中野吉之伴フッスバルラボ

「ドイツ×スペイン」を戦術的な観点から1シーンを切り取り、両チームの狙いと意図、その後の事象を解説!

サッカー観戦時にどんなところに注目して見ていますか?

こんな質問を受けることがある。

もちろんジャーナリストという本職モードで見るときと、プライベートで見るときはテンションも視点も違う。プライベートのときは細かいことを度外視して、まずその雰囲気を楽しむ。ビールを飲んで、ソーセージを食べる。ドイツのサッカー観戦には欠かせないアイテムだ。

毎回同じものを食べて飲んでいるはずなのだが、とにかくうまい。本当に飽きることはない。きっと、その場の空気感も調味料なのだろう。観客席にいると、自然と熱も入る。

だから審判の判定に対して、つい文句が口から飛び出すこともあるし、チームのプレーぶりについてまわりの人たちとディスカッションすることもある。小難しい話をしたりはしないし、考えもしない。

シンプルに自分がすごいと思うプレーに唸り、ボールを失った後に戻りもせずに文句を言っている選手には「何やってんだ!」と憤る。そうやってスタジアムやグラウンドに集まった人みんなで作り出す雰囲気を丸ごと楽しむのだ。

一方”本職モード”で見るときは分析する上での基準が必要になるので、自分なりのポイントをまとめてみるようにしている。まずは基本フォーメーションをチェックし、どの選手がどこに起用されているかを把握する。それぞれの選手の適正からその試合に臨むにあたり守備の仕方、攻撃の方向性を推測する。ここまでを試合前に準備として行う。

もちろん見方には好みもあると思う。

試合が始まると、私はまずビルドアップからの展開を重要視する。なぜなら攻守におけるビルドアップ時の配置と狙いどころからその試合における狙いどころが推測できるからだ。そこを整理した上で、「どの局面でチームが攻守にスイッチが入るか」をチェックすると全体像が見えてくる。

そこに補足として「個人のプレー」を合わせて確認するような流れで観戦している。

具体的な試合のシーンがあった方がわかりやすいと思うので、以前取材をした「ドイツ対スペイン」の親善試合を題材に考えてみたい。ロシアワールドカップ前の時期に、ともに大会優勝候補に挙げられていた両国。どんな狙いで、どんな試合運びがみられたのだろうか。

この試合、まずドイツは相手がボールを持つと守備ラインを高く上げ、敵陣でのプレスを狙っていた。しかし、なかなかうまくハマらない。スペインはそのプレスを巧みにかいくぐり、小刻みなパスワークでドイツ陣内へとボールを運んでいくのだ。

と、現象を言葉だけでまとめるとそれだけで終わってしまう。それに、スペインのボール回しがうまいのは映像を見れば一目瞭然だ。そこで次の2点に注力して見ていきたい

1.なぜスペインのボール回しはうまくいくのか?
2.なぜドイツはうまくボールを奪い切れないのか?

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