中野吉之伴フッスバルラボ

ドイツの片田舎にあるSVホッホドルフがどうやって約7345万円もの資金を集めたのか?

人口5000人足らずの地域にある「SVホッホドルフ」には天然芝と人工芝のグラウンドがあり、クラブハウスもある。

自分たちでグラウンドを作り上げて今に引き継ぎ、トップチームは現在9部リーグに所属している。年会費はわずか35ユーロ(4500円)。月謝ではなく、年会費である。子どもたちはたったそれだけで週に2回のトレーニングと週末の試合に参加できる。ユニフォームやボールはクラブ持ち。20人以上の指導者がボランティアとして活動しているが、お金を要求するような人は誰もいない。

ここだけが特別なわけではなく、ドイツではどんな小さな町や村もこうしたクラブが存在する。日本の常識だと、そんなクラブが「なぜすばらしい環境を整えているのか」が不思議でしょうがない。日本から視察や研修に訪れる人たちはいつも驚く。私も長くこちらで生活し、そういうクラブでの活動を当たり前に続けてはいるが、ドイツのそうしたサイクルには事あるごとに「すごいな」と感嘆する。

しかし、資金はどのように集めるのだろうか?

例えば、数年前からクラブは土グラウンドの人口芝化プロジェクトを進めていた。子どもたちがより良い環境でプレーを楽しむため、である。理想だけなら誰でも口にできる。でも、そのためには相当額のお金が必要だ。その当時のことが現地紙に出ていたので、紹介したい。

「人工芝化プロジェクトの総工費は56万5000ユーロ(約7345万円)。内訳は人工芝費で46万5000ユーロ、照明灯に10万ユーロ。そのうち、フライブルク市が約40%に当たる24万750ユーロを、そしてバーデン州スポーツ協会が9万4500ユーロを助成することになった」

大きなプロジェクトの際には、行政からの補助金が必須条件になる。ドイツは教育にお金が回っているという印象を受けている。学校費は基本無料だ。教育については税金の多くが投資されている。大学にしても1ゼメスター半年でわずか500ユーロ(約65000円)ほど。入学金もない。その他に各市町村にはこうしたスポーツ施設などへのサポート予算枠が準備されており、保育園、幼稚園・学校施設への修復や改善と並び、地域クラブへのサポートも行政においては非常に重要な活動の一つと受け止められている。こうした助成を受けて、毎年のようにどこかのグラウンドが人口芝化されたり、体育館の修復がされたりしている。

それは地域クラブの活動が市民の生活の営みに欠かせない存在として認められているからだ。

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