中野吉之伴フッスバルラボ

一試合のミスの70〜80%は戦術理解不足やゲーム理解不足による判断ミス。それだけ「認知-判断-決断」は難しい!

ドイツで認知・判断について注目が集まったのはいつ頃からだろうか?

私個人でいえば、最初に注目するようになったきっかけは『ライフキネティック』についてだった。2014年の7月に直接ゼミナールに参加する機会もあり、そこで『脳の在り方』についての講演を受けた。人はどのように物事を認識し、そこから判断・決断・実践というプロセスを踏むのだろう。それまで漠然としたイメージで捉えていたものに、基準となる論理を得ることができた。

ここ数年、ドイツでは認知にも非常に力を注いでいる。国際コーチ会議では、毎年のようにテーマの一つとして取り上げられているし、ドイツサッカー協会(以下、DFB)から出されている指導者向け雑誌『フースバルトレーニング』では、毎号何らかの形で認知についてのレポートが挙がっている。そう、それに関しての情報も常にアップロードされていくのだ。

今年の国際コーチ会議では、心理学者のヤン・マイアーが壇上でこう述懐していた。

「10年間ホッフェンハイムでやっていたが、8年前にこうした質問をある指導者から受けた。『心理学はすばらしいと思う。ストレスとの向き合い方、チームビルディング、メンタリティの強化。でも、頭の回転そのものを速くすることはできる? できると思うんだ』。頭の回転を速く? それはこれまでにやってきた分野ではなかった。これまでのものは現象の分析であり、それを基にした対策だった。思考の在り方を探り、そこから思考スピードを速くしたり、認知するキャパシティを増やしたりというのは新しい事象だった。そして、それが指導者の面から見て非常に興味深く、重要なアプローチだというのは確かなことだろう」

例えば、選手を評価する基準として統計が使われることはあるが、そうした数値的な比較にどれだけの意味があるだろうか? マイアーはスクリーンにある試合のデータを映しながら説明を続ける。

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