中野吉之伴フッスバルラボ

なぜ選手がうまくなったのか。子どもが育つ環境つくりにチャレンジ

こんばんは。
管理人の木之下です。

先週、本田圭佑選手が「指導者ライセンス制度」について発言し、国内でも様々な意見が飛び交いました。このWEBマガジンでも、中野がフリーコラムにて「指導者」という視点で意見を発信しました。

vol.1本田圭佑のつぶやきをキッカケに指導者を再考!  育成指導者がサッカーを教えられないようでは問題外。でも、サッカーしか教えられない指導者は失格
vol.2教える、指導する、伝える、導くために何が必要で、何を身につけるべきか。指導者は考えを公開し、意見をもらい、磨き上げていく方がプラスになる

私自身、「サッカー指導者とは?」「育成指導者とは?」については国内でもう一度考え直すいい機会だと感じています。そこで、10月は15年以上ドイツで育成の現場に立ち続ける中野が、サッカーを指導するために学ぶべきことを多角的な視点から情報として落とし込んでいきます。そもそも「選手が成長するために起因するもの」は3つあると考えています。

1.環境
2.選手
3.指導者

グラウンド、少子化、サッカー人気などの環境面は大きく影響されるものであり、選手の成長には欠かせないものです。しかし、選手や指導者にとっては解決できないことがほとんどです。また、選手自身に関することは成長に大きく反映されます。ただ、運動能力や知的能力など指導者がアプローチできることと、身長や体重などの身体的な成長や性格などの本来持っている精神的なものなど指導者の手に及ばないことがあります。そして、最後は指導者自身のことです。これはトレーニングのプランニングや練習メニューの組み方など指導者自身が学ぶことで大体のことが解決できます。さらに、育成という観点でいえば、必要な要素として次のような項目も挙げられます。

・普及
・スカウティング
・コンセプト
・実践
・先鋭化
・チーム…etc

10月の特集では「サッカーを指導するには何を学ぶべきか」をテーマに、これらの幅広い観点からドイツをはじめとするヨーロッパで一般的に捉えられていることを、中野なりの解釈を持って原稿に書き起こすつもりです。サッカー指導者はチームをマネジメントする力や人の心をつかむ力など求められる能力も多様化しています。特に育成年代の指導者には人間教育的なものも含まれるため、表面的にトレーニングに関することなどを学んだだけでは成り立ちません。この機会に、指導者のみなさまにも自分たちなりに「指導者が学ぶべきこと」を一緒に考えて頂けたらと思っています。

▼10月の特集企画

 「サッカーを指導するには何を学ぶべきか」

サッカーを指導するには何を学ぶべきか…etc(中野
【水】フリー or お知らせ…etc(木之下)
サッカーを指導するには何を学ぶべきか…etc(中野
※基本的に特集企画は変更しませんが、その他は変更の場合があります

他にも、新シーズンが始まって復活するfootballistaさんとの提携企画「指導者・中野吉之伴の挑戦」やフリーコラムなどをお届けします。10月も他の媒体では得られない「サッカーの知」の部分を掘り下げていく予定です。来月も応援のほどよろしくお願い申し上げます。

個人的な話になりますが、4月からチームコーディネーターとして町クラブに関わりを持ち、「地域に必要とされるクラブづくり」と「指導者育成」という2つを方向性から指導者や保護者と一緒に「子どもが育つ環境づくり」にチャレンジしています。

9月の半ばから4年生は秋季リーグがスタートし、私もコーチとして選手たちに様々なことを指導しています。その中で他の指導者や保護者の様子を見ていると「選手がうまくなった」「相手に勝った」など結果にしか目が向けられていないように感じることが多々ありました。それは悪いことではありませんが、結果だけで成長過程にある選手を評価するのはいいことではありません。

なぜ選手がうまくなったのか。
なぜ相手に勝てたのか。

そういう「なぜ」を掘り下げていくと、いろんなことが見えてきます。例えば、第2節では「ボトムアップ」という手法をとり、フォーメーションとポジションと交代選手と共に、どうチームとして戦うかまで全てを選手に任せて試合に挑みました。結果は運良く5対2で勝利し、選手たちが自信をつけるキッカケになったと思っています。

ただ、私にとってこの一連の過程は単なる結果でしかありません。

なぜなら「選手たちに任せる」ために、4月から「チームとしてサッカーをプレーする」様々なことを指導してきたからです。例えば、私は選手と会話を深めることから手をつけました。それは信頼関係を築くことと同時に考える力と対話する力を養うこと、そしてサッカーの知識を身につけさせることが狙いだったからです。もちろん、その時々ではトレーニングを行っているので技術や戦術、メンタルにアプローチをしているのは当然のことです。

中野のフリーコラムでも「育成指導者がサッカーを教えられないようでは問題外。でも、サッカーしか教えられない指導者は失格」と言っていましたが、私自身もそう思いますし、自分がこのクラブの指導者育成で全体ミーティングを行う時には、脳科学や心理学などの話もたくさんしています。

20年ぶりに指導現場に立ってあらためて思うのは、指導者に必要なものはサッカーの知識だけではないということです。数年前にビジネスコーチングの専門家に取材した時、こんなことを言っていました。

「コミュニケーションの主役ってどっちかわかりますか? 話す側か、聞く側か。答えは、聞く側です。オーケストラに例えると、指揮者がどんなに一生懸命にスティックを振っても、反応する側の演奏者たちが音を奏でなかったら音楽は流れないのです。つまり、コミュニケーションの主導権は聞く側が握っています。それが理解できていれば、コミュニケーションのアプローチや学び方って随分変わりますよ」

サッカーの主役は選手たちです。

そして、彼らはサッカーを学んでいる側だから、コミュニケーションにおいては聞き手です。彼らが聞く力を身につけていなければ会話は成立しないのです。

「●●は、私が教えた」という指導者の声をたまに聞きますが、うまくなろうと思って努力したのは選手です。指導者はキッカケを与えたり、サポートをしたにすぎない。プレーを身につけさせると言いますが、プレーは身につけさせられません。私たち指導者ができるのは、その方法を伝えること、伝える時にどうすればうまくいくのかを考え、子どもが努力が継続できるようにあらゆるアプローチをすることです。

プレーを身につけさせるためにお尻を叩いて練習させるのか。やる気を刺激して自然に練習をしてプレーが身についていくのか。どちらが子どものためになるのか、次につながるのかは明白です。そして、それがわかるのであれば、指導者が何を学ぶべきかも見えてくるはずです。

4年生の秋季リーグで一番収穫だったのは、子どもたちがサッカーがチームスポーツだと少しずつ認識できたこと、それに付随してチームとしてのプレーがどういうものかをイメージできたことです。彼らは試合に勝って喜び、負けて泣いていました。ようやく半年かけ、真剣にサッカーに向き合うことがどういうことなのか、だからトレーニングに集中しなければならないということがわかりかけてきました。

10月には市民大会が開催されます。そこでも3試合を戦うチャンスをもらったので、彼らと共に七転び八起きを続けながら粘り強く、でも楽しくサッカーと真剣に向き合っていけたらと感じています。

主筆者 中野吉之伴 【Twitter=@kichinosuken
管理人 木之下潤 【Twitter=@jun__kinoshita

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