中野吉之伴フッスバルラボ

チームとして「守備組織を整える」ためには個々が相手の攻撃イメージを整理した上でポジショニングとスライドを行うことが欠かせない

▼「守備組織を整える」とは、「どうなっていたら整っている状態なのか」を知っておくことが大切なことである。

「今日は1-2-3-1だぞ。ポジションを守れよ!」

そう指示を送ると、子どもたちは「図面通り」のポジショニングを取る。でも、試合では相手がいる。その場所に相手がいないこともあるし、逆に複数いることもある。あくまでも基本フォーメーションは基準点にしかすぎない。そこに「いる」だけでは守備組織が整っているとは言えない。「守備組織を整えること」を実行する上で欠かせない要素が次の2点だ。そこで、この2要素を説明することから今回は始めたい。

1.マークとポジショニング
相手の攻撃にうまく対処するためには、ボール・ゴール・相手選手・味方選手の位置と状況を把握して、その関係から「自分はどこにいて、何に気をつければいいのか」という判断ができるようになることが必要だ。そのためには「ここからどんな攻撃がありうるのか」というイメージを持てることがまず大事だ。つまり、守備組織を整えるとは、そのイメージした相手の攻撃に対応するための適切な準備を行うという意味になる。そのために大切なのが「マーク」と「ポジショニング」である。

いつ、どこに、どのように、何のためにポジションを取らなければならないのか。

チームとして守備者全員の頭の中で整理されていなければ組織は統一できない。がむしゃらに相手が持っているボールを追いかけ回し、結果的に振り回されて30〜40m離れたところにボールを展開されて「戻りが遅い」「そこでがんばらないでどうする」と明確な理由もなく、怒鳴られている子どもたちはいないだろうか? それは「その状況だけを切り取って見る」からそういう声になってしまうのだ。

指導者は「なぜそんな状況になってしまったのか」を分析し、一人一人の子どもが「そんな状況にならないためにどんな準備をしていたのか」を質問したり、わからなければ一つの答えを提示しながら具体的に子どもたちが解決策を持てるようにアプローチすることが重要なのだ。

2.スライド
守備を「がんばる」と言っても一人では不可能だ。そこで大事なのは、気合いや根性ではなく、「がんばるための具体的な解決策」だ。相手の攻撃に対応するためにすべてを完璧に整理する必要があるわけではないし、すべて思い通りに対応できるわけではない。「個人の裁量」と「がんばり」で守れるようになることも非常に必要で、大事な要素だ。

しかし、それだけに頼っていても次の段階への積み重ねがなくなる。守備を行う上でも最低限の原則的な戦術は、小さい頃から少しずつ正しい対処法として身につけていけるようにしてあげることが指導者の務めだ。その最低限の原則的な戦術が「スライド」だ。スライドという「チームやグループとしてのがんばり方を身につける」と、自らの責任が明確になり、自分から取り組む姿勢にもつながっていく。

U13年代であれば「今日は右SBだから右SH、CH、CBの選手とのバランスを考えて守ってみよう」といったふうなアプローチもできるだろう。U11年代であれば「隣の選手同士の距離感を大事にしよう」という実現しやすい目標を設定し、取り組み方を考えて実践し、その後に課題を見つけ出し、振り返って次につなげる。そのプロセスを知ることは育成年代において非常に意味と価値があるものだ。

戦術はいきなり複雑に取り組んではいけない。基本的な関係性・距離感を身につけていくことが大事だ。そこで、ここからは組織守備において基本となる「2対2」「3対3」の守備をテーマに具体的な組織的守備について考えてみよう。

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