中野吉之伴フッスバルラボ

選手のサッカーで感じたい喜びに向き合うからこそロッホマン教授の考えに賛同も反対もする。だから、進化と深化が生まれる

小学校低学年の子どもにとって最適な試合形式とシステムは何だろう?

エアランゲン大学の教授マティアス・ロッホマンが国際コーチ会議で提唱したのは、かなり思い切ったアイディアだった。画期的といってもいい。理由は、これまでサッカーの常識だったものをどんどん省いたからだ。

1.3号球を使用
子どもの成長段階を考えると、4号球でも大きすぎる。大きいボールを使うと力のない子、体の使い方に慣れていない子は圧倒的に不利になる。

2.ゴールはミニゴールを二つずつ
どちらも狙える。自然と両方のゴールを観察するようになる。GKはなし。

3.3対3
2つのゴールに対するバランスがとりやすい。4人だと、2-2で左右や攻守に分かれてしまいがち。でも、3人だとそれぞれがFW、MF、DFの役割を担わないといけなくなる。

4.シュートゾーンの設置
ゴール前に運ぶドリブルやパスが必要となり、ゴールに向けての動きが活発になる。

5.スローイン禁止
ボールがラインから外に出た場合はドリブルかパスかを選べる。ファウルスローで細かく指摘されることがなく、パスが出せなくてジッとする必要もなくなる。

6.ローテーションの導入
どちらかのチームがゴールを決めたらそれぞれ選手交代。一人ずつの交代でもいいし、3人一気に交代してもいい。人数に応じて柔軟に対応できる。

7.ピッチ外からのコメントはNG!
ピッチ外から叫ぶ指導者は必要ない。不必要にプレッシャーをかける保護者もいらない。子どもたちは、一日の流れがわかれば自分たちで全部できる。大人は問題が生じたときだけ顔を出せばいい。

8.サイズは28x22m
広すぎず、狭すぎず。全員がゲームに関われるサイズを目指す。

パッと見て、「いや別に真新しいものでもないぞ」と思われるかもしれない。トレーニングメニューの一環としてこのような、あるいは似たような形を取り入れたことがある指導者はいるかもしれない。私もやったことはある。ただ、これを他クラブとの試合形式として導入して行う形は想像できなかった。それはどれだけ人数制限で年代別の状況に合わせようと考えたとしても、そこには必ず正規のゴールがあって、GKがいる。ここまではセットの考えだったからだ。

なぜロッホマンはゴールを外すことを立案するのか。

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