないな」と感心させられた。

そして、ドイツのサッカー現場で日々感じ、学んできたものと共通することも多く、誰にでも思い当たることでありながら、一つひとつが非常に深く考えされられる内容であり、読み終えた後、自分の中で考え方が整理されたことを覚えている。

そんな池上さんとの最初の接点は7年ほど前になる。

ある雑誌内で、私の記事と池上さんの記事が同時に掲載されたことがあった。どうしても一度直接話がしたくて、編集者の方に連絡を取ってもらい、東京駅の近くのカフェでお会いさせてもらうことができた。多岐にわたる話は、どれもとてもおもしろい。お会いできて本当によかった。心から感謝の思いでいっぱいだった。

当時、私は日本サッカーの改革案をレポートにまとめ、いろんな人に送って読んでもらっていたのだが、池上さんにも無謀を承知でメールした。熱い思いで書いたものだ。考えが良ければ、視点がおもしろければと伝わるはずと思っていた。

いま読み返してみて、「おもしろいな」と改めて思う部分もある。しかし、全体的になんとも荒く粗い文章で、編集したら赤字だらけになるもので、また表現も説得力に欠けるところが多かったといわざるをえない。例えば、その中で私は「日本サッカーは世界基準のサッカーを身につけなければならない」と書いている。

「世界基準のサッカーとは何か。それはサッカーの本質をどれだけ理解できているかという点にかかっている。本質とは何か。つまり、サッカーとは不安定なボールを不慣れな足で扱わなければならない極めてカオスなもの。

そのカオスなサッカーというスポーツで、ゴールを奪い、ゴールを守るという根源的な目標をなしえるためには、あらゆる状況において自立的な判断で戦っていくことが前提条件となる。その自由で自立的な判断が要求されるという裏には、それぞれが担う責任をしっかりと果たさなければならないという暗黙の了解がある」

(残り 2353文字/全文: 3362文字)

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